ファミリーカーにちょうどいいパワーは何馬力?
2023.07.25 あの多田哲哉のクルマQ&A世の中には軽自動車からスーパースポーツまで、エンジン車からEVまで、さまざまな出力のクルマがあります。では、ごく一般的かつ平均的な「5人で乗れるファミリーカー」を前提とするなら、どれほどの出力が適正と考えられるでしょうか? 「〇〇PSもあれば十分」「〇〇PSは必要とされる」という、現代の基準値のようなものがあれば教えてください。
ファミリーカーに適切な出力……なかなか難しい質問ですね(笑)。その基準値は、実はありません。もっとも、今あるクルマでユーザーから「あまりにもパワー不足で困る」と言われることは、ないとは思います。
そのうえで、何か基準のようなものを挙げるとするなら、軽自動車の自主規制値がそれにあたるのではないでしょうか。最高出力は64PSまで。軽の車重を800kgとすると、1tあたり80PS、1.5tで120PS。数値としては地味ですが、それで必要十分と考えればいいのだろうと思います。
かつてパワーの値こそが注目点で、ライバル車同士を比較するポイントだった時代もありましたが、いまやファミリーカーの購入に際して、この数字はさほど重要視されていません。あくまで参考にする程度です。ユーザーもメーカーも、気にしているのはむしろ燃費値というのが実情ですね。

多田 哲哉
1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。