クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)

輝き方はひとつじゃない 2023.08.21 試乗記 藤沢 勝 兄弟車の「デリカミニ」に触発されたかどうかは定かではないが、日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」もスタイリングを一新するマイナーチェンジを受けた。カタログモデルでは最も高価な「ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション」を試す。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

車格を表す(?)スリット

新しくなった日産ルークスはフロントマスクのデザインがガラリと変わった。特にこのハイウェイスターでは、メッキパーツがヘッドランプから下に向かって波紋のように広がっており、新しさを感じさせる。ヘッドランプの先がサイドに回り込んでいるため、ワイド感を強める効果が顕著だ。

このきらびやかなフロントマスクは、先ごろフルモデルチェンジした「セレナ」に続いての採用だ。「キャラバン」のフロントグリルにもよく似たスリットが確認できるが、ここまで大胆ではない。いずれにしても日産はこうしたボックス形状のクルマにこの顔を当てはめていく考えのようだ。正式名称は「デジタルVモーション」である。

セレナと同じではあるものの厳密には少し違っていて、セレナには7本のスリットがあるのに対し、ルークスは一番上のデイタイムランニングライトを入れたとしても5本しかない。これが長幼の序である。こうした事実を知るにつけ、次期型「エルグランド」が楽しみになってくる。セレナとルークスで3本の差があるのだから、エルグランドは10本くらいのスリットで圧倒してほしい。

ミニバンのフロントマスク(のイメージ)をそのまま軽へという事例としては、直近では三菱の「デリカミニ」がある。つまりルークスは「セレナミニ」になったのだ。

今回の試乗車はとても長い名前が特徴的な「日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション」。もっと高価な特別仕様車もあるが、カタログモデルとしては最上級グレードになる。
今回の試乗車はとても長い名前が特徴的な「日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション」。もっと高価な特別仕様車もあるが、カタログモデルとしては最上級グレードになる。拡大
ボディーカラーには新色「カンジュクカシス」を追加設定。今回の試乗車はそれをルーフに使った「ホワイトパール×カンジュクカシス」。
ボディーカラーには新色「カンジュクカシス」を追加設定。今回の試乗車はそれをルーフに使った「ホワイトパール×カンジュクカシス」。拡大
フロントマスクは大胆にイメージチェンジ。新型「セレナ」と同じ「デジタルVモーション」を採用している。
フロントマスクは大胆にイメージチェンジ。新型「セレナ」と同じ「デジタルVモーション」を採用している。拡大
日産 ルークス の中古車webCG中古車検索

大人びた室内空間

ほぼ同じタイミングで新しくなったデリカミニとセレナミニだが、日産のほうが少し手が込んでいて、内装に新しいカラーリングを採用している。とりわけ最上級の2グレードであるハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(今回の試乗車)と「ハイウェイスターGターボ」にはカシス色のステッチをアクセントにしたレザー調のダッシュボードが使われている。決して華美ではないものの、安っぽさを隠すための妙な「デラックス感」がないため、好感の持てる空間だ。私のような40代の男性が乗っていても「奥さんの?」と言われてしまう心配はないだろう。室内が広いのは言うまでもない。

合皮のシートには小さな穴が無数に開けられており、その穴の断面にもカシス色が使われている。これが籠目模様を生み出しているのが面白い。穴が開いているからといってベンチレーション機能が付いているわけではないが(ヒーターはオプション)、〇日連続の猛暑日と報じられているようなこの夏のドライブでは見た目に涼やかでとても心地よかった。座面は身長178cmの私には少し短い。

今回のマイナーチェンジではこれまでオプション設定されていた「快適パック」(リアシーリングファン、ピクニックテーブル、カップホルダー、USBポート、ロールサンシェードなど)がハイウェイスターシリーズに標準装備になった。選ぶ人が多いからという判断だろうが、そのぶんきっちり値段は上がっている。

