クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】全長×全幅×全高=4400×1695×1850mm/ホイールベース=2725mm/車重=1340kg/駆動方式=FF/1.6リッター 直4DOHC16バルブ(109ps/6000rpm、15.5kgm/4400rpm)/価格=186万3750円(テスト車=同じ)

日産NV200バネット(FF/4AT)【試乗記】

はたらくグローバルカー 2009.06.03 試乗記 佐野 弘宗 日産NV200バネット(FF/4AT)
……186万3750円

2009年5月に発表された「NV200バネット」。その特徴は、かなり個性的なデザインと、抜群の機能性がマッチしていること。クルマを道具として使い倒したいユーザー必見のニューモデルだ。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

本職は商用車です

そのカタチは、「ルノー・カングー」あたりの欧州フルゴネットを思わせる。2007年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカーほぼそのままのサイズとスタイルで登場した「NV200バネット」(以下NV200)が、このように一部のマニア(ワタシも含む)にもツキ刺さりそうなカタチで登場したのには、それなりの理由がある。

5ナンバー登録のワゴンモデル(7人乗り)も用意するNV200だが、主力はあくまで4ナンバー登録の商用車だ。スタイリングは独特だが、強いていえば、従来型バネット/ボンゴ/デリカ(すべてマツダ製OEM)やトヨタ・ライトエース/タウンエース(インドネシア製)などの小型ワンボックスバンと競合するクルマである。しかし、「優先すべきは人間の空間より荷室長」という日本の商用車設計の定石からすれば、ご覧のように、NV200はハナが長すぎる。なんとなく同じ日産のセレナに似ていると思ったら、担当したチーフデザイナーはセレナと同一人物だそうだ。

NV200がこういうカタチなのは、これが日本だけでなく、ヨーロッパや中国でも現地生産して真剣に大量販売をもくろむ世界戦略車だからだ。もちろん、日本の商用車はこれまでも世界中で作られて売られてきたのだが、基本パッケージからこれほどグローバル販売を想定した商用車は日産でも初の試みだとか。フロントタイヤと運転席が近すぎる日本流ワンボックスパッケージでは、小回り性や積載性能にはメリットがあっても、ヨーロッパで求められる高速性能や運転席環境をクリアできないのだろう。

写真は、バンのベーシックグレード「DX」。このモデルはブラックの樹脂バンパーが標準となる。ボディ同色タイプの「GX」もラインナップする。
写真は、バンのベーシックグレード「DX」。このモデルはブラックの樹脂バンパーが標準となる。ボディ同色タイプの「GX」もラインナップする。
拡大
バン「DX」のフロントシート。乗用ミニバン同様の楽な運転姿勢がとれる。が、バンはシート背後に安全バーが通っているためリクライニング幅は少ない。
バン「DX」のフロントシート。乗用ミニバン同様の楽な運転姿勢がとれる。が、バンはシート背後に安全バーが通っているためリクライニング幅は少ない。
拡大
どことなく欧州車を思わせるNV200のリアビュー。大きく見えるが、サイズは5ナンバー枠に収まっている。
どことなく欧州車を思わせるNV200のリアビュー。大きく見えるが、サイズは5ナンバー枠に収まっている。
拡大
日産 NV200バネット の中古車webCG中古車検索

室内はゆったり広々

NV200の基本設計は、日産小型車でお馴染みのBプラットフォームをベースに、リアに専用のリーフリジッド形式のサスペンションを組み合わせたもの。520mmという「AD」より低い荷室フロア高も、いかにも設計の新しさを感じさせる。ボディ全幅が5ナンバー枠いっぱいの1695mmなのはもちろん日本市場への配慮だが、「5ナンバーと両立するのは大変で……」と開発陣が苦笑する1220mmという荷室幅(ホイールハウス間)は、欧州のパレット規格に合わせたものだ。日本だけを考えれば、ここは基本的に1100mm強でいいらしい。

このボディスタイルから想像されるとおり、2名乗車時で2040mmという荷室フロア長は数値的に物足りなくもない。しかし、FFレイアウトゆえの前席下の空間を生かすと、配管などの細長いものなら3mまでOK。「積載性能でトヨタさんのあのクルマに負けているところは皆無」と開発陣は胸を張る。

まあ、学生時代のアルバイトから本厄を迎えるこの齢まで、生ぬるい文系仕事の経験しかないワタシには、NV200の真の戦闘力を語ることはできないが、ひとつだけ、このクルマの絶大な美点については自信を持って書ける。それは運転環境だ。

