実はすごい? サブスクだけじゃないKINTOのサービス
2023.08.31 デイリーコラムサブスクだけじゃないKINTOのサービス
「人とクルマとの新しい関係を提案する愛車サブスクリプションサービス」として、2019年に鳴り物入りで始まった「KINTO(キント)」。
この記事をお読みの方がKINTOを利用した経験があるかどうかわからないが、少なくともその名前とおおむねの事業内容は知っているだろう。冒頭で申し上げたとおり、要はトヨタ車とレクサス車のサブスクサービスであり、当初、トヨタファイナンシャルサービスと住友三井オートサービスの出資のもとに生まれたのがKINTOだ。現在は住友商事と三井住友フィナンシャルグループも株主に名を連ねている。
納車待ち○年という人気車種でも、サブスクリプションサービスのKINTOでなら短納期で利用できるケースがあるのはKINTOの裏メニュー的なアドバンテージとして知られるところだ。しかし近ごろは、「単なるクルマのサブスク」だけにはとどまらない領域にまでそのビジネスの手を広げていることをご存じだろうか。
代表的なところでは「KINTO Unlimited」がある。これは「クルマのサブスクがトヨタの最新技術とコラボ」とうたわれるサービスで、要はKINTOを通じて納車されたクルマに対してソフトウエアのアップデートだけでなく、ハードウエアのアップデートも行うというものだ。
「OTA=Over The Air」技術を使うことで、クルマを工場に入庫させずともソフトウエアをアップデートできる──ということについては、比較的容易にイメージできる。だが「ハードウエアもアップデート可能」というのは少々驚きで画期的だ。
例えば、KINTOでクルマを契約した際には「必要ないな」と判断して装着しなかったブラインドスポットモニターやパノラミックビューモニター(床下透過表示機能付き)を、納車からしばらくの時間がたったタイミングで「やはり欲しくなった」という理由で、後付けすることができるのだ。
そしてその後付けに関する費用も、月額料金にプラスオンするかたちで払うことができるのである(一括で支払ってしまうことも可能)。
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装備や機能の後付けもできる
2023年8月下旬現在、KINTO Unlimitedでアップグレード可能なハードウエアは「ブラインドスポットモニター」や「Toyota Safety Sense機能拡張」など7アイテムに限られているが、今後は「シートヒーター」や「シートベンチレーション」なども追加される予定とのこと。
ただし、今のところKINTO Unlimitedにおいて「アップグレード」サービスの対象車種となっているのは「プリウスU」と、同モデルの「モデリスタ仕様」だけ。そこについては少々残念だが、今後、アップグレードレディ設計(納車後の部品や機能の後付けに必要な設計をあらかじめ織り込んでおく設計)がプリウスのUグレード以外にも広がっていくことを期待したいと思う。
KINTO UnlimitedはKINTOでサブスク契約を結んだクルマだけが対象となるサービスだが(より正確にはプリウスUだけのサービス)、「KINTO FACTORY」として展開している「アップグレードセレクション」は、KINTOのサブスク車以外でも利用できる。
同サービスが行ってくれるのは、すでに購入済みのトヨタ車およびレクサス車のリフォーム(内外装のリフレッシュや再生)とアップグレード(オプションの後付けや運転支援システムのアップグレードなど)、そしてパーソナライズ(ドライバーに合わせたソフトウエアのカスタマイズ)だ。
例えば現行型「ハリアー」であれば、アップグレードセレクションにてハンズフリーパワーバックドア(挟み込み防止機能・停止位置メモリー機能付き)を後付けすることができ、購入時は「不要かな?」と思って装着しなかったブラインドスポットモニター/パーキングサポートブレーキ(後方接近車両)やアクセサリーコンセント(AC100V・1500W)も装着できる。また「アクア」などではシートの張り替えや本革ステアリングホイールへの交換も行うことが可能だ。
こういったリフォーム(カスタマイズ)というのは従来、「街のクルマ屋さん」が担ってきた領域だ。しかし、旧車やマニア向けのレアな車両ならともかく、クルマの電子制御化が極端に進みユーザーが正規販売店以外に自分のクルマを触らせることに抵抗も感じるようになってきた昨今、自動車メーカー直系であるKINTOがこれを請け負うことには意味と価値がありそうだ。
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目指すはモビリティープラットフォーマー
KINTOの事業領域は、クルマ本体に関連することだけにとどまらない。例えばKINTOは現在、行きたいをつなげる「おで活」アプリと題した「my route」というMaaS(Mobility as a Service=あらゆる交通機関をシームレスに結びつけ、人々が効率よく使えるようにするシステム)も展開している。
要するにKINTOは今、本業であるクルマのサブスクを含めて「移動に関するすべてを巻き取るプラットフォーム」になろうとしているのかもしれない。
知らず知らずのうちに何かひとつの企業に移動に関連するすべてを押さえられるのは、正直気持ちのいいものではない。だが、まぁトヨタ(KINTO)という“長いもの”に巻かれる生活は意外と悪くないのかも? とも思う。
KINTOの本業である「クルマのサブスク」に対しても、「結局はあんなの割高なだけじゃないか!」という批判はあり、それはそのとおりでもある。カーライフを徹底的に安くあげようと思ったら、時間をかけて購入候補車両を徹底的に吟味し価格交渉を行い、納車後もエンジンオイル交換ぐらいは必ず自分でやるし、そのほかも、できることは何でも自分でやる。車検は当然ユーザー車検! という姿勢でいくに限るのだ。
しかし同時に世の中には「タイム・イズ・マネー」という言葉もある。自分の貴重な時間をそういった“節約行為”には投入せず、外部に丸投げできることは丸投げし、空いた時間を、別の何か有意義なことやお金を生み出せることに使ったほうがいい──という考え方もあるわけだ。
後者のような考え方に近い自動車ユーザーの場合は、KINTOのような「すべてコミコミで周辺サービスも充実したサブスク」を利用する価値は普通にあるだろう。節約大作戦を敢行しながらクルマを購入し、自分で維持管理するよりはいくぶん割高だが、「タイム・イズ・マネー」や「付加価値サービス」を利用するといった観点からすると、単純にそうとも言えないからだ。
(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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