日産リーフB7 G(FWD)
進化は期待以上 2026.02.11 試乗記 フルモデルチェンジで3代目となった日産の電気自動車(BEV)「リーフ」に公道で初試乗。大きく生まれ変わった内外装の仕上がりと、BEV専用プラットフォーム「CMF-EV」や一体型電動パワートレインの採用で刷新された走りを、BEVオーナーの目線を交えて報告する。大きく見えて実は短い
2026年の年明けあたりから、日産のショールームで見ることができるようになった3代目となる新型リーフ。この一台だけで見ると2代目よりも大きく感じられるのだが、実車を並べると、全長は新型のほうが短いことがわかる。カタログを調べると、新型の全長は120mm短い4360mmであり、クロスオーバー風のファストバックスタイルや大きなタイヤなどが、実際のボディーサイズとは裏腹に新型リーフの存在感を強めているのだろう。
リーフといえば2010年に初代が誕生し、それ以来日本のBEV市場を切り開いてきた立役者だ。2017年にフルモデルチェンジが実施されて2代目に進化した時点でも、日本のBEV市場はリーフが圧倒的なシェアを獲得していた。ところが、2019年にマイナーチェンジが実施されたあたりからBEVの選択肢が増え、ここ数年では日本車、輸入車を問わず、身近で魅力的なモデルが続々と登場したこともあって、リーフの影が薄れてきていたのは否定できない。
それだけに、新型リーフの登場を心待ちにしていた人は多いはずで、私自身もそのひとりだ。3代目リーフは、SUVスタイルのフラッグシップBEV「アリア」と、軽BEVの「サクラ」のあいだに位置する主力BEVというポジションこそ変わらないが、デザインもその中身も劇的に変化。フルモデルチェンジとはいえ、先代の面影がほぼないくらいに生まれ変わったことには驚くばかりだ。
新型は、アリアと同じBEV専用プラットフォーム「CMF-EV」を採用することで効率的なパッケージングを実現するとともに、新開発の電動パワートレインや余裕あるバッテリー、統合的なエネルギーマネジメントシステムなどにより、走行性能を大きく向上させたという。
そのラインナップは、78kWhバッテリーを搭載することで最大702kmの一充電走行距離を実現する「B7」と、55kWhバッテリーで同521kmとなる「B5」のふたつで、今回は最上位グレードの「B7 G」を走らせることができた。新型リーフが、日本のBEV市場でふたたびリーダーとしての存在感を取り戻すことができるのか? その仕上がりをさっそくチェックしていこう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
すっきりしたフロントマスク
兄貴分のアリアとの共通性が感じられる新型リーフのフロントマスク。先代のリーフでは充電口がノーズにあったのに対して、新型では普通充電用が運転席側、急速充電用が助手席側のいずれもフロントフェンダーに移されたことで、デザインがすっきりしたのと同時に、フロントオーバーハングが短くなった。モーター、インバーター、減速機を一体化した電動パワートレインはフロントに収まるが、BEVらしいプロポーションとなり、狭い場所での取り回しも向上している。
電動格納式のドアハンドルを引き、ドアを開けて運転席に収まると、圧迫感のないダッシュボードと横長のインストゥルメントパネルが目に入る。ドアやダッシュボードにはソフトなファブリック素材が用いられ、やさしい雰囲気に包まれるのも新型リーフの魅力である。運転席の正面に常識的なサイズのメーターが配置されるのも安心感がある。センターパネルにプッシュボタン式のシフトセレクターが配置されることで開放感がより高まるものの、シフト操作のたびに視線を落としたり、手を伸ばしたりしなければならないのは少し面倒だ。
走りだす前に後席をチェックすると、身長167cmの私の場合、頭上に約10cm、膝の前に約20cmのスペースが確保される。ただ、前席下に足の甲が当たって奥まで足が伸ばせず、膝が立つような格好となるため、やや窮屈なのが惜しいところだ。
荷室は、そのままの状態でも80cm強の奥行きが確保され、後席を倒せば170cm近くまで拡大が可能だ。後席を倒した状態ではフロア部分に段差ができるが、別売りのラゲッジボードを使うことで、不便さは解消できる。大型のテールゲートを備えるリーフでは荷物の出し入れも比較的ラク。セキュリティー対策にも役立つトノカバーは別売りで、個人的にはラゲッジボードとともに標準装着にしてほしいと思う。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
洗練のパワートレイン
リーフB7には、最高出力218PS、最大トルク355N・mのモーターがフロントに搭載され、前輪を駆動する。ちなみに、アリアとは異なり、4WDは用意されない。
Dレンジを選んでブレーキペダルから足を離すと、リーフはゆっくりと動き始める。そこから軽くアクセルペダルを踏めば、速すぎず、遅すぎずのちょうどいいペースで加速していくのは、BEVづくりの経験が長い日産ならではだ。走りだしたあとも、アクセルペダルの操作に対する加減速は実に自然でスムーズ。そのうえモーター音がほとんど耳に入ることがなく、タイヤが発するロードノイズもよく抑えられているから、キャビン内の静粛性は実に高い。
