フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)
靴のサイズにご用心 2025.04.30 試乗記 フォルクスワーゲンが擁する伝統のホットハッチ「ゴルフGTI」。高い機能性と刺激的な走りを併せ持つスポーツコンパクトは、このたびの大幅改良でいかな進化を遂げたのか? その走りを、オプションの19インチホイール&可変ダンパー装着車で確かめた。大人のGTIが帰ってきた
第8世代のゴルフGTIを初めて走らせたとき、そのハードな乗り味にはかなり驚いた。第7世代のゴルフGTIはハンドリングこそ徹頭徹尾安定志向のカタブツだったけれど、ゴルフ一族のなかでも一番といっていいぐらい完成された、上質な乗り味を備えていたからだ。
その理由がなんなのかは、はっきりとはわからない。考え得る要因はふたつあって、ひとつは試乗車が19インチのオプションタイヤを履いていたこと。ゴルフは“8型”(第8世代)からそのモジュラープラットフォームを「MQB evo」へと進化させ、ねじり剛性も35%ほど向上させたというが、個人的にはこの骨格に対して、19インチのスポーツタイヤはオーバースペックだと感じた。かといって18インチ仕様を試すことはかなわなかったのだけれど。
もうひとつは、ゴルフが8型となって、大幅なコストダウンを強いられたのではないか? ということだ。GTIに限らず、通常のモデルに乗っても8型のゴルフはNVH(ノイズ・ハーシュネス・バイブレーション)性能が思った以上に低かった。ユーザーインターフェイスのデジタル化やエンジンのマイルドハイブリッド化にコストが割かれた結果、静粛性や振動減衰まで手が回らなかったのではないかと思う。折しも環境性能を向上させるべく、その足元には転がり抵抗が少ない硬めのタイヤを履きだした。それによる路面からの入力や振動を、ハイテンションスチールを多用するボディーがダイレクトに乗員に伝えてしまったのかもしれない。
そしてこのたび8.5型となった(参照)ゴルフGTIを試したわけだが、街なかでひと転がししたその乗り味は、以前とはまったく変わっていた。まるでチューニングカーのようだった厳しい突き上げと雑な振動がなくなり、大人っぽいゴルフGTIが帰ってきた。
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よくできたエンジンと快適な乗り心地
2リッターの排気量を持つ直列4気筒ガソリンターボエンジンは、その最高出力が8型比で20PSアップの265PS/5250-6500rpmへと向上した。対して最大トルク値は370N・mで変わりないが、そのトルクバンドは1600-4300rpmから1600-4500rpmへ、若干高回転域まで引き上げられた。
とはいえ「ゴルフR」の333PS、420N・mというアウトプットからもわかるとおり、この「EA888」ユニットの許容能力はかなり大きい。先代の「GTIパフォーマンス」で260PS、限定車の「TCR」が290PSを発生していたことからも、8.5型のゴルフGTIが265PSに出力をとどめたことは、数が見込める量産モデルとして、環境性能とのバランスを考慮したからだろう。現行ゴルフGTIの燃費は、カタログ値はまだ発表されていないが、今回の試乗における実燃費は、車載計読みで11.8km/リッターと、街なか~高速道路~ワインディングを満遍なく走った数値としてはまずまずだった。シーンによっては13km/リッター台をマークしたこともあった。
正直、20PSアップの効果は実感できないが、このエンジンは相変わらずの扱いやすさだ。街なかではアクセルの踏み始めから高いトルクでゆとりのスタートを決め、走りだせば7段DSGが素早くギアを高めて積極的に燃費走行状態に持ち込んでいく。「1.5 eTSI」のような気筒休止機構は持たないが、純粋によくできたユニットだと思う。
唯一気になったのは、そのサウンドが若干ゴロゴロと感じられたこと。ちなみに、今回から車内と車外で聞こえるエンジンサウンドを調整できるようになったが、車内のサウンドを「エコ」「コンフォート」「スポーツ」と切り替えても、普通に走っている限りはその音量が少し変わったか? という程度。当然ながら質感も変化することはなかった。
街なかでの快適な印象は、高速道路でも同じく保たれた。スポーティーモデルながら低負荷時には惰性走行をするのだが、足腰がしっかりしているから、この状態でも直進を保ちやすい。そしてなにより、振動が少なく静かで乗り心地がいい。どうして乗り味が快適になったのかは、これまたわからない。8.5型はGTIに限らずこの傾向にあるから、フォルクスワーゲン自身もゴルフのコンフォート性能を上げる必要性を感じていたのだろう。ブッシュやアッパーマウント、もっといえばGTIの場合はDCCの減衰力設定を、ソフト方向に振り直したのかもしれない。
ただ、路面の継ぎ目やうねりの激しい箇所を越えると、ドライブモードが「コンフォート」では若干バネ下の抑えが利かなくなる傾向もあった。ここで「スポーツ」を選んでその動きを抑えるのも手だが、面白いのは「カスタム」モードだ。個人的には「DCC(アダプティブ・シャシー・コントロール)」の減衰値を2段階ほどスポーツより緩めに設定すると、硬すぎず抑えが利いて、最も快適だった。
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峠道で感じた19インチホイールの弊害
期待を持って臨んだワインディングロードは、ちょっと判断が難しいというのが偽らざる感想だ。ダンピング剛性は高速巡航と同じで、コンフォートモードではバネ下で大径タイヤ&ホイールがややあおられ、「スポーツ」モードだと安定はするけれど、動きが規制されすぎて運転が楽しくない。結局のところ、カスタムモードで設定した「スポーツより少し緩め」が一番自然だったのだが、それにしても、入力が高まるほどに4輪がバラバラに動いている感じがにじみ出てくる。
このスイートスポットが狭い理由も、やっぱりタイヤが原因だと思う。どうしても19インチで見栄えをよくしたいのなら、もう少しボディーかスプリングの剛性を高める必要があるはずだ。思い返せば、8型GTIのアシまわりの硬さは、こうした動きへのフォルクスワーゲンらしい真正直な対策だったのかもしれない。もしくは「ティグアン」や「パサート」に使われる2WAY式の可変ダンパー「DCC Pro」を投入して、Gや入力に対してさらに細かく減衰力を自動調整するのもいいかもしれない。とはいえコストがかかるから、どちらもフォルクスワーゲンとしては非現実的な提案だろう。
いずれにせよ、筆者は8.5型ゴルフGTIで、19インチホイールはお薦めしない。18インチ仕様を運転したことはないのだけれど、ひとまずはそう思う。せっかくゴルフGTIが上質さを取り戻したのだから、速さや格好はゴルフRに任せてしまえばいい。
(文=山田弘樹/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資/車両協力=フォルクスワーゲン ジャパン)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1790×1465mm
ホイールベース:2620mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:265PS(195kW)/5250-6500rpm
最大トルク:370N・m(37.7kgf・m)/1600-4300rpm
タイヤ:(前)235/35R19 91Y XL/(後)235/35R19 91Y XL(ブリヂストン・ポテンザS005)
燃費:--km/リッター
価格:549万8000円/テスト車=615万8000円
オプション装備:ボディーカラー<オリックスホワイト マザーオブパールエフェクト/ブラックルーフ>(4万4000円)/Discoverパッケージ(17万6000円)/テクノロジーパッケージ(20万9000円)/DCCパッケージ(23万1000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:3179km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:274.0km
使用燃料:23.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.6km/リッター(満タン法)/11.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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