BMWアルピナXB7(4WD/8AT)
仕事きっちり 2023.07.18 試乗記 独立した自動車ブランドとしてのアルピナの歴史が間もなく終わろうとしている。残された時間を考えると、先ごろマイナーチェンジモデルが登場した「XB7」は、おそらく最終版となるに違いない。アルピナ最強のV8エンジンと珠玉の足まわりを心ゆくまで味わってみた。その日まで
アルピナ・ブルクハルト・ボーフェンジーペンGmbH+Co.KGがそのブランドをBMWに譲り渡すとのニュースが届いたのは、2022年春にアルピナXB7に試乗したちょうど同じ時期だった。2025年末でこれまでのアルピナとBMWの関係は終わりを告げる。その後アルピナはどのような道を選ぶのか、BMWがアルピナブランドをどう扱うのか、その先のことはまだ明らかになっていない。もうこれまでどおりにはいかないのに、今ここで新しいXB7を発売するの? と思う人がいるかもしれないが、幕引きを迎えるその日まできっちり予定どおりにビジネスを遂行するらしく、この後もLCI(ライフサイクルインパルス)と称するマイナーチェンジモデルが発売されるという。したがって、上下2分割のランプユニットを備えたアグレッシブなフェイスが特徴の新しい「X7」をベースにしたXB7をはじめ(車種によって事情は異なるというが)アルピナはまだまだ注文を受け付けている。
繰り返しになるが、アルピナ(正式社名は創業者の名前を冠したアルピナ・ブルクハルト・ボーフェンジーペンGmbH+Co.KG。車名にはBMWアルピナとBMWがつく)は、「BMW 1500」用のキャブレターの開発からスタートし、歴代のBMW各車をベースに極めて端正で高品質かつ高性能なセダンとクーペ、さらにSUVをつくり続けてきたユニークな自動車メーカーである。BMW Mやメルセデス・ベンツのブランドのひとつとしてグループ企業となっているメルセデスAMGとは異なり、現在に至るまでアルピナはBMW本体との資本関係を持たず、それでいながらBMWとの深い協力関係を維持しているのが特徴的だ。年間生産台数は現在もわずか2000台程度。自動車界の激変期にあって、事業継承先にBMWを選んだのはもうすぐ60年になる歴史を考えれば当然のことだろう。ブランドを買い取りたいと手を挙げたメーカーは多数あったというが、そのなかには日本メーカーもあったと聞く。
豪奢なスーパーSUV
端正なエレガンスを旨としてきたのがアルピナではあるが、ベースモデルがこれほど巨大で、あたりを払うような圧力を発散するSUVとなると、もう単純に圧倒される。インテリアも、汚してしまったらどうしようとの心配が先に立つ、恐れ多い貴賓室のようだ。最新BMW各車と同様、インストゥルメントパネルにはカーブドディスプレイが備わったが、他の部分はおおむねこれまでどおり。青く輝くクリスタルガラス製の、スイッチトロニック付き8段ATのシフトセレクター、iDriveダイヤルも残されている。ただし、ステアリングはBMWのMスポーツステアリングホイールと同じくリムが太い。最新のADAS系センサーを内蔵するために、巻き直してはいるらしいが、独自品に変更できないのだという。それゆえに従来のボタン式セレクターではなくシフトパドル(オプション)が備わっている。フレームに刻まれたシャシーナンバーも打ち直したものではなくなっている(以前はBMW側のナンバーを消し、新たに打っていた)。やはり少しずつアルピナも変わっているのである。
豪奢(ごうしゃ)な7人分のシートはすべて電動式で、ワンタッチで2&3列目シートを倒してフラットにするスイッチも備わっている。これが0-100km/h加速を4.2秒でこなし、290km/hで巡航できるというから恐れ入る。
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マイルドハイブリッドシステムを装備
XB7は、アウトバーンなどで酷使されても音を上げない耐久性と信頼性のために、独自の冷却系やターボチャージャーを備えたアルピナ最強の4.4リッターV8ツインターボを搭載する。スペックは621PS/5500-6500rpmと800N・m/1800-5400rpm、それに加えて新たに48Vのマイルドハイブリッドシステムを搭載している。全長5.15m、全幅2mでホイールベース3105mm、車重2.6t以上という3列シート7人乗りのSUVである。