アクセルペダルを深く踏み込んでも、スポーツカーのような鋭い加速は感じられないが、高速道路でも素早くスピードに乗れるので、力不足という心配は無用だ。
アクセルペダルを緩めたときに利く回生ブレーキも、タイムラグが
感心したのが、「インテリジェントディスタンスコントロール」という機能。これをオンにすると、先行車に近づいたとき、車間距離に応じて自動的に回生ブレーキの強さを調節してくれる。他のBEVでもこうした機能を採用するものがあるが、先行車がいなくなると回生ブレーキを利かせず、惰力走行(クルージング)してしまい、たとえば赤信号で停止しようとしても自分が先頭だと減速せずに焦ることもある。その点、リーフのインテリジェントディスタンスコントロールは、先行車がない場合でもあらかじめ設定していた強さで回生ブレーキが利くため、慌てずに済むのだ。一方、先行車がいる場合は、前車が停止するとそれに合わせて自車も停止するのは便利なところだ。
今回の試乗中、撮影のために急速充電を試したが、バッテリー残量が80%近かったこともあり、受け入れ能力がどのくらいかは確認できなかった。日産によれば最大400Aの急速充電に対応しているとのことで、さらに、冷却は水冷、暖機にヒーターを使うことで最適な温度で急速充電が可能になるというから、年間を通じて安定した急速充電が期待できるのが見逃せない。ただし、バッテリーヒーターはメーカーオプションとなるため、急速充電の機会が多い人は、追加することをお忘れなく。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
日本向けにチューニングされた足まわり
新型リーフを試乗するうえで、最も関心があったのがその走り。2代目リーフではやや硬めの乗り心地が引っかかっていて、それがどう改善されるのかが気がかりだったのだ。
結論としては、期待以上の出来栄えだった。他のグレードが215/55R18サイズのタイヤを装着するのに対して、1インチアップの235/45R19を履くこのGグレードでも、乗り心地はおおむねマイルドで目地段差を越えたときのショックも巧みにいなしてくれる。それでいて、高速走行時の上下動はよく抑えられていて、直進安定性も申し分ない。これには、CMF-EVプラットフォームを採用するとともに、従来型ではトーションビーム式だったリアサスペンションが、この新型ではマルチリンク式に変更されたのが貢献しているのだろう。
残念ながらワインディングロードを走らせる機会はなかったものの、ステアリング操作に対するノーズの反応は素直で、サスペンションの動きもしなやか。日本仕様ではサスペンションをソフトに設定したというが、それでもコーナリング中の姿勢などは安定していて、実にバランスのいい仕上がりだった。
高速道路では、ハンズオフドライブが可能な「プロパイロット2.0」も試してみたが、システムによるステアリングの介入が気になることはなく、安心して運転を任せられる。
今回は約2時間の試乗だったが、新型リーフの進化とその完成度の高さを十分確認することができた。そして、そろそろBEVの買い換えを考えている私にとって、新型リーフは有力な次期マイカー候補になった。ちなみに今回は試乗できなかったが、B7よりもバッテリー容量は少ないものの、そのぶん価格が抑えられるB5のうち、装備が厳選される「X」グレードが狙い目かなあなどと、さっそく妄想を膨らませている私である。
(文=生方 聡/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
日産リーフB7 G
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4360×1810×1565mm
ホイールベース:2690mm
車重:1920kg
駆動方式:FWD
モーター:交流誘導電動機
最高出力:218PS(160kW)/4400-1万1700rpm
最大トルク:355N・m(36.2kgf・m)/0-4300rpm
タイヤ:(前)235/45R19 95V/(後)235/45R19 95V(ダンロップeスポーツマックス)
一充電走行距離:670km(WLTCモード)
交流電力量消費率:137Wh/km(WLTCモード)
価格:599万9400円/テスト車=696万5640円
オプション装備:ボディーカラー<プリズムホワイト/スーパーブラック 2トーン>(7万7000円)/100V AC電源<1500W、センターコンソールボックス1個、ラゲッジ1個>(6万6000円)/オーバーヘッドコンソール<サングラスホルダー付き>+ルーフレール+調光パノラミックガラスルーフ<遮熱機能付き>(22万5500円)/後席ヒーター付きシート+リアヒーターダクト+バッテリーヒーター(9万1300円)/ステアリングスイッチ<プロパイロット2.0>+アドバンスドアンビエントライティング<マルチカラー>+ダブルシャークフィンアンテナ+プロパイロット2.0+プロパイロット緊急停止支援システム<SOSコール機能付き>+ワイパーデアイサー+リアLEDフォグランプ<中央>(40万9200円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ1面+フロントドアガラス2面 はっ水処理>(1万3640円)/フロアカーペット(5万0600円)/フレキシブルラゲッジボード(3万3000円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1749km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
