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「フェラーリ12チリンドリ」だけじゃない! 名前に気筒数を持つクルマを検証する

2024.11.13 デイリーコラム 沼田 亨
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イタリアンブランドではおなじみの手法?

「フェラーリ12チリンドリ」が発表された際の、世間の反応を思い出していただきたい。「12気筒って、そのままじゃないか」とか「それが車名かよ?」といった、ネガティブな意味合いの突っ込みが目についたような気がするのだが、いかがだろうか?

だが、そもそもフェラーリのモデル名は「250」などV12エンジンの1気筒あたりの排気量(cc)や、「512」といった排気量と気筒数(5リッターの12気筒)を意味する数字にアルファベットを組み合わせたシンプルなものが多い。「F40」や「F50」、そして最新の「F80」などのハイパーカーだってフェラーリのFと創業○○周年を意味する数字にすぎないわけだし。

また、同じ気筒数をモデル名にした「アルファ・ロメオ4C」(CはCilindri=チリンドリの頭文字)は特に指摘を受けなかったような気がするのだが、なぜに12チリンドリは……というのは私の考えすぎだろうか?

それはともかくとして、12チリンドリと聞いていまさらながら思ったのは、気筒数を含む車名は古今東西けっこう多いのではないかということ。排気量を含む車名にはかなわないだろうが……ということで、ここではそうした車名やグレード名を持つモデルについて考えてみたい。

先ほどフェラーリの車名の例として排気量+気筒数の「512」を挙げたが、(ディーノ名義を含めて)「206」「246」「308」「328」「348」などもそのパターンだった。車名ではなくサブネームあるいはグレード名では「モンディアル8」などもあった。「8」はもちろん気筒数である。フェラーリ製の3リッターV8エンジンをデチューンして「ランチア・テーマ」のボディーに積んだ「テーマ8.32」の数字は、8気筒32バルブを意味した。

アルファ・ロメオも4Cのほか「8Cコンペティツィオーネ」があったが、そもそもアルファは戦前から1950年代にかけては、もっぱら「6C 1750」や「8C 2300」など気筒数+排気量を車名に冠していた。1970年代から1980年代にかけて「アルファ6」と名乗るV6エンジン搭載のフラッグシップサルーンも存在した。

ほかにイタリアでは、フィアットが1950年代につくったV8エンジン搭載のスーパースポーツが「8V」を名乗っていた。気筒数を冠するのは多気筒をアピールする場合が多いが、必ずしもそうとはいえない。グレード名ではあるが、2023年に残念ながら生産終了した「フィアット500」や「パンダ」などの「ツインエア」は直2ターボユニットだったのだから。

「フェラーリ12チリンドリ」。フェラーリ最後のV12になるか? といわれている、2024年5月に発表された最新のフラッグシップ。
「フェラーリ12チリンドリ」。フェラーリ最後のV12になるか? といわれている、2024年5月に発表された最新のフラッグシップ。拡大
アルファ・ロメオの「4C」(左)と「4Cスパイダー」(右)。1.75リッター直4 DOHCターボユニットをミドシップしていた。
アルファ・ロメオの「4C」(左)と「4Cスパイダー」(右)。1.75リッター直4 DOHCターボユニットをミドシップしていた。拡大
「アルファ・ロメオ8C 2300ルマン」。1931年のルマンでも優勝したマシンで、155PSを発生する2.3リッター直8 DOHCエンジンを搭載。
「アルファ・ロメオ8C 2300ルマン」。1931年のルマンでも優勝したマシンで、155PSを発生する2.3リッター直8 DOHCエンジンを搭載。拡大
1954年「フィアット8V」。市販車用としては最小の部類である2リッターのV8 OHVエンジンを搭載。これは自社製ボディーだが、さまざまなカロッツェリアがボディーを架装していた。
1954年「フィアット8V」。市販車用としては最小の部類である2リッターのV8 OHVエンジンを搭載。これは自社製ボディーだが、さまざまなカロッツェリアがボディーを架装していた。拡大
2011年「フィアット500ツインエア」。0.9リッター直2 DOHCターボユニットを搭載。
2011年「フィアット500ツインエア」。0.9リッター直2 DOHCターボユニットを搭載。拡大

同じ12気筒でも呼び方はさまざま

とはいうものの気筒数を含む車名は、基本的には多気筒自慢が多いと思う。そのパイオニア的存在と思えるのが、1930年代の「キャデラックV16」。ズバリV16ユニット搭載車である。それから半世紀以上を隔てた近代の16気筒エンジン搭載車も、やはり車名でアピールしていた。V16搭載の「チゼータV16T」とW16搭載の「ブガッティ・ヴェイロン16.4」という2台のハイパーカーである。

戦前はキャデラックのライバルだったパッカードは、V12エンジン搭載車を「トゥエルブ」や「ツインシックス」と呼んでいた。ツインシックスと意味は同じだが、1970~1990年代にV12を「ダブルシックス」と呼んでいたのがイギリスのデイムラー。もともと1930年代のV12エンジン搭載車の名称だったが、1972年にバッジエンジニアリングによる「ジャガーXJ12」のデイムラー版として復活させた。

