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スズキ・ジムニーXC(4WD/5MT)

ジムニーならこわくない 2022.10.05 試乗記 ファンから熱く支持される軽規格のコンパクトオフローダー「スズキ・ジムニー」。その現行型も、今年で誕生から4年。このたび環境性能を高めるべく改良が加えられた。世界的にも貴重になりつつある古典的クロスカントリー車の魅力に、あらためて触れてみよう。

市街地での燃費改善に効果あり

モデルチェンジから早4年、20年ぶりに刷新されたジムニーの新型は路上でもうすっかりおなじみだ。プロスペックのミニ四駆がこんなにたくさんオーバーグラウンドに出てきちゃっていいのだろうかと思うほど、街なかでもよく見かけるようになった。でもそれが4代目ジムニーの新しいキャラであり、大きな“功績”でもあると思う。

人気は相変わらずで、積み上がる受注に生産が追いつかない。スズキの広報部でも納期についてのアナウンスはしなくなった。筆者の知り合いに去年オーナーになった人がふたりいるが、両名ともたっぷり1年半待たされたという。

そんな好調ジムニーの最新ニュースは、MTモデルにアイドリングストップ機構が付いたことである。マイルドハイブリッドもフルハイブリッドもないジムニーにとって、アイドリングストップは重要な省燃費アイテムで、2021年9月にATにはインストールされていた。

アイドリングストップする新型MTのカタログ燃費はWLTCモードで16.6km/リッター。従来型と0.4km/リッターしか違わないが、市街地モード(WLTC-L)では14.4から15.6km/リッターに向上している。

試乗したのは最上級の「XC」(180万4000円)。最近は2ペダルの自動変速機付きモデルと3ペダルのMT車を同一価格で売るクルマも多いが、ジムニーは昔ながらにMTのほうが一律9万9000円安い。

本格的なオフロード性能を有する軽規格のクロスカントリー車「スズキ・ジムニー」。現行型の登場は2018年7年のことだが、その人気は今なお健在。依然多くのバックオーダーを抱えている。
本格的なオフロード性能を有する軽規格のクロスカントリー車「スズキ・ジムニー」。現行型の登場は2018年7年のことだが、その人気は今なお健在。依然多くのバックオーダーを抱えている。拡大
ツール感を前面に押し出したインストゥルメントパネルまわり。装備類では「電源はシガーソケットのみ」というあたりに時代を感じるので、携帯端末を手放せない人はカー用品を活用しよう。
ツール感を前面に押し出したインストゥルメントパネルまわり。装備類では「電源はシガーソケットのみ」というあたりに時代を感じるので、携帯端末を手放せない人はカー用品を活用しよう。拡大
今回の改良では、AT仕様に続きMT仕様にもアイドリングストップ機構を採用。シフトをニュートラルにし、クラッチペダルから足を離すとエンジンが停止する。
今回の改良では、AT仕様に続きMT仕様にもアイドリングストップ機構を採用。シフトをニュートラルにし、クラッチペダルから足を離すとエンジンが停止する。拡大
スズキ ジムニー の中古車

オフロードが鍛えた驚異の粘り

今のジムニー(JB64型)のMT比率は2割だという。おそらくMTを選ぶ人は“指名買い”だろう。そうあるべきだと思う。

5段MTのジムニーは7000rpm+のレブリミットまで回してもローで33km/h、セカンドでも54km/hしか出ない。ちなみに「ホンダS660」の6段MTはローで50km/h、セカンドは81km/hまで伸びる。「本籍、オフロード軽四駆!」を思い知らされるウルトラローギアリングである。そのため、とくに発進加速の頻度が高い街なかだと、右足ひとつでスイスイ加速してゆくATジムニーとはまったく違う運転物件である。

そのかわり、低速でのエンジンやパワートレインの“粘り”は驚くべきだ。エンストしてもすぐにクラッチペダルを踏み込めば再始動する、なんていう親切機構は付いていないが、そもそも実用の場面でMTジムニーをエンストさせるのは不可能である。スタートでどんなに荒っぽいクラッチミートをしてもシレっと立ち上がる。シフトダウンをサボって高いギアのままアイドリングスピードで路地のカドを曲がれる。急坂も4速でゆっくり登れてしまう。言うまでもなく、副変速機はハイレンジのままでだ。登山者ならぬ“登山車”である。

