「ゼータ」と「アルファ」の全2グレード展開 ついに発売された「ジムニー5ドア」を検証する
2023.06.09 デイリーコラム価格は約216万円から
ついに、アイツが発売された!
アイツとは、「スズキ・ジムニー」の5ドアモデルのこと。ジムニーとはもちろん、発売以来、日本国内はもちろん世界的に人気爆発中で簡単には手に入れることができないあのクルマのことだ。そんなジムニー(これまでは3ドアしか販売していなかった)のロングボディー・5ドアが、ついに発売されたのである。
気になる価格は、約216万円(ベーシックグレードのMT)から約252万円(上級グレードのAT)。仕様はベーシックグレードの「ゼータ」と上級グレードの「アルファ」があり、それぞれ5段MTと4段ATが選択可能だ。もちろん、駆動方式は全車4WDである。
ただし……発売されたのは日本じゃなくてインドだけど。
というわけで気になるのは日本市場での展開。結論から言えば、とても残念でお伝えしにくいが、スズキアリーナ店に実車が並ぶのはまだまだ先になりそうである。といっても「日本では絶対に売らない!」という話でもないから、期待は持ち続けていていいだろう。スズキの焦らし作戦にまんまとはまっている気がしなくもないが(笑)。
どうして日本で売ってくれないの……?
スズキ広報部によると「ジムニーは3ドアのお客さまも長くお待たせしている状況でして……それを考えると、3ドアの納車待ちがもう少し落ち着くまでは5ドアを追加するのは難しいと考えています。インドは単に生産工場があるというだけでなく、これまで3ドアを売っていなかったので、5ドアを投入できたのです」とのこと。
日本のシエラより少しだけパワフル
爆発的なジムニー人気が5ドアの追加を難しくしているというのだから、なんとも皮肉である。現在の日本におけるジムニーの納車待ちは1年ほどらしいが、個人的には「1年後に5ドアを追加しますから、そちらが欲しい人はオーダーを待ってくださいね!」と前もってアナウンスしておいてから時間をおいて発売すればいいのではと思うのだが、いかがだろうか(スズキさん、このアイデアを採用してもいいですよ!)。
ちなみにもう少しジムニー5ドアの仕様について触れておくと、全長3985mmで3ドアに対する延長は340mm。エンジンは直列4気筒自然吸気で排気量1.5リッターの「K15B」で、日本の「ジムニーシエラ」に積むものと同じだが、エンジン出力が日本向けの102PS(75kW)に比べて104.8PS(77.1kW)とわずかに高いのが気になるところだ。もしかすると、インドで売っているガソリンはオクタン価が日本よりも高いのでそれに合わせているのかも。いずれにしても、日本人としてはちょっと悔しい気がしなくもない(笑)。
また、ゼータに対する上級グレードのアルファの違いはドアハンドルのカラード化、アルミホイール、フォグランプ、LEDヘッドライト、オートライト、エアコンのオート化、プッシュスターター、クルーズコントロール、ディスプレイオーディオの画面大型化など。おおむね日本仕様のグレード「JL」と「JC」の違いに準じていると考えてよさそうだ。
気になる日本での価格は?
ところで、このジムニー5ドアを日本で売るとしたら価格はどの程度になるだろうか?
日本仕様のジムニーシエラ(3ドア)はベーシックなJLのMTが186万3400円。最も高いJCのATが208万4500円となっている。消費税抜きだとそれぞれ169万4000円、189万5000円だ。
対して、インド仕様の5ドアの価格は約216万円から約252万円。素直に計算すればだいたい50万~60万円アップとなる。となれば、日本での販売価格(消費税込み)は240万~260万円程度だろうか。
だがしかし、スズキのインド現地の公式サイトをのぞいてみると日本でも売っている「スイフト」や「イグニス」の販売価格は日本よりも控えめ(スイフトがだいたい102万~151万円でイグニスは99万~139万円ほど)。ハイブリッドの有無などを加味しても、2割くらい安い印象だ。ということはジムニーシエラ5ドアの日本販売価格はもう少し高くなるのか? まあそんなことは現時点では誰にも分からないのだから神のみぞ知る……だけど。
いや、そもそも日本で正式発売する日が来るのだろうか? 遅いとか早いとか、値段が高いとか安いとか以前に、スズキアリーナ店に並ぶ日が来てくれないと寂しすぎるんですけど。
(文=工藤貴宏/写真=マルチスズキ/編集=藤沢 勝)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性NEW 2025.9.5 あのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。
-
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代 2025.9.4 24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。
-
マツダの将来を担う次世代バイオディーゼル燃料 需給拡大に向けた最新の取り組みを知る 2025.9.3 ディーゼルエンジンを主力とするマツダにとって、カーボンニュートラルを実現した次世代バイオディーゼル燃料は生命線ともいえる存在だ。関係各社を巻き込んで需給拡大を図るマツダの取り組みと、次世代燃料の最新事情を紹介する。
-
意外とクルマは苦手かも!? 自動車メディアの領域で、今のAIにできること、できないこと 2025.9.1 AIは今や、文章のみならず画像や動画もすぐに生成できるレベルへと発展している。では、それらを扱うメディア、なかでもわれわれ自動車メディアはどう活用できるのか? このテクノロジーの現在地について考える。
-
世界の議論を日本が主導! 進むハンズオフ運転支援機能の普及と国際基準制定の裏側 2025.8.29 世界的に開発と普及が進むハンズオフ(手放し運転)運転支援機能の、国際基準が改定された。先進運転支援や自動運転の技術の基準は、どのように決められ、またそこで日本はどんな役割を果たしているのか? 新技術の普及に必須の“ルールづくり”を解説する。
-
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
NEW
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
NEW
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。 -
NEW
ロータス・エメヤR(後編)
2025.9.4あの多田哲哉の自動車放談長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。 -
第83回:ステランティスの3兄弟を総括する(その1) ―「ジュニア」に託されたアルファ・ロメオ再興の夢―
2025.9.3カーデザイン曼荼羅ステランティスが起死回生を期して発表した、コンパクトSUV 3兄弟。なかでもクルマ好きの注目を集めているのが「アルファ・ロメオ・ジュニア」だ。そのデザインは、名門アルファの再興という重責に応えられるものなのか? 有識者と考えてみた。