「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のスポーツモデルが大集合! 初代「GTI」の偉大さをあらためて知る
2024.07.09 デイリーコラム再び聖地オスナブリュックへ
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」が誕生したのは1974年のこと。そのデビュー50周年を祝い、2024年のフォルクスワーゲンはイベントがめじろ押しだ。そのひとつである「50 Years of Sporty Golf」を取材するため、6月中旬、ドイツのフォルクスワーゲン・オスナブリュックを訪ねた。
ほとんどの読者にとって、オスナブリュックは初めて聞く地名だと思うが、フォルクスワーゲンファンにとっては聖地のひとつ。ここは昔、名門コーチビルダーとして知られるカルマンがあった場所で、「ゴルフカブリオレ」や「シロッコ」、さらに「コラード」といった魅力的なモデルが生産され、世界中に届けられてきた。その後、カルマンはフォルクスワーゲンに買収されたが、引き続き少量生産車の組み立てを担う拠点として重要な役割を果たしている。
ここにはカルマンの時代からコレクションを展示する小さなホールがあり、私は1999年に取材で足を運んだ経験がある。今回はこのホールに、フォルクスワーゲンのクラシック部門が所蔵する歴史的なゴルフのうち、「GTI」や「R」といった市販のスポーツモデルをはじめ、モータースポーツで活躍したモデルやコンセプトカーなど、合わせて34台を一堂に集めて、メディアに公開した。
フォルクスワーゲンは2024年の7月26日から28日までの3日間にわたって、本社のあるウォルフスブルクで「GTIファンフェスト2024」を開催する。もともとオーストリアのヴェルターゼー(ヴェルター湖)湖畔で行われていた「GTIミーティング」が2023年に終わりを迎え、それに変わるイベントとして、フォルクスワーゲンがGTIファンフェストを初開催。それを盛り上げる意味もあって、今回の50 Years of……を開催することになったのだ。
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お宝ゴルフがざっくざく
25年ぶりに訪れたオスナブリュックのコレクションホール。今回の展示のために展示車両がすっかり入れ替えられ、入り口の横で出迎えてくれたのはガンメタリックの「ゴルフ2」だ。そのグリルにはブルーのラインと「フォルクスワーゲン・モータースポーツ」のバッジ……こっ、これは伝説の「ゴルフG60リミテッド」ではないか!
ちなみにこのクルマは、「Gラーダ」と呼ばれるスーパーチャージャー付きの1.8リッターエンジンを搭載していて、本来、最高出力は160PSのところを、8バルブから16バルブに変更することで210PSにまでパワーアップ。しかも、FWDを4WDの「シンクロ」に代えることで、0-100km/h加速は7.4秒、最高速は230km/hをマーク。生産台数はわずか71台で、2022年に同じモデルがイギリスのオークションで落札されたときの価格が約8万ポンド(当時の為替レートが165円だったので、1320万円!)という超お宝なゴルフである。
しかし、上には上がいるもので、その先の右側にはゴルフ2にもかかわらず、角目ライトの“ジェッタ顔”がにらみを利かせている。これぞ憧れの「ラリーゴルフ」だ! 1989年に登場したこのクルマは、フォルクスワーゲンがWRC(世界ラリー選手権)のグループAカテゴリーに参戦するために5000台を生産したホモロゲーションモデルで、前述のGラーダ付き1.8リッターエンジン(160PS)と4WDを採用。そのうちの12台には、ゴルフG60リミテッドと同じ16バルブで210PS仕様のエンジンが搭載されており、まさにこの展示車がその一台だった。希少性でいえばこの「ラリーゴルフG60 16V」はゴルフG60リミテッドの比ではないという話で、この2台を間近で見られただけでも、日本からわざわざオスナブリュックに来たかいがあったというものだ。
歴代GTIとRも勢ぞろい
2台のゴルフ2に完全に舞い上がってしまった私だが、イベントの主役がホットハッチの代名詞であるゴルフGTIと、2002年に登場してからゴルフの最上級グレードとして君臨するゴルフRであることを、忘れたわけではない。
展示ホールを奥まで進むと、白のボディーカラーにラジエーターグリルの赤いラインが映える初代ゴルフGTIがたたずんでいる。初代ゴルフ登場から2年後の1976年、110PSの1.6リッターエンジンを搭載したこのスポーツモデルは、当時、ドイツのアウトバーンの追い越し車線を堂々と駆け抜け、“アウトバーンの民主化”を成し遂げ、絶大な人気を集めることになった。それは、当初の生産予定台数が5000台だったのに対して、実際には46万台以上が生産されたことからも明らかである。
その後、ゴルフのモデルチェンジとともにGTIも生まれ変わり、この展示ホールにはその各世代のゴルフGTIが並べられている。2024年5月に発表されたばかりの「ゴルフGTIクラブスポーツ」とは今回が初対面である。
一方、いまやゴルフGTI以上に人気を集めているゴルフRは、3.2リッターV6エンジンを積むことから「ゴルフR32」と呼ばれる初代と2代目、2リッターエンジンを採用する4代目と5代目、そして、取材の時点では公表前の最新版を展示。お気づきのとおり3代目が抜けているが、その代わりに、エンジンのターボ化を検討するために製作された「ゴルフV6ターボ」にお目にかかれるとは夢にも思わなかった。
乗って楽しい初代GTI
これら歴代のゴルフGTIやゴルフRにはナンバーが付いていて、いつでも公道を走れるよう整備されているという。展示ホールの外にもゴルフGTIが並んでいて、「試乗できますよ!」というので、懐かしい初代と2代目を工場の外に連れ出してみた。
まずは初代ゴルフGTI。このクルマは「ゴルフ1 GTI」としては最終モデルの1983年製で、エンジンは排気量が1.6リッターから1.8リッターに拡大し、それに合わせて最高出力が112PSにアップしている。早速走りだすと、威勢のいいサウンドを立てるエンジンは、数字から想像する以上に活発で、面白いように加速する。アクセルペダルに対する反応も鋭く、街なかを数百m走らせただけでも、楽しい気持ちになる。800kgほどという軽さと、高いボディー剛性が、爽快な走りに寄与しているのは容易に想像できる。
一方、「ゴルフ2 GTI」に乗り換えると、ゴルフ1に比べて格段に安定した乗り心地やエンジンの静粛性などに感心するし、エンジンの性能自体もこのクルマを機敏に走らせるには十分といえるのだが、スポーティーというにはいまひとつ何かが足りない。それもそのはずで、この試乗車は1989年製。エンジンは直前に乗ったゴルフ1 GTIと基本的に同じ1.8リッターの8バルブ仕様だが、触媒コンバーターが追加されたおかげでパワーが112PSから107PSに低下し、ゴルフ2 GTIとしては最も元気のない仕様だった。
当時、ゴルフ1 GTIからゴルフ2 GTIに乗り換えた人が性能不足を訴えたという話を耳にしたことがあるが、その理由を感じ取れたのは貴重な体験。その後、フォルクスワーゲンが新しい16バルブエンジンを開発し、パワーを129PSまで向上させたのにも納得がいく。
私自身、「ゴルフ3 GTI」と「ゴルフ7 GTIクラブスポーツ」を所有したことがあるが、ゴルフ1 GTIのスポーティーさはいまでも新鮮で、歴代GTIから一台を選ぶとしたら、迷わず初代を指名するだろう。いまそれを手に入れるのは至難の業だが、代わりにもう少し手が届きやすいGTIと暮らせたらいいなぁと、妄想する日々を送っている。
(文=生方 聡/写真=フォルクスワーゲン/編集=藤沢 勝)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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