日産ムラーノ プラチナム(4WD/9AT)【試乗記】 2026.9.23 ドナルド・トランプ米大統領の圧力のおかげで(?)新しい「日産ムラーノ」の国内導入が決まった。日本を留守にしていた約11年の間にどう変わったのか、まさに「朋有り、遠方より来たる」の気分だ。本格導入よりもひと足早く北米仕様車の仕上がりを試した。
-
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【試乗記】 2026.9.22 フェラーリの最新ラグジュアリークーペ「アマルフィ」に試乗。2+2のシートレイアウトを持つ優雅な一台は、その姿にたがわぬ快適な乗り心地を備える一方で、スーパースポーツにも比肩する高いパフォーマンスも秘めたマシンとなっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220シューティングブレーク(FF/8AT)【試乗記】 2026.9.21 メルセデス・ベンツの「CLA」がフルモデルチェンジ。シャシーやパワーユニット、さらにインフォテインメントシステムなど、すべての要素を刷新したとされる、メルセデスの次世代を切り開くモデルだ。1.5リッターハイブリッドの「シューティングブレーク」を試す。
-
ホンダ・シビックe:HEV RS(FF)【試乗記】 2026.9.19 ホンダのCセグメントハッチバック「シビック」に、スポーティーな走りが身上の「e:HEV RS」が登場。ハイブリッドのパワートレインと専用チューニングのサスペンションが織りなす走りは、いつもの道でこそ輝くものに仕上げられていた。
-
BYDラッコ300プレミアム(FWD)【試乗記】 2026.9.16 中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。価格の安さや装備の充実度はすでに報じられているとおりだが、やはり自動車の仕上がりは実際に動かしてみなければ分からない。高速道路やワインディングロードでの印象をリポートする。
-
NEW
あのクルマはなぜ売れている? 自販連のデータから“日本車の今”を読む
2026.9.25デイリーコラムここ数年の自販連のデータからは、国内市場におけるトヨタのゆるぎない強さが見てとれる。ではその実績から、人々にどんなクルマが求められているといえるのか? 統計や数字の裏にある消費者マインドを探ってみよう。 -
第293回: スイフトが主役の映画? いや、監督がスイフトなんです! 『藁にもすがる獣たち』
2026.9.24読んでますカー、観てますカー曽根圭介の小説を原作にした2度目の映画化。韓国版では「ヒョンデ・ソナタ」が殺人カーだったが、今回は「トヨタ86」に。もっと活躍するのはチャンピオンイエローがまぶしい“スイスポ”。スズキファン必見のアクションエンターテインメント! -
マツダCX-5 L(前編)
2026.9.24あの多田哲哉の自動車放談マツダの基幹モデル「CX-5」がフルモデルチェンジ。世の注目を集める新型は、期待に応えられる出来なのか? 元トヨタの車両開発者である多田哲哉さんが、ワインディングロードで試乗して確かめた。 -
トヨタもスバルもマツダも いまなぜ2.5リッターエンジンなのか?
2026.9.24デイリーコラムトヨタもスバル、マツダも最新のパワートレインに2.5リッター直4エンジンを採用している。ユーザー感覚では「2リッターを超えると自動車税が高くなるのに」と、疑問に思えるが、そこにはメーカーもユーザーも納得の理由がある? -
新型「パジェロ」はこれから生産するのに!? 国産自動車メーカーのタイ離れが進んでいる深刻な理由
2026.9.23デイリーコラム国内にも多くのモデルが導入されている国内ブランドのタイ生産車だが、近い将来は事情が大きく変わっている可能性がある。というのも、各社がタイに注力していたのは少し前の話で、実はその生産規模は少しずつ縮小傾向にあるのだ。その背景を解説する。 -
第129回:日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの(後編) ―プロポーションの進化と「駄作」の消失に見る、日本車の現在地―
2026.9.23カーデザイン曼荼羅今や欧州と立場が逆転? 世界的に見ても高い水準にあるという日本のカーデザインだが、そこには本当に足りないものはないのか? 今後、さらなる発展を望むうえで必要なものとはなにか? カーデザインの識者と、日本の自動車デザインの“今”を考えた。
























































