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日産の“車中泊車”はお得でハッピー!? お出かけスペシャル「MYROOM」シリーズのメリットについて考える

2024.10.21 デイリーコラム 工藤 貴宏
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それはまさに“走る部屋”

かつて「CUBE MY ROOM」というキャッチコピーで広告を展開していた日産車があったのを覚えているでしょうか? でも、今回のお題である、「キャラバン」や「NV200バネット」で日産が展開している「MYROOM(マイルーム)」シリーズはそれとは全く関係ないモデルだったりしますが。MYROOMシリーズはバンをベースにソファやベッドになるシートを組み合わせた、広義でいえばキャンピングカーとなるでしょう。

ただし、一般的なキャンピングカーとは大きく違うのが設備とコンセプト。キャンピングカーとして8ナンバー登録するなら車内に水道設備と炊事設備(カセットコンロでもOK)が必要となるのですが、日産のMYROOMには付いていません。だから一般的なキャンピングカーのように8ナンバー登録ではなく、あくまで4ナンバーの商用車登録となっています。

ベース車とは全く違う構造のリアシートは「前向き(通常状態)」「水平なベッド」そして「後ろ向き(ソファ状態)」と3つのパターンに変形するのがポイントで、いわば車中泊仕様。しかし単に水平なベッドを展開できるだけの“一般的な車中泊仕様”とは違い、座面や背もたれを反転させて柔らかな面が表になる“ソファ状態”にすれば、後方に向かって座れるようになるというのが独特なのです。

例えば、景色のいいところへ出かけてクルマを後ろ向きに止め、テールゲートを開く。そしてシートをソファ状態にした車内に座って景色を見ながらお茶を飲んでくつろぐ。そういった「移動できる部屋」をイメージしたコンセプトというわけです。

2024年8月に発売された「日産キャラバンMYROOM」は、車中泊を含むアウトドアユースを視野に入れた特装車。「自分のお気に入りの部屋ごと自然のなかに持ち込んで、リラックス(憩うこと)ができるクルマ」をコンセプトに開発された。
2024年8月に発売された「日産キャラバンMYROOM」は、車中泊を含むアウトドアユースを視野に入れた特装車。「自分のお気に入りの部屋ごと自然のなかに持ち込んで、リラックス(憩うこと)ができるクルマ」をコンセプトに開発された。拡大
まさに“部屋”といった様相の「キャラバンMYROOM」の車内。シートやスライドテーブルのアレンジにより、自分にとって過ごしやすい空間をつくり出すことができる。
まさに“部屋”といった様相の「キャラバンMYROOM」の車内。シートやスライドテーブルのアレンジにより、自分にとって過ごしやすい空間をつくり出すことができる。拡大
「MYROOM」シリーズの“部屋のような車内”を実現するのが、「2 in 1シート」と呼ばれる後席だ。乗車移動時(写真上)は程よい硬さのシートとなり、フラットに倒すことでベッドルームモード(写真左下)に変化。座面と背もたれを反転させれば、後ろ向きになったうえでソフトな接触面が表になり、ソファとして使えるようになる(写真右下)。
「MYROOM」シリーズの“部屋のような車内”を実現するのが、「2 in 1シート」と呼ばれる後席だ。乗車移動時(写真上)は程よい硬さのシートとなり、フラットに倒すことでベッドルームモード(写真左下)に変化。座面と背もたれを反転させれば、後ろ向きになったうえでソフトな接触面が表になり、ソファとして使えるようになる(写真右下)。拡大
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差額はあっても「元が取れる」?

えっ? そのコンセプトは、2024年9月に登場した「ホンダN-BOXジョイ」と同じでは……?

確かに似ています。でもMYROOMはそれとは違って立派なソファがあるし、大きなテーブルもあるし、内装だってスライドドアやバックドアのトリムに至るまで木目&木目調で仕立てているからよりリラックスできる。なんと素晴らしい!

それに停車時換気システムやAC100V外部給電システム(これはクルマを止める場所に電源設備がないと使えない)だって標準装備。そのうえダブルベッドに近いサイズのフラットで快適に寝られるベッドも備わるわけだから、いわゆるキャンピングカーほどじゃないけどN-BOXジョイよりは設備が充実。NV200バネットのFFモデルで464万3100円(4WDは496万7600円)と、N-BOXジョイ(184万4700円~226万0500円)の倍以上の価格なのは仕方ない……とお茶を濁しておきましょう。ここでは。

ちなみにベース車両(NV200バネットの「DX」グレード)の価格はFFモデルが230万3400円。編集部は「ベース車との差額や宿泊費を考えると、経済的にはどれほどの“得”が見込めるか?」と問うけれど、結論からいえばそれは考え方次第。差額を230万円として、ホテルを一泊1万円と考えれば車中で230泊、2人で出かけるとするなら一泊2万円と仮定して115泊して元が取れる計算になる。

もし10年所有するなら230泊でも、年間あたり23泊だから頻繁に出かけている人ならけっこう現実的かもしれませんよね。ただ、時にはホテルに泊まりたいときもあるし、原則として車中泊時にエンジンのかけっぱなしはNGと考えると車内に泊まれるのは夏を除いた3シーズンのみといえるかもしれません(夜が涼しい高原なら夏でもいいかな?)。そう考えると、年間23泊は微妙かも(逆に2人で移動して年間11.5泊くらいなら現実的かも)。