新設されたアイドリングストップはノープロブレムだ。MTはクラッチをつなぐひと手間があるから、ATのように再始動のタイムラグでまだるっこしさを感じることはない。ただ、エンジンが止まる瞬間、縦置きエンジンがブルンと小さく揺れるのはATにはない個性である。

悪路走行時にエンジンが止まらないよう、アイドリングストップ機構は2WD走行時にしか作動しない。
悪路走行時にエンジンが止まらないよう、アイドリングストップ機構は2WD走行時にしか作動しない。拡大
「R06A」型0.66リッター直3ターボエンジンは、低回転域から力強いトルクを発生する特性の持ち主。悪路走行を考慮して、雪や水、飛び石などへの対策もとられている。
「R06A」型0.66リッター直3ターボエンジンは、低回転域から力強いトルクを発生する特性の持ち主。悪路走行を考慮して、雪や水、飛び石などへの対策もとられている。拡大
ドライブトレインのギア比は、同じ5段MTの「ジムニーシエラ」と比べてかなり低め。舗装路では6000rpmまで引っ張ることもしばしばだが、悪路ではそうやすやすとエンストしない、粘り強さを発揮する。
ドライブトレインのギア比は、同じ5段MTの「ジムニーシエラ」と比べてかなり低め。舗装路では6000rpmまで引っ張ることもしばしばだが、悪路ではそうやすやすとエンストしない、粘り強さを発揮する。拡大
スズキ車のインフォテインメントシステムには、順次新世代のディスプレイオーディオが導入されているが、「ジムニー」にその設定はない。試乗車には販売店オプションのナビゲーションシステムが搭載されていた。
スズキ車のインフォテインメントシステムには、順次新世代のディスプレイオーディオが導入されているが、「ジムニー」にその設定はない。試乗車には販売店オプションのナビゲーションシステムが搭載されていた。拡大

独自のファン・トゥ・ドライブがある

街なかでは“MTの僕(しもべ)”になる覚悟がいるマニュアルジムニーも、高速へ上がればフツーだ。100km/h時のエンジン回転数は5速トップで3800rpm。これは4段ATの4速とまったく同じだから、MTだから高速でうるさいとか静かとかいった違いはないはずだ。

高速道路でも街なかでも、オンロードでもオフロードでも、ジムニーを運転していると、堅固な鋼鉄製ハシゴ型フレームの上に載っている“実感”が常にある。それはラダーフレームを採用する「ジープ・ラングラー」にも「トヨタ・ランドクルーザー」にもあるが、今回、マニュアル変速を楽しみながら峠道を走ってみると、ジムニーはそういうステージでも格別にファン・トゥ・ドライブだった。ターマックのカーブでは腰高のボディーがグラッと傾く。でも、傾いたところで安定しているからこわくない。重量感のある床下のラダーフレームが、ヨットの船底から伸びるキール(おもり)をイメージさせる。

約340kmを走って、燃費は13.9km/リッター(満タン法)だった。658cc 3気筒ターボを容赦なく回してこの数値は、けっしてワルくないと思う。4年前に試乗したATのXCは11km/リッター台だったから(参照)、燃料経済性におけるMTの優位性は明らかだろう。

クルマのつくりは古式ゆかしきクロスカントリー車そのもので、車体にはハシゴ型のフレームにボディーを載せたボディー・オン・フレーム構造を、足まわりには前後ともにリジッドアクスル式のサスペンションを採用する。
クルマのつくりは古式ゆかしきクロスカントリー車そのもので、車体にはハシゴ型のフレームにボディーを載せたボディー・オン・フレーム構造を、足まわりには前後ともにリジッドアクスル式のサスペンションを採用する。拡大
シートには最廉価の「XG」を除き、はっ水加工の表皮と運転席/助手席シートヒーターを採用。前席のスライド機構は10mmごとにピッチが切られており、前後のポジションを細かく調整できる。
シートには最廉価の「XG」を除き、はっ水加工の表皮と運転席/助手席シートヒーターを採用。前席のスライド機構は10mmごとにピッチが切られており、前後のポジションを細かく調整できる。拡大
「ジムニー」のパートタイム4WDは、走行中でも2WDと4WDの切り替えが可能。ただし舗装路でも4WDのままにしていると、タイトコーナーブレーキング現象が起きるので注意が必要だ。
「ジムニー」のパートタイム4WDは、走行中でも2WDと4WDの切り替えが可能。ただし舗装路でも4WDのままにしていると、タイトコーナーブレーキング現象が起きるので注意が必要だ。拡大

