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日本導入は1.5リッターガソリン車のみ インド製「WR-V」はホンダのエントリーSUVとして成功するのか?

2024.01.05 デイリーコラム 櫻井 健一
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「ヴェゼル」があるのに

2024年3月22日に、いよいよホンダの新しいコンパクトSUV「WR-V」が発売される(参照)。これまで何度かリポートしてきたとおりWR-Vは、アジア最大となるタイの四輪開発拠点であるホンダR&Dアジアパシフィックが開発を担当し、インドのホンダカーズインディアが生産するグローバルモデルだ。

全長×全幅×全高=4325×1790×1650mmという「ホンダ・ヴェゼル」とほぼ同じボディーサイズで、前後のオーバーハングを極力切り詰め、四隅にタイヤを配した踏ん張り感を強調したフォルムが特徴である。スポーティーなルックスをもって都会派と称するSUVが多いなかで、タフさやラギッド感を前面に押し出したエクステリアデザインは、ちょっとした道具感もある。たくさんの荷物と人を乗せて、アウトドアアクティビティーに出かけるというSUV本来の使い方が似合いそうだ。

搭載されるパワートレインは、1.5リッター直4ガソリンエンジンのみの設定である。最高出力118PS、最大トルク142N・mを発生し、これにCVTが組み合わされる。前輪駆動車のみで、四輪駆動はもちろん、ハイブリッドやターボもない潔さだ。

ボディーサイズがヴェゼルとほぼ同じで、ハイブリッドも四輪駆動もないとくれば、誰もが思うに違いない。「なぜヴェゼルとバッティングしそうなボディーサイズで、しかも四輪駆動もないSUVをわざわざニューモデルとして販売するのか?」と。私もデビューの第一報を目にしたとき、正直同じように思った。いかに世の中がSUVブームの真っただ中とはいえサイズの近しい別モデルをラインナップするとは、並の神経ではありえない。

もっともホンダはSUV旋風(せんぷう)が吹き荒れ始めた2020年前後に、「グレース」「シビック」「インサイト」「アコード」「レジェンド」そして「クラリティ」とセダンをずらりと並べた前例がある。「ほら見たことか」とは言わないが、それから数年たった2024年1月現在、ホンダのラインナップにセダンは一台もない。

インドのホンダカーズインディアで生産されるグローバルモデル「WR-V」。2024年3月22日に正式発売される。車名のWR-Vは、「Winsome Runabout Vehicle(ウインサム ランナバウト ビークル)」の頭文字を組み合わせたもの。
インドのホンダカーズインディアで生産されるグローバルモデル「WR-V」。2024年3月22日に正式発売される。車名のWR-Vは、「Winsome Runabout Vehicle(ウインサム ランナバウト ビークル)」の頭文字を組み合わせたもの。拡大
タフさやラギッド感を前面に押し出したエクステリアデザインは、ちょっとした道具感もある。フロントフェイスで大きな面積を占める直立したフロントグリルと、全車に備わる薄型LEDヘッドランプの組み合わせが、ホンダの現行モデルとは異なるテイストを表現している。
タフさやラギッド感を前面に押し出したエクステリアデザインは、ちょっとした道具感もある。フロントフェイスで大きな面積を占める直立したフロントグリルと、全車に備わる薄型LEDヘッドランプの組み合わせが、ホンダの現行モデルとは異なるテイストを表現している。拡大
あえて重心を高く見せ、水平基調のリアコンビランプとガーニッシュを強調したという「WR-V」のリアビュー。テールランプとストップランプには全グレードでLEDが採用される。
あえて重心を高く見せ、水平基調のリアコンビランプとガーニッシュを強調したという「WR-V」のリアビュー。テールランプとストップランプには全グレードでLEDが採用される。拡大
パワーユニットは1.5リッター直4自然吸気ガソリンエンジンとCVTの組み合わせで、FF車のみの設定となる。最高出力は118PS/6600rpm、最大トルクは142N・m/4300rpm。WLTCモードの燃費値は16.2km/リッター。
パワーユニットは1.5リッター直4自然吸気ガソリンエンジンとCVTの組み合わせで、FF車のみの設定となる。最高出力は118PS/6600rpm、最大トルクは142N・m/4300rpm。WLTCモードの燃費値は16.2km/リッター。拡大
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ランボルギーニの黄金比と同じ?

