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一向になくならない高速道路の逆走事故 どうしたら防げる?

2024.09.05 デイリーコラム 清水 草一
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2023年の逆走事案発生件数は224件

高速道路での逆走が、連日のように報道されている。その多くは高齢ドライバーによるもので、報道を見る限り「高齢者だけが起こしてしまう事件」のように感じられるが、実態はどうなのか。

NEXCOの統計によると、昨年(2023年)の逆走発生件数は224件で、うち約7割が65歳以上の高齢者。75歳以上が46%となっている。高齢者が中心であることは確かだが、決して全員ではない。認知症の割合も全体の1割以下で、思ったほど多くはない。逆に20代以下も約1割を占めている。

「認知症でもなく、しかも20代のドライバーがなぜ逆走を!?」と疑問に思うところだが、多くの場合、目的の出口を通り過ぎたり、料金所先の分岐で目的地とは逆方向に進んでしまったりしたことでパニック状態になり、頭が真っ白になって逆走するようだ。

2023年の発生件数224件という数字は、2015年の257件と比べると減っている。高齢者は年々増えているのに、逆走件数が減っているのは、国交省やNEXCO各社が逆走防止対策を強化してきた効果もありそうだ。

具体的には、

  • 路面等に矢印を描く。
  • 本線合流部分からの右折逆走対策として、合流部手前側にラバーポールを設置する。
  • 反対方向に進もうとしているドライバーに「こちらへは進めません」と知らせる標識等を設置する。

そのほか、逆走で乗り越えるとドンとショックがくる「ウェッジハンプ」という防止装置も設置されているが、全国で9カ所にとどまっている。ショックがくるくらいでは、頭が真っ白になったドライバーを止めることは難しそうだ。

アメリカには、道路を横断するかたちで埋め込んだ金属部分から斜めに針が突き出ていて、逆走するとそれがタイヤに刺さるという装置があるが、主に防犯対策。そんな物騒なものを、日本の高速道路に設置することは考えられない。

NEXCOの統計によると、2023年の逆走発生件数は224件、2022年は204件、2021年は188件であった。毎年その約2割が事故に発展しているという。独ボッシュは、高速道路などでの逆走をドライバーや他の交通利用者に警告するクラウドベースの逆走警告システムを欧州で導入している。逆走が問題になっているのは日本だけではない。(写真:ボッシュ)
NEXCOの統計によると、2023年の逆走発生件数は224件、2022年は204件、2021年は188件であった。毎年その約2割が事故に発展しているという。独ボッシュは、高速道路などでの逆走をドライバーや他の交通利用者に警告するクラウドベースの逆走警告システムを欧州で導入している。逆走が問題になっているのは日本だけではない。(写真:ボッシュ)拡大
2024年8月16日15時ごろ、札樽自動車道(上り線:小樽方面)を、軽自動車が札幌方面へ逆走するという事案が発生。当該逆走車両は銭函インターチェンジに入った後に、本線上で反転した。(写真:NEXCO東日本)
2024年8月16日15時ごろ、札樽自動車道(上り線:小樽方面)を、軽自動車が札幌方面へ逆走するという事案が発生。当該逆走車両は銭函インターチェンジに入った後に、本線上で反転した。(写真:NEXCO東日本)拡大
札樽自動車道の上り線を逆走した軽自動車は、約15km逆走したところで北海道警察の高速道路交通警察隊に確保された。逆走した車両の運転手は80代の男性とのこと。(写真:NEXCO東日本)
札樽自動車道の上り線を逆走した軽自動車は、約15km逆走したところで北海道警察の高速道路交通警察隊に確保された。逆走した車両の運転手は80代の男性とのこと。(写真:NEXCO東日本)拡大
大成建設グループの大成ロテックが、東日本高速道路の東北支社と共同開発した「ウェッジバンプ」。インターチェンジランプなどから逆走した車両のドライバーに振動と振動音で誤進入を知らせる。(写真:大成ロテック)
大成建設グループの大成ロテックが、東日本高速道路の東北支社と共同開発した「ウェッジバンプ」。インターチェンジランプなどから逆走した車両のドライバーに振動と振動音で誤進入を知らせる。(写真:大成ロテック)拡大

逆走事案の約2割が事故につながっている

高速道路の逆走は、インター等でUターンしたうえで本線を逆走するケースが全体の約半分で一番多い。これらは標識などの設置である程度対策が可能だが、約4分の1は本線上でUターンしてしまっており、これに関しては対策が困難だ。