「キャラバンMYROOM」に続く「MYROOM」シリーズ第2弾は、写真の「NV200バネットMYROOM」。キャラバンに比べてやや小ぶりで「一人でゆったり二人でぴったりなモデル」と位置づけられている。
「キャラバンMYROOM」に続く「MYROOM」シリーズ第2弾は、写真の「NV200バネットMYROOM」。キャラバンに比べてやや小ぶりで「一人でゆったり二人でぴったりなモデル」と位置づけられている。拡大
「2 in 1シート」(後席)とボードを組み合わせ、ベッドルームモードとした「NV200バネットMYROOM」の車内。この就寝スペースの広さは1840×1200mmで、ベッドのフロアから天井までの距離は953mm。ベッド下には高さ260mmの空間が確保される。
「2 in 1シート」(後席)とボードを組み合わせ、ベッドルームモードとした「NV200バネットMYROOM」の車内。この就寝スペースの広さは1840×1200mmで、ベッドのフロアから天井までの距離は953mm。ベッド下には高さ260mmの空間が確保される。拡大
「NV200バネットMYROOM」の車内後方側面には、収納スペースのほか、車外からの給電コネクターや、コンセント、照明・空調のスイッチなどが備わる。写真は「2 in 1シート」のヘッドレストをおさめた状態。
「NV200バネットMYROOM」の車内後方側面には、収納スペースのほか、車外からの給電コネクターや、コンセント、照明・空調のスイッチなどが備わる。写真は「2 in 1シート」のヘッドレストをおさめた状態。拡大
「NV200バネットMYROOM」(FFモデル)の価格は464万3100円。ベースモデル「NV200バネット」のほぼ2倍となっている。ボディーカラーは「サンドベージュ×ホワイト」(写真)のほか、「ミッドナイトブラック」「ホワイト」「ダークメタルグレー」が選べる。
「NV200バネットMYROOM」(FFモデル)の価格は464万3100円。ベースモデル「NV200バネット」のほぼ2倍となっている。ボディーカラーは「サンドベージュ×ホワイト」(写真)のほか、「ミッドナイトブラック」「ホワイト」「ダークメタルグレー」が選べる。拡大

「気ままに行ける」に価値がある

ただ、ここまで書いておいていうのも何ですが、そういう気持ちでMYROOMシリーズを選ぶのは、きっと楽しくないでしょう。

“元が取れる”とか、そんな細かいことなど考えずにど~んと構えて買って、ホテルに泊まりたいときはホテルだし、車中泊したいときは車中泊する。そしてドライブ中に風景のいい場所があったら、ソファ状態にしてコーヒーやお茶を飲みながらオープンカフェ状態を楽しむ。時にはそこに寝る。「一泊したらいくら」なんて考えず、そんな使い方がいいんじゃないでしょうかね。宿に縛られない機動力と体験こそがプライスレスなのですから。

例えば休日を前に思い立って、フラッとこのクルマで出かける。ホテルの予約を気にせず、どこへでも出かけて気ままに車内で寝る。そんなふうに付き合えれば、きっと人生を楽しくしてくれる存在になるのだと思います。

まるでさすらいの旅人のように、気の向くままにフラフラと出かけられる。それがMYROOMの最大の魅力なんじゃないでしょうかね。

イチオシなのは、子供が小さなファミリー。いろんな場所に出かけて、たくさん思い出をつくるなんていいと思いません?

もうひとつオススメしたいユーザーは、仕事をリタイアして時間がたっぷりあるシニア層。こういうクルマとともに、時間を有効活用したらきっと幸せな毎日じゃないですかね。

さーて、そんな老後に備えてボクもそろそろ出かけましょうかね。宝くじを買いに。

(文=工藤貴宏/写真=日産自動車、webCG/編集=関 顕也)

初の「MYROOM」として2023年10月に市場投入された「キャラバンMYROOMローンチエディション」(写真)は、用意された190台がわずか3カ月で完売。これに自信を持った日産は「『車中泊といえば日産』といわれるポジションを目指す」と意気込んでいる。
初の「MYROOM」として2023年10月に市場投入された「キャラバンMYROOMローンチエディション」(写真)は、用意された190台がわずか3カ月で完売。これに自信を持った日産は「『車中泊といえば日産』といわれるポジションを目指す」と意気込んでいる。拡大
「キャラバンMYROOM」では、2枚のボードを並べて使う「折り畳みベッド」のほか、簡単なアクションでベッドルームをつくれる「MYROOM跳ね上げベッド」もオプション設定されている。
「キャラバンMYROOM」では、2枚のボードを並べて使う「折り畳みベッド」のほか、簡単なアクションでベッドルームをつくれる「MYROOM跳ね上げベッド」もオプション設定されている。拡大
景色の良いロケーションで大きなバックドアやスライドドアを開け放つと、車内のムードはまるで開放的なホテルのようだ。写真は「キャラバンMYROOM」のもの。
景色の良いロケーションで大きなバックドアやスライドドアを開け放つと、車内のムードはまるで開放的なホテルのようだ。写真は「キャラバンMYROOM」のもの。拡大
電気自動車「リーフ」のバッテリーを再利用して開発された「ポータブルバッテリー from LEAF」。これらの電源を活用すれば、場所を選ばずAC 100Vコンセントが利用できるようになる。
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工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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