正式発売を前に、ホンダの栃木プルービンググラウンドでWR-Vのプロトタイプモデルに触れることができた(参照)。屋外で見るWR-Vは、大型で垂直のフロントグリルがひときわ目を引いた。グリーンハウスの面積が狭く、高く配置したベルトラインと厚みのあるボディーサイドが強調される。分厚いドアロアーガーニッシュも計算された面積と形状だろう。かつてランボルギーニのデザイナー、ミティア・ボルケルト氏はハイパフォーマンスSUV「ウルス」のデザインについて、「ボディーサイドではボディーパネルとウィンドウの面積を2:1にするのが最もスポーティーに見える。ランボルギーニでは伝統的にその比率を目指している」と言っていたことを思い出した。WR-Vのサイドビューもそれに近い比率かもしれない。

台形のフェンダーアーチとその上に配置されるクラッディングも、WR-Vをタフに見せるデザイン要素である。クラッディングが施されたこともあって、タイヤの真上のボディーはより薄く見える。フェンダーの真上のボディーが薄ければ薄いほど、サイドビューが軽快に見えると教えてくれたのは元アウディのチーフデザイナーにして、現BYDのデザイン部門を率いるヴォルフガング・エッガー氏だったか。

ともかく、ルーフ後端が寝て、フロントがとがっているいまどきのスポーティーなSUVとは一線を画すフォルムである。「タフなデザインが大好きな北米あたりで人気が出そうなデザインですね」と水を向けたが、WR-Vの開発責任者である金子宗嗣氏は「WR-Vは日本とインドが販売の中心です。今後アジアの一部でも販売しますが、北米市場への投入は予定していません」と言う。北米市場に向かない理由は、ボディーが小さすぎるから。北米では「ZR-V」(同地域での車名は「HR-V」)がエントリーモデルにあたるそうだ。

そうしたデザイン面でのアプローチの違いとともに、WR-Vとヴェゼルが決定的に異なる要素がある。それは価格だ。WR-Vのスターティングプライスが「X」グレードの209万8800円に対して、ヴェゼルでは同パワーユニット搭載のFF車「G」グレードが239万9100円である。その差は30万0300円。WR-Vの価格は、既存の技術を使い、無駄を徹底的に排除したことによって実現できたという。

「WR-V」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4325×1790×1650mmで、ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」とほぼ同サイズ。サイドビューでは、グリーンハウスの面積が狭く高く配置したベルトラインと、厚みのあるボディーパネルが目を引く。切り詰められた前後オーバーハングにも注目だ。
「WR-V」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4325×1790×1650mmで、ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」とほぼ同サイズ。サイドビューでは、グリーンハウスの面積が狭く高く配置したベルトラインと、厚みのあるボディーパネルが目を引く。切り詰められた前後オーバーハングにも注目だ。拡大
操作や運転のしやすさを目指したとされるコックピットは水平基調のオーソドックスなデザイン。センターコンソールの中央に配置されるエアコンのスイッチは、特に説明がなくとも操作できるようにレイアウトされている。
操作や運転のしやすさを目指したとされるコックピットは水平基調のオーソドックスなデザイン。センターコンソールの中央に配置されるエアコンのスイッチは、特に説明がなくとも操作できるようにレイアウトされている。拡大
「Z」と上級グレードの「Z+」(写真)には、プライムスムース(合成皮革)とファブリックのコンビネーションシート表皮が採用されている。内装色は全グレードでブラックのみの設定となる。
「Z」と上級グレードの「Z+」(写真)には、プライムスムース(合成皮革)とファブリックのコンビネーションシート表皮が採用されている。内装色は全グレードでブラックのみの設定となる。拡大
室内高に余裕があるため、後席はゆったり乗れる。センターコンソールの後端にリアベンチレーションが全車に標準で装備され、リアドアの開口部が大きく乗り降りがしやすいのも「WR-V」の美点に挙げられる。
室内高に余裕があるため、後席はゆったり乗れる。センターコンソールの後端にリアベンチレーションが全車に標準で装備され、リアドアの開口部が大きく乗り降りがしやすいのも「WR-V」の美点に挙げられる。拡大

