メルセデス・ベンツE200アバンギャルド(FR/9AT)
“素”のよさが味わえる 2024.05.15 試乗記 内燃機関の搭載を前提に開発された6代目「メルセデス・ベンツEクラス」。そのエントリーモデルに位置づけられる48Vマイルドハイブリッド車「E200」の走りを確認しながら、ひと足先にフルモデルチェンジしたライバル「BMW 5シリーズ」とのちがいを探った。Eクラスと5シリーズを比べてみると
Eクラスといえば、それこそ1980年代の「ミディアムクラス」といわれていた時代から、アッパーミドルサルーン(通称Eセグメント)の中心的存在であり続けてきた。と同時に、BMWの5シリーズというガチンコのライバルと、常にほぼ同時期(1年差以内)に世代交代してきた。今回の新型Eクラスが本国デビューした2023年には、5シリーズもきっちり(?)フルモデルチェンジしている。ただ、日本法人の戦略から、国内発売は5シリーズのほうが少しだけ早かった。
というわけで、新しいEクラスを、永遠のライバルである5シリーズの最新モデルと比較すると、両車の“今の”立ち位置が、良くも悪くも見えてくる。
象徴的なのが車体サイズだ。先代でもEより5のほうが大きくはあったが、両車におけるスリーサイズ(全長×全幅×全高)やホイールベースの差は、すべて20~35mmの範囲内におさまっていた。新型Eクラスもサイズは拡大しており、全長で20mm、全幅で30mm、全高で25mm、そしてホイールベースで20mm、それぞれサイズアップしている。全長はいよいよ5mの大台が間近だ。
しかし、新型5シリーズの拡大はその比ではない。とくに目立つのは全長と全高で、先代よりそれぞれ85mm、40mmも大きくなった。もっともベーシックな「523i」でもスリーサイズは5060×1900×1515mmで、全長はボーダーラインでもある5mを軽く超越して、全高も1.5m台にのった。さらに、先代比30mm増の全幅もついに1.9mである。
そんな新型523iは、新型E200よりじつに100mmも長く、45mm背が高い。たとえ具体的なサイズは分からずとも、実車を一見しただけで、新型5シリーズのほうがあからさまに大きい。それくらいの差がある。
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パッケージレイアウトは古典的
新型Eクラスのサイジングがギリギリの節度を保つ理由は、メルセデスの商品戦略にある。新型5シリーズが、エンジン搭載車から100%電気自動車(BEV)までを共通車体でラインナップするのに対して、BMWより踏み込んだBEV戦略をとる(とっていた……というべきか)メルセデスは、このクラスにBEV専用設計の「EQE」をいち早く投入。それを受けて、Eクラスは逆に、エンジン専用=マイルドハイブリッド車(MHEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)のみとなった。
新型Eクラスの運転席におさまると、奥行きの浅いダッシュボードや、適度に立ったAピラーなど、メルセデス伝統の車両感覚が今も残ることにホッとする。BEVを別モデルにスピンアウトさせたEクラスは、各部が少しずつサイズアップしたとはいえ、基本パッケージレイアウトは従来型を踏襲するからだ。
BEVのために各サイズにマージンをもたせた新型5シリーズが、エンジン車ではどことなくサイズちがいの“ぶかぶか感”を抱かせることもあって、このEクラス伝統のフィット感はさらに際立つ。もっとも、そのぶん、PHEV(E350e)の荷室が明らかにせまいなど、純エンジン車時代をひきずるパッケージの弱点もなくはないが……。
パッケージレイアウトは古典的な新型Eクラスだが、内装調度は最新鋭だ。オプションの「デジタルインテリアパッケージ」を装着した試乗車では、助手席前にも液晶ディスプレイを追加。インパネが全面ガラス張りになるうえに、計3枚のカラー液晶ディスプレイがほぼ敷き詰められて、画面でない部分を探すのが困難なくらいだ。
空調の吹き出し口は、そのガラス周辺に目立たないように配される。そういえばBMWの最新インテリアでもそうだが、最近はあからさまな機能部分は目立たせないのがトレンドのようだ。かつてはインパネの一等地に堂々と鎮座していた空調吹き出し口も、最近はこうして隠しデザインにされがちである。
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伝統的なパワーフィール
今回試乗したE200は2リッター直4ターボを積むMHEVで、新型Eクラスのエントリーモデルとなる。BMWでいうと、前出の523iと同等のモデルといっていい。523iも本国での車名は「520i」である。523iの798万~864万円という本体価格と比較すると、E200のそれのほうが少し高めだ。
新型Eクラスの運転席に座ってその車両感覚にホッとしたのは前記のとおりだが、走りだしても、そこはかとないベーシックメルセデス味にまたホッコリ気分になった。本体価格でほぼ900万円、オプションをテンコ盛りした試乗車で1200万円近いクルマに“ベーシック”という形容詞をつけるのに抵抗がなくはないが、その乗り味にはいい意味で、素のメルセデスの魅力がわずかに残っている。