NV200のドラポジの自然さとスペース的余裕は、現在・過去を問わずに、日本の商用ワンボックスで圧倒的に優れている。足もとにステアリングシャフトが突き出ることもなく、広々としていてペダル配置も文句なし。さらにステアリングにチルト調整もつく。最新の乗用ミニバンと比較すると、わずかにステアリングを抱え込むようにアップライト気味な姿勢だが、そのぶん視界も良好だ。さらに、瞬間燃費、平均燃費、デジタルタコメーター、走行時間、走行距離、航続距離、平均燃費、平均時速などを切り替え表示するトリップコンピュータが全車標準装備なのも、イマっぽくて嬉しい。

バン「DX」の運転席まわり。バンのみMTも選べる。
バン「DX」の運転席まわり。バンのみMTも選べる。
拡大
バンのリアシート。シンプルなベンチシートが備わる。なお、シートなしの2人乗り仕様もラインナップする。
バンのリアシート。シンプルなベンチシートが備わる。なお、シートなしの2人乗り仕様もラインナップする。
拡大
リアシートを折り畳んだ状態。床面は低くフラットで、積載性は抜群。
リアシートを折り畳んだ状態。床面は低くフラットで、積載性は抜群。
拡大

乗り心地の良さは予想以上

今回試乗したのはシリーズで唯一の5ナンバー登録となる「16S」だ。パワートレーンは全車共通だが、7人乗りになることに加えて、ヘッドレスト付きの本格的なセカンドシートや一部シルバー塗装のインパネ、荷室周辺の防音用カーペット……など、16Sの専用部分は少なくない。また、商用モデルほどの大荷重を想定しないためにリアサスが専用チューンとなり、バネやダンパーを商用モデルよりソフトにしたうえで、スタビライザーを追加しているという(商用モデルは前後スタビライザーレス)。

その乗り味は、想像以上に好ましい。防音カーペットの効果は大きく、商用モデルより明らかに優れる静粛性は、Bセグメント級コンパクトカー(の廉価モデル)のそれと大差ない。今回のように1名乗車の空荷状態でも、乗り心地は意外なほどソフトで快適だ。ロールはそれなりに大きいが、カーブで急激にスロットルオフという意地悪をしても、安定性を失うことはない。なにより4輪の接地感がバツグンなので、動力性能をフルに使い切っても怖さはまったくない。

聞くところによれば、欧州仕様のシャシーは前後スタビライザー付きで、さらに高速安定性を高めたチューンだという。個人的にはこれが非常に興味深い……って、やけにマニアな話で恐縮だが、そういうことが気になるくらいにNV200の走りは優秀だったのだ。

NV200が商用車として成功するかどうかはわからない。しかし、かつてのサニトラ、ブルーバードバン、セドリックバン、最近ならルノー・カングーなどなど、マニアックな商用車好きの方々にとって、これが注目すべきニューカマーであることは間違いない。

個人的にも、16Sベースの2列5人乗りで欧州仕様サスペンション……なんて、まさに“和製カングー”とでもいうべきモデルがあったら、すぐにでもハンコを押したいくらいだ。このクルマが日本でも売れてくれれば、そんなワタシの妄想的願望も実現するかもしれない。というわけで、マニアのみなさん、NV200バネットを買いましょう。ワタシ、欧州サス仕様が出るのを待ってますから。

(文=佐野弘宗/写真=荒川正幸)

ワゴン「16S」。ボディと同色のバンパーやドアミラーが備わり、見た目がグッと乗用車らしくなる。
ワゴン「16S」。ボディと同色のバンパーやドアミラーが備わり、見た目がグッと乗用車らしくなる。
拡大
ワゴンはシートが3列になる。バン「GX」と比べるとシートの造りがずいぶん異なるが、バンにも同様のシートを採用した「GX」が設定される。
ワゴンはシートが3列になる。バン「GX」と比べるとシートの造りがずいぶん異なるが、バンにも同様のシートを採用した「GX」が設定される。
拡大
ワゴン「16S」のリアビュー。200万円を切る7人乗りミニバンとして注目の存在だ。
ワゴン「16S」のリアビュー。200万円を切る7人乗りミニバンとして注目の存在だ。
拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

試乗記の新着記事
  • スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
  • ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
  • スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
  • トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
  • BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
試乗記の記事をもっとみる
日産 NV200バネット の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。