MTこそ本家本元

筆者は月に1回、取材で全国の峠を走っている。国道ならぬ酷道、県道ならぬ険道の峠道だ。落石の直撃で九死に一生を得たこともある。熊と一緒に走ったこともある。そういう道を走るのに、毎回でも乗っていきたいのがジムニーである。

遠隔地の峠だと、往復は高速道路で移動しないといけない。その点で二の足を踏んだ先代ジムニーに対して、格段の進歩を遂げたのが今のJB64型である。快適性の向上が行動範囲を広げたのだ。その一方、本来のオフロード性能も犠牲にしなかった。というか、4代目でも「ジムニーであること」を変えなかった。奥多摩の狭い峠道を上っていたら、杉の丸太を積んだトラックが上からおりてきた。すれ違えないから、こっちがバックするしかない。そんなときもジムニーならラクで気楽だ。

縦置きエンジンで軽としてはロングノーズだから、その分、車室長は短い。そのため、後席やトランクの狭さはおなじみだが、そのかわり、運転席から振り返って、これほど後ろがよく見えるクルマはない。

副変速機付きの本格的オフロード四駆でも、車重は1tそこそこ。崩れやすそうな崖側の路肩に寄せるときも、ランクルやジープよりはるかに安心だ。ボディーが軽ければ、深雪やぬかるみにも強い。極端なオフロードコースでアクロバットのようなことをさせなくても、ジムニーはありがたいのである。

そのなかでも、MTは「基本のジムニー」である。ジムニーのオリジナルはやっぱりこれだなと痛感した。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

軽自動車規格に収まるボディーの全幅はわずかに1475mm。「ドアパネルの向こうがボディーの縁」といった感覚で、スクエアな車体形状とも相まって車両感覚は良好だ。
軽自動車規格に収まるボディーの全幅はわずかに1475mm。「ドアパネルの向こうがボディーの縁」といった感覚で、スクエアな車体形状とも相まって車両感覚は良好だ。拡大
タイヤサイズは175/80R16と、かなりの大径・高偏平。障害物にヒットしないよう、バンパーの左右端は斜めに切り上げられている。
タイヤサイズは175/80R16と、かなりの大径・高偏平。障害物にヒットしないよう、バンパーの左右端は斜めに切り上げられている。拡大
荷室の広さは限られているが、後席をフラットに格納できるなど機能性は上々。ユーティリティーナットや荷室フックナット、ラゲッジアクセサリーソケットなども装備される。
荷室の広さは限られているが、後席をフラットに格納できるなど機能性は上々。ユーティリティーナットや荷室フックナット、ラゲッジアクセサリーソケットなども装備される。拡大
オフロード車ならではの粘り強いエンジン特性を味わうなら、やはりMTが好適。街なかでのちょっとせわしない操作性も含め、昔ながらの「ジムニー」の走りを味わうことができた。
オフロード車ならではの粘り強いエンジン特性を味わうなら、やはりMTが好適。街なかでのちょっとせわしない操作性も含め、昔ながらの「ジムニー」の走りを味わうことができた。拡大
スズキ・ジムニーXC
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スズキ・ジムニーXC(4WD/5MT)【試乗記】の画像拡大
 
スズキ・ジムニーXC(4WD/5MT)【試乗記】の画像拡大
 
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テスト車のデータ

スズキ・ジムニーXC

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1725mm
ホイールベース:2250mm
車重:1040kg
駆動方式:4WD
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:5段MT
最高出力:64PS(47kW)/6000rpm
最大トルク:96N・m(9.8kgf・m)/3500rpm
タイヤ:(前)175/80R16 91S/(後)175/80R16 91S(ブリヂストン・デューラーH/L 852)
燃費:16.6km/リッター(WLTCモード)
価格:180万4000円/テスト車=212万1130円
オプション装備:ボディーカラー<ブリスクブルーメタリック×ブラック2トーンルーフ>(4万4000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン>(2万0515円)/パナソニック スタンダードプラス8インチナビ(17万1105円)/オーディオ交換ガーニッシュ(5830円)/アンテナセット・アンテナ交換ケーブル(1万6830円)/ドライブレコーダー(3万7730円)/ETC車載器(2万1120円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:171km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:340.8km
使用燃料:24.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.9km/リッター(満タン法)/13.6km/リッター(車載燃費計計測値)

 
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