というのも、今回の試乗車にトッピングされた300万円近いオプションの大半は、前記のデジタル装備や多機能ナッパレザーシート、リラックス系の快適装備だからだ。逆に、走りにまつわる部分は、19インチのタイヤ/ホイール以外、ほぼツルシのまま。試乗車には上級グレードに装備されるエアサスや電子制御ダンパー、後輪操舵なども装備されていなかった……というか、E200にはこうした装備はオプションにも用意はない。
いかに最新の直噴ターボでも、この車格のクルマに2リッターでは余裕しゃくしゃくとはいわない。ただ、48Vマイルドハイブリッド効果もあるのか、全域で柔軟、かつ加速レスポンスも十二分。過給ラグも皆無ではないが軽微。良くも悪くも事務的なパワーフィールだが、9段ATとのマッチングもよく、スムーズだ。唯一感じさせる色気は、オプション装着されていた「AMGパッケージ」に含まれるエンジンサウンドシステムくらい。ドライブモードによって加音するもので、耳に届くエンジン音はたしかに少し派手になるが、音質的にとくに感動があるわけではない。
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完全なシャシーファスターカー
19インチのオプションタイヤでも、乗り心地はすこぶる快適だ。低~中速域では路面の凹凸をふわりとしなやかに吸収してくれる。上下動も皆無ではないが多くはない。E200に備わる「AGILITY CONTROLサスペンション」はピストンスピードによって油圧経路を機械的に2段階で切り替えて、低速では柔らかめ、高速では固めの減衰となる。電子制御連続可変ダンパーと比較すると簡素だが、市街地や高速を上品に走るぶんには、潤いある有機的なストローク感が心地よい。電子制御ダンパーやエアサスを恋しくもならない。
ステアリングの反応も正確だがマイルド。スーッと滑らかで丸いコーナリングラインを自然に描きやすいタイプだ。E200は完全なシャシーファスターカーである。しかし、横滑り防止装置をスポーツモードに設定して、コーナー出口でアクセルを踏んでいくと、スーッとニュートラル的にバランスする(典型的FR車らしい)所作はたまらない。
表面的な刺激はないがあつかいやすく、基本的に重厚でマイルド。けれども、どことなく軽快さを感じさせる乗り味とドンピシャの車両感覚に、中高年男性の筆者はうれしくなった。高速域でのシャシーの余裕は、以前webCGで試乗させていただいた523iに軍配が上がる。おそらく重いBEVを想定した設計が奏功しているのだろう。しかし、個人的には、このE200の潤いある乗り心地や、自然な接地感と正確性にシンパシーを感じざるをえない。
……といったこと思いつつ、ひとしきり試乗した帰途、前日の疲れもあり、無意識に「眠てえなあ」とひとりごちた。すると、オプションの「エナジャイジングパッケージプラス」が音声認識で起動してしまったのか、いきなりインパネ照明が刺激的な色彩に変わり、車内にアロマがただよい出し、シートマッサージのモミ玉が強めにうごめいて、筆者の眠気を吹き飛ばさんと襲いかかってきた(笑)。さすがは世界最新の上級サルーン、走りは古典的でも、室内機能はすごいことになっている。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツE200アバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4960×1880×1470mm
ホイールベース:2960mm
車重:1840kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/5800rpm
エンジン最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1600-4000rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)
タイヤ:(前)245/45R19 102Y XL/(後)275/40R19 105Y XL(ミシュランeプライマシー)
燃費:14.3km/リッター(WLTCモード)
価格:894万円/テスト車=1158万3000円
オプション装備: AMGラインパッケージ(50万4000円)/アドバンスドパッケージ(59万円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(85万7000円)/デジタルインテリアパッケージ(40万4000円)/パノラミックスライディングルーフ(28万8000円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1562km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:414.4km
使用燃料:34.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.1km/リッター(満タン法)/12.3km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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