WR-Vのカスタマイズモデルも登場

もしも自分が実際に購入しようとすると、カーナビやETC車載器、ドラレコ、フロアマットなどがプラスされてWR-Vが250万2610円にヴェゼルが268万8400円となりその差は小さくなるが、それでもWR-Vのアドバンテージは揺るがない。最もベーシックなフロアマットを比較すると、WR-Vが2万5300円であるの対してヴェゼルは3万2780円と少々お高い設定だ。専用アイテムにも価格差が設けられている。

ヴェゼルのガソリン車は、ヴェゼル全体の数%ほどの販売数でしかないと聞く。この数%も含めて、リーズナブルにSUVを手に入れたいという層にWR-Vは強みを発揮するだろう。もっと具体的に言えば、ホンダのハイブリッドが欲しい層はヴェゼル、パワーユニットはガソリンエンジンのほうがいいと考える向きはWR-Vと、ユーザーはしっかり二分されると予想できる。車両価格の高いハイブリッド車に乗るぐらいなら、燃費的には多少不利でも安いガソリン車のほうがトータル支出は抑えられると合理的に考える層も少なくないからだ。ハイブリッドも四駆も省いて、安全装備に手を抜かず実用性とSUVっぽいカッコよさ、そして価格を追求したのがWR-Vである。

キャラクター的には、トヨタでいうなら都会派の「ハリアー」と、アウトドア志向の「RAV4」のようなすみ分けが理想だ。Bセグメントのライバルと目される「ダイハツ・ロッキー」「トヨタ・ライズ」が新車で購入できないこの状況も、WR-Vには追い風になるだろう。

「東京オートサロン2024」(開催期間:2024年1月12日~14日)では、「WR-V FIELD EXPLORER CONCEPT(フィールドエクスプローラー コンセプト)」も展示される予定だ。SUVらしいタフさを際立たせるカスタマイズは、どこかアメリカのパークレンジャー車両を想起させるような……と、今から実車を見るのが楽しみだったりする。

(文=櫻井健一/写真=本田技研工業/編集=櫻井健一)

「WR-V」のエントリーグレードとなる「X」の車両本体価格は209万8800円。16インチサイズのスチールホイールが標準で装備される。ボディーカラーは他グレードと同じく、写真の「プラチナホワイト・パール」など全5色を設定している。
「WR-V」のエントリーグレードとなる「X」の車両本体価格は209万8800円。16インチサイズのスチールホイールが標準で装備される。ボディーカラーは他グレードと同じく、写真の「プラチナホワイト・パール」など全5色を設定している。拡大
「WR-V」の「X」グレードでは、ファブリックシートが標準仕様となり、後席のセンターアームレストやリアパーセルカバー、ステアリングホイールとシフトノブの本革巻き仕上げなどの装備・仕様が省略される。
「WR-V」の「X」グレードでは、ファブリックシートが標準仕様となり、後席のセンターアームレストやリアパーセルカバー、ステアリングホイールとシフトノブの本革巻き仕上げなどの装備・仕様が省略される。拡大
2021年4月に発売された2代目「ヴェゼル」。リアピラーを寝かせたクーペライクなスタイリングや、ボディー同色のグリルなどがエクステリアデザインの特徴となる。パワーユニットは、「WR-V」と同じ1.5リッター直4の純ガソリンエンジンと、2モーター式システムの「e:HEV」と呼ばれるハイブリッドの2本立て。
2021年4月に発売された2代目「ヴェゼル」。リアピラーを寝かせたクーペライクなスタイリングや、ボディー同色のグリルなどがエクステリアデザインの特徴となる。パワーユニットは、「WR-V」と同じ1.5リッター直4の純ガソリンエンジンと、2モーター式システムの「e:HEV」と呼ばれるハイブリッドの2本立て。拡大
「WR-V」をベースとしたオフロード仕様のコンセプトモデル「WR-Vフィールドエクスプローラー コンセプト」。ホンダ純正アクセサリーによるエクステリアコーディネート「TOUGH STYLE(タフスタイル)」をベースに、SUVらしいタフさを演出したという。
「WR-V」をベースとしたオフロード仕様のコンセプトモデル「WR-Vフィールドエクスプローラー コンセプト」。ホンダ純正アクセサリーによるエクステリアコーディネート「TOUGH STYLE(タフスタイル)」をベースに、SUVらしいタフさを演出したという。拡大
櫻井 健一

櫻井 健一

webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。

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