故意の逆走も224件中53件となっている。わかっていて逆走するドライバーも結構いるのだから、逆走防止対策には限界がある。

ただ、年間約200件という発生件数は、全体の通行台数から見ると超レアケース。逆走事案の約2割が事故につながっているので、怖いといえば怖いが、逆走車に出会う確率は宝くじの1等賞レベルに低い。最近はドラレコの設置が一般的になったため、ニュースとして取り上げやすく、逆走が頻繁に起きているように感じる部分もあるだろう。

日本自動車連盟(JAF)は、高速道路の本線走行時に逆走車と遭遇したケースを再現した動画を公開している。本線走行時に逆走車と遭遇した場合の見え方や、対処法の一例も紹介される。(写真:JAF)
日本自動車連盟(JAF)は、高速道路の本線走行時に逆走車と遭遇したケースを再現した動画を公開している。本線走行時に逆走車と遭遇した場合の見え方や、対処法の一例も紹介される。(写真:JAF)拡大
IHIは名古屋高速道路と共同で、三次元レーザーレーダーを用いた逆走・誤進入検知警告システムの実証実験を名古屋高速道路の高針出入口で行っている。高速道路出口を逆走する車両や、歩行者・自転車・125cc以下の自動二輪車などが通行を認められていない高速道路に誤って進入してしまうケースに対して検知・警告する。(写真:IHI)
IHIは名古屋高速道路と共同で、三次元レーザーレーダーを用いた逆走・誤進入検知警告システムの実証実験を名古屋高速道路の高針出入口で行っている。高速道路出口を逆走する車両や、歩行者・自転車・125cc以下の自動二輪車などが通行を認められていない高速道路に誤って進入してしまうケースに対して検知・警告する。(写真:IHI)拡大

最善の自衛策は?

逆走の2割しか事故になっていないのは、多くの逆走が交通量の少ない場合に起きているからだと推測される。これに関するデータはないが、交通量の多い路線では、どこかでUターンするのも物理的に困難。全車線をクルマがビュンビュン走っていたら、逆走をスタートさせること自体が難しい。

つまり逆走車は、交通量の少ない高速道路で、追い越し車線(逆走車にとっての左車線)をこっちに向かって走ってくると考えていいだろう。自分が追い越し車線を走っている時に逆走車に出会っても、頭が真っ白にならないよう気をつけたいが、パニックは「気をつける」ことで防げるものではない。

最善の自衛策は、普段から「追い越しが終わったら速やかに走行車線に戻る」というルールを守って、逆走車と正面衝突する機会そのものを減らすことだろう。“宝くじ”は見るだけにしたい。

(文=清水草一/写真=ボッシュ、NEXCO東日本、大成ロテック、JAF、IHI、日産自動車、積水樹脂、パイオニア/編集=櫻井健一)

日産自動車は、同社が開発した「逆走報知ナビゲーション技術」を純正カーナビゲーションシステムおよびディーラー装着の日産オリジナルナビゲーションに採用。パイオニアにもライセンスを供与している。(写真:日産自動車)
日産自動車は、同社が開発した「逆走報知ナビゲーション技術」を純正カーナビゲーションシステムおよびディーラー装着の日産オリジナルナビゲーションに採用。パイオニアにもライセンスを供与している。(写真:日産自動車)拡大
積水樹脂が開発した錯視効果を応用した逆走対策ソリッドシート「ジスラインS」。写真は「路面標示E1」で、立体的に見える矢印の路面標示を用いて正しい進行方向をドライバーに注意喚起する。加熱溶融接着タイプで簡単に施工ができ、高速道路でも多数の採用実績がある。(写真:積水樹脂)
積水樹脂が開発した錯視効果を応用した逆走対策ソリッドシート「ジスラインS」。写真は「路面標示E1」で、立体的に見える矢印の路面標示を用いて正しい進行方向をドライバーに注意喚起する。加熱溶融接着タイプで簡単に施工ができ、高速道路でも多数の採用実績がある。(写真:積水樹脂)拡大
パイオニアの最新カーナビには、高速道路や有料道路上で自車が逆走している状態を検知すると、警告メッセージと「逆走しています」の音声で逆走を知らせる機能が備わっている。
パイオニアの最新カーナビには、高速道路や有料道路上で自車が逆走している状態を検知すると、警告メッセージと「逆走しています」の音声で逆走を知らせる機能が備わっている。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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