当然踏めば猛然と加速するが、いっぽうで優雅に静々と、滑るように走らなければ高級車とはいえない。とりわけエアサスペンションと可変ダンパー、さらにインテグレーテッドアクティブステアリングに支えられた乗り心地は、オプションの23インチというけた外れに巨大なアルピナ専用「ピレリPゼロ」(標準装備は21インチ)を履いているにもかかわらず、まったりまろやかである。コンフォートモードでは船のように緩やかな上下動が残り、いやでも巨大な質量を感じさせるが、スピードが増せばどんどんフラットになっていく。エアサスペンションは車速が上がると自動的に車高がダウンするほか、マニュアル操作で各40mm上下させることもできる。
川の流れは絶えずして
スポーツモードでは姿勢変化もグッと抑えられ(スポーツ/スポーツプラスモードを選択しても車高が各20mm下がる)、山道もまったく苦にしない正確なステアリングを備えているが、そうはいっても巨体と重さを考えれば、狭い道に分け入るのではなく、ハイウェイを堂々と走るのがお似合いだ。端正なアルピナクラシック鍛造ホイールを傷つけないためにもラフロードには踏み込みたくない。ちなみにXB7はアルピナの本拠地バイエルンのブッフローエから海を隔てた米国スパータンバーグ工場製(BMWの大型SUVはほぼ米国生産)である。
流れる水もまた元の水にあらず、ではないが、すべて変わらないことはない。十分な余裕をもって事業継承を発表したのは、いかにもアルピナらしい責任感ある、そして潔い身の処し方ではないだろうか。上述したように将来については何も明らかになっていないが(アルピナは常に口が堅い)、この先も最後まできっちり着実に仕事を続けることは間違いない。もともと生産台数が限られているから、なくなるのであれば今のうちに買っておきたい、とにかくすぐに手に入れたい、という人は少ないはずだが、心配な方は早めに問い合わせてみることをお勧めする。
(文=高平高輝/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMWアルピナXB7
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5180×2000×1835mm
ホイールベース:3105mm
車重:2670kg
駆動方式:4WD
エンジン:4.4リッターV8 DOHC 32バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:621PS(390kW)/5500-6500rpm
エンジン最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)/1800-5400rpm
モーター最高出力:12PS(9kW)/2000rpm
モーター最大トルク:200N・m(20.4kgf・m)/0-300rpm
タイヤ:(前)285/35ZR23 107Y/(後)325/30ZR23 109Y(ピレリPゼロ)
燃費:7.3km/リッター(WLTPモード)
価格:2740万円/テスト車=3128万8000円
オプション装備:スペシャルペイント<アルピナブルー>(63万円)/フルレザーメリノ<アイボリーホワイト×アトラスグレー>(48万5000円)/ヘッドレストのひし形マーク<青×緑>(9万9000円)/ラヴァリナレザーステアリング<白×黒>(18万6000円)/アルピナパドルシフト(7万円)/パノラマサンルーフスカイラウンジ(15万8000円)/サンプロテクションガラス(11万5000円)/アンビエントエアーパッケージ(5万円)/5ゾーンオートマチックエアコンディショナー(14万円)/Bowers & Wilkinsダイヤモンドサラウンドサウンドシステム(61万7000円)/アルピナクラシック23インチホイール<鍛造・アンソラジット>(89万2000円)/アルピナインテリアトリム<ピアノブラック>(20万6000円)/ルーフライニング<アルカンターラ>(24万円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:985km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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