ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京の新プログラム「G-FORCE」を試す!
2024.07.24 デイリーコラム車両の不安定な挙動を学べる
コロナ禍の最中、2021年10月に千葉県木更津市にオープンしたポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京)。欧州に5カ所、北米に2カ所(間もなくトロントに開設予定)、アジアでは上海とこちらの2カ所という貴重な施設は、最新のモデルを用いたドライビング体験やインストラクターのドライブによる同乗走行、本格的なシミュレーターによるトレーニング、毎月1回日曜朝に行われるオーナーズミーティングなど、多様なコンテンツでポルシェを駆る喜びをリアルに感じられるスポットとなっています。
とはいえ、基本的にはポルシェオーナー以外でも施設利用やプログラム体験はOK。内部にはカジュアルなカフェや地産地消にも配慮した相当本格的なレストランも用意されていますから、ドライブデートの一服タイムという名目で茶でもしばきつつ施設の下見に足を延ばしてみるのもいいかもしれません。
と、そのPEC東京での体験プログラムにこの6月から新たに加わったのが「G-FORCE」です。これは地形を生かした大きなアップダウンをはじめ、カルーセルやコークスクリューなど世界のサーキットの難所を織り込んだ2.1kmの周回路走行、それに低ミュー環境や散水設備、路面がスライドしてスピンを誘発するキックプレートなど独自の設備を備えた施設の特徴を生かして、車両のさまざまな不安定挙動の制御を学ぶというもの。PEC東京のプログラムの難易度的には専用データロガーアプリを用いてのドライビング分析など、頂点の「Accelerated」の次に位置づけられています。が、受講資格にPEC東京のプログラム体験歴は問われず、なんなら一見さんでも免許や年齢的な条件を満たしていれば申し込みは可能です。
360度ターンで不安定な状況を脱出
用いられる車両は「911」の「カレラ」「カレラS」「カレラGTS」と、リアエンジン・リアドライブ(RR)の3モデル。90分のプログラムで価格は8万円からとなります。もう少し安くなりそうな「718ボクスター/ケイマン」が選べないのはなんでですか? とインストラクターに尋ねたところ、このプログラムでは挙動があまりに唐突に現れて御すのが難しすぎるという結論になったといいます。
いやいやそれでいえば911も相当なもんでは……と思いつつ、まず体験させてもらったのがウエットのドリフトサークルでラインを変えながらの円旋回を練習するコンテンツ。言ってみれば雪道での複合コーナーでラインを修正しながらドリフト状態をつなげていくようなレッスンを911で行うわけです。
次いで行うのが同じく雪道並みのミューとなるコースに仕込まれたキックプレートを使っての360度ターン。キックプレートは車体後輪側の通過時に路面をスライドさせることで強制的にスピン状態を生み出すもので、日本でもごく限られた場所にしかない設備です。ここでは通常、スピンモードからいかに素早く修正舵をあてて姿勢をリカバーするかを体験しますが、G-FORCEではむしろ車体をくるりと360度回転させることで不安定な状況からの脱出を図る術を学びます。
さながら『あぶない刑事』
そして3つ目が、標準的ミューの舗装路で行う180度ターン。これをリバースから行うのがミソといえるでしょう。説明を聞いたときは『あぶない刑事』のF31型「レパード」しか思い浮かびませんでしたが、インストラクターさんの想定では、先だって報道で話題になったひぐまの軽トラアタックを回避する術として学んでいただければということでした。なかなか面白いことを言われるうえに運転技術も超絶なのでちょっとジェラシーを抱きましたが、G-FORCEの担当ができるインストラクターはPEC東京でも10人しかいないとのことですから、意外とマジなのかもしれません。最近は東京でもクマの目撃情報が頻発してますし。
それはさておき、この3つに加えて周回路走行も含めた90分を体験しての感想は、その中身が子供だましのにぎやかしみたいなものとは全然違う難易度だということ。そしてこれほどの体験ができる場所は探しても他に見当たらないんじゃないかということでした。特に360度ターンや180度リバースターンはそれこそ刑事かよって話ですが、不意の挙動に対して持ち得なかった引き出しが追加された、そんなおみやげ感は体験すれば十分に感じられるはずです。
そして円旋回も含めた一連のプログラムで得られるのが、クセ強なところも引っくるめた911というプロダクトの偉大さでしょう。4つのコンテンツは参加者の希望に応じて振り分けの時間を相談できるということですから、コースの混み具合によっては周回路重視で911の基本的なパフォーマンスをしっかり体感することも、円旋回でRRの挙動コントロールをきっちり染み込ませることも可能だと思います。手だれのインストラクターにアドバイスをいただきつつマンツーマンでそれを体感できるのだから、この体験価値はプライスレスといえるのではないでしょうか。
(文=渡辺敏史/写真=ポルシェジャパン/編集=藤沢 勝)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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