「三菱デリカミニ」の兄弟車にあたる「日産ルークス」。日産と三菱の合弁会社NMKVが開発し、三菱の水島製作所で生産される。
「三菱デリカミニ」の兄弟車にあたる「日産ルークス」。日産と三菱の合弁会社NMKVが開発し、三菱の水島製作所で生産される。拡大
ダッシュボードにはカシス色のステッチ入りのレザー調素材が貼られる。メッキパーツでギラギラと飾り立てていないところに好感が持てる。
ダッシュボードにはカシス色のステッチ入りのレザー調素材が貼られる。メッキパーツでギラギラと飾り立てていないところに好感が持てる。拡大
メーターパネルはコンベンショナルな2眼式。ブルーのアクセントが目に優しい。
メーターパネルはコンベンショナルな2眼式。ブルーのアクセントが目に優しい。拡大
エアコンのスイッチはタッチパネル式。指紋が付きやすいが、エンジンオフ時にまとめて拭き掃除ができるという利点もある。
エアコンのスイッチはタッチパネル式。指紋が付きやすいが、エンジンオフ時にまとめて拭き掃除ができるという利点もある。拡大

抑えきれないほどのトルク

快適パックが標準装備になったとはいえ、今回試乗した個体にはそれでもまだボディーカラーも含めておよそ55万円分のオプションが付いている。特に高額なのは30万円以上もするカーナビだ。今どき30万円も払えば畳みたいに大きなテレビが買えるというのに、である。マップデータは持たないものの、スマートフォンをつないで「Apple CarPlay」と「Android Auto」が使えるディスプレイオーディオを9万5000円ほどで付けられるので、私ならそれを選びたい(それでも高いが)。いずれにしてもルークスとデリカミニは、こうしたオプションを選ばないと運転席まわりにUSBポートがひとつもないのが困りどころだ(標準装備になったのは助手席の後ろにあるもの)。

ターボ、自然吸気を問わずエンジンはマイルドハイブリッドである。モーターのスペックは最高出力2.7PS、最大トルク40N・mと目立つ数字ではないが、その効果は割と如実に感じられる。特に信号待ちからのゼロ発進のときなどは、アクセルペダルを軽く踏んでいるだけでグイグイと進む。ペダルを通じて抑えきれないほどのトルクを感じる。車重が1010kgもあることを忘れさせてくれる頼もしいパワートレインであり、カーブの出口などではグイッと踏み込みたい気持ちになる。いずれにしてもエンジンとモーターの連携によって、街乗りでは不満よりも満足を感じることのほうが多かった。

一方で、高速道路に入ると車重を深く意識することになる。平たんなところを80km/h走行しているときのエンジン回転数が2500rpmくらいで、もちろん人にもよるだろうが、音や振動などの環境面ではこれが安楽に巡行できる上限だと思う。100km/h巡行は3500rpmくらいで、上り勾配に差しかかれば5000rpmにはね上がることもある。「プロパイロット」の車間距離とステアリングの制御は確実だが、例えば追従している前のクルマが急に速度を上げると、こちらはついていけずに遅れてしまう。その際にエンジンがうなりを上げるのはともかく、広がった車間に隣り車線からクルマが入ってきたら……と、ひやりとすることが何度かあった。

パワーユニットは最高出力64PSの3気筒ターボエンジンと同2.7PSのモーターの組み合わせ。街乗りでは十分すぎるパワーを味わえる。
パワーユニットは最高出力64PSの3気筒ターボエンジンと同2.7PSのモーターの組み合わせ。街乗りでは十分すぎるパワーを味わえる。拡大
合皮のシートには小さな穴が無数に開けられており、籠目模様を描き出す。着座感は柔らかめ。
合皮のシートには小さな穴が無数に開けられており、籠目模様を描き出す。着座感は柔らかめ。拡大
後席は前後320mmのスライド調整が可能。一番後ろに固定するとドライバーが遠い。
後席は前後320mmのスライド調整が可能。一番後ろに固定するとドライバーが遠い。拡大
奥のシートを一番前に、手前のシートを一番後ろにしてみる。さらに背もたれの角度も変えられる。
奥のシートを一番前に、手前のシートを一番後ろにしてみる。さらに背もたれの角度も変えられる。拡大

乗り心地は非常に良好

同じ規格内で勝負している以上、これはルークスに特有の弱点というわけではないし、軽スーパーハイトワゴンであればどれも似たり寄ったりのポイントではある。ルークスは時間をかけて加速すれば120km/hでも走れるし、プロパイロットだって速度を115km/hまでセットできる。これ1台でどうにかしようと考えるならば、多少の我慢と知恵が必要である。

クルマの名前がハイウェイスターじゃないか! と言われると返す言葉がない。誰もが藤川球児のようになれるわけではないし、たぬきうどんにはたぬきが入っていない。慌てず騒がず、家族が快適に過ごせるようにゆっくり走る。それもひとつの輝き方だ。

そして、このジャンルのクルマとしては乗り心地が非常によかったことも記しておきたい。少なくとも一般道では深くロールして怖い思いをすることはなかったし、突き上げがよく抑えられた現代的でフラットな足まわりだ。この手のクルマを具体的に検討している人は、デリカミニの4WDモデルの柔らかい足まわりと乗り比べてみると面白いと思う。

……惜しむらくはこのタイミングで「N-BOX」のフルモデルチェンジが発表されたことですね。新型のことは分かりませんが、少なくともルークスが2代目N-BOXに見劣りするところはほとんどないと思います。

(文=藤沢 勝/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝)

今回の試乗では満タン法で12.6km/リッターの燃費をマークした。燃料タンクの容量は27リッター。
今回の試乗では満タン法で12.6km/リッターの燃費をマークした。燃料タンクの容量は27リッター。拡大
筆者のお気に入りポイントのひとつであるセンターコンソールの引き出し式のトレー。
筆者のお気に入りポイントのひとつであるセンターコンソールの引き出し式のトレー。拡大
助手席前方の引き出し。この下には別にグローブボックスがあり、さらに助手席の下にも引き出しがある。
助手席前方の引き出し。この下には別にグローブボックスがあり、さらに助手席の下にも引き出しがある。拡大
後席を一番前に固定したときの荷室はご覧のとおり。スーパーマーケットのかごが縦に入るくらいの奥行きがある。
後席を一番前に固定したときの荷室はご覧のとおり。スーパーマーケットのかごが縦に入るくらいの奥行きがある。拡大

テスト車のデータ

日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1780mm
ホイールベース:2495mm
車重:1010kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:64PS(47kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/2400-4000rpm
モーター最高出力:2.7PS(2.0kW)/1200rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:19.2km/リッター(WLTCモード)
価格:216万5900円/テスト車=271万9545円
オプション装備:特別塗装色<ホワイトパール×カンジュクカシス>(7万1500円)/インテリジェントルームミラー(3万8500円)/本革巻きステアリングホイール+ホットプラスパッケージ<ヒーター付きドアミラー、ステアリングヒーター、前席ヒーター付きシート、リアヒーターダクト>+高濃度不凍液+PTC素子ヒーター(4万1800円) ※以下、販売店オプション ナビレコパック+ETC2.0(31万5050円)/Qi対応ワイヤレス充電器(3万4800円)/USBソケット(1万7160円)/ウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ、フロントドアガラス>(1万1935円)/フロアカーペット<エクセレント>(2万2900円)

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:884km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:158.1km
使用燃料:12.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:12.6km/リッター(満タン法)/12.7km/リッター(車載燃費計計測値)

日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション拡大
 
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】の画像拡大
藤沢 勝

藤沢 勝

webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。

試乗記の新着記事
  • アウディSQ6 e-tron(4WD)【試乗記】 2025.9.17 最高出力517PSの、電気で走るハイパフォーマンスSUV「アウディSQ6 e-tron」に試乗。電気自動車(BEV)版のアウディSモデルは、どのようなマシンに仕上がっており、また既存のSとはどう違うのか? 電動時代の高性能スポーツモデルの在り方に思いをはせた。
  • トヨタ・ハリアーZ“レザーパッケージ・ナイトシェード”(4WD/CVT)【試乗記】 2025.9.16 人気SUVの「トヨタ・ハリアー」が改良でさらなる進化を遂げた。そもそも人気なのにライバル車との差を広げようというのだから、その貪欲さにはまことに頭が下がる思いだ。それはともかく特別仕様車「Z“レザーパッケージ・ナイトシェード”」を試す。
  • BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】 2025.9.15 フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。
  • スズキ・アルト ハイブリッドX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.13 「スズキ・アルト」のマイナーチェンジモデルが登場。前後のバンパーデザインなどの目に見える部分はもちろんのこと、見えないところも大きく変えてくるのが最新のスズキ流アップデートだ。最上級グレード「ハイブリッドX」の仕上がりをリポートする。
  • トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”【試乗記】 2025.9.12 レースやラリーで鍛えられた4WDスポーツ「トヨタGRヤリス」が、2025年モデルに進化。強化されたシャシーや新しいパワートレイン制御、新設定のエアロパーツは、その走りにどのような変化をもたらしたのか? クローズドコースで遠慮なく確かめた。
試乗記の記事をもっとみる
日産 ルークス の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。