そのジャガーXJも直6エンジン搭載車は「XJ6」と呼んでいたのはご存じだろう。また「ジャガーMk2」のボディーに独自の2.5リッターV8エンジンを積んだデイムラー版は、そのまま「2.5リッターV8」と名乗っていた(後に「V8 250」に改称)。

イギリスのスポーツカーには、気筒数を含む車名が多い気がする。1936年に誕生したモーガンの「4/4」は4輪と4気筒を意味していた。それに続いた「プラス4」「プラス8」「プラス6」の数字は、それぞれ直4、V8、直6エンジン搭載を意味する。

「MGB V8」はその名のとおりMGBにV8エンジンを積んだモデルだし、後の「MG RV8」も同様。「アストンマーティンV8」もしかりである。「トライアンフGT6」は、直4エンジン搭載のスポーツカー「スピットファイア」をベースに2リッター直6エンジンを搭載したことから、その名がつけられたのだった。

1931年「キャデラックV16スポーツ フェートン コンバーチブル」。165PSを発生する7.4リッターのV16 OHVエンジンを積んでいた。
1931年「キャデラックV16スポーツ フェートン コンバーチブル」。165PSを発生する7.4リッターのV16 OHVエンジンを積んでいた。拡大
2010年「ブガッティ・ヴェイロン16.4スーパースポーツ」。4基のターボを備えた8リッターW16エンジンは最高出力1200PSまで高められていた。
2010年「ブガッティ・ヴェイロン16.4スーパースポーツ」。4基のターボを備えた8リッターW16エンジンは最高出力1200PSまで高められていた。拡大
1972年「ジャガーXJ12 Sr1」。滑らかさや静粛性では最高峰と評された5.3リッターV12 SOHCエンジンを搭載していた。
1972年「ジャガーXJ12 Sr1」。滑らかさや静粛性では最高峰と評された5.3リッターV12 SOHCエンジンを搭載していた。拡大
1968年に登場した「モーガン・プラス8」。「MGB V8」や初代「レンジローバー」などにも積まれたローバー製3.5リッターV8エンジンを積む。
1968年に登場した「モーガン・プラス8」。「MGB V8」や初代「レンジローバー」などにも積まれたローバー製3.5リッターV8エンジンを積む。拡大
1966年「トライアンフGT6」。全長3.8m未満のコンパクトなボディーに2リッター直6 OHVエンジンを搭載、“プアマンズ(ジャガー)Eタイプ”などと呼ばれた。
1966年「トライアンフGT6」。全長3.8m未満のコンパクトなボディーに2リッター直6 OHVエンジンを搭載、“プアマンズ(ジャガー)Eタイプ”などと呼ばれた。拡大

国産車も負けず劣らずの数字好き

ドイツではフォルクスワーゲンが、グレード名ではあるが「パサート」「ゴルフ」「コラード」のV6エンジン搭載車を「VR6」と呼んでいたことがあった。またパサートのW8エンジン搭載車をそのまま「W8」と呼んでいた。

現在のアウディのルーツのひとつである、2ストロークエンジン搭載の小型車専門メーカーだったDKW。1950年代に「3=6」という変わった名称のモデルが存在したが、この名には「2ストローク3気筒エンジンのバランスのよさ、スムーズネスは4ストローク6気筒に匹敵する」という主張が込められていた。ちなみにこの説は、やはり2ストローク3気筒エンジンを得意としたスズキが1960年代にそのままPRに用いていた。

日本では1964年に国産初のV8エンジン搭載車として登場した「トヨタ・クラウン エイト」。グレード名のような気もするが、エンジンのみならず車体も専用設計だったので車名と考えていいだろう。

グレード名でいけば「プリンス・グロリア スーパー6」。国産初の直6 SOHCエンジン搭載車として1963年に2代目グロリアに追加されたモデルだが、後に続いたグロリアの直6搭載車は「グロリア6」「6ワゴン」「6エステート」など、みなグレード名に「6」がつけられた。

1965年にフルモデルチェンジされた2代目「日産セドリック」も同様。従来の直4エンジン搭載車に加えて新たに直6エンジン搭載車が登場したが、後者は「スペシャル6」「カスタム6」「ワゴン6」と名乗り、後に「デラックス6」「パーソナル6」「バン6」も加えられた。6気筒がステータスだったのである。

四半世紀後にそのパターンが復活したのが、1991年に登場した4代目「三菱ランサー」と兄弟車の「ミラージュ」。量産車としては世界最小となる1.6リッターのV6エンジン搭載モデルが話題となったが、これらは「ランサー6」「ミラージュ6」と名乗っていた。

以上、気筒数を車名に含むモデルをざっと振り返ってみた。ますます電動化が進み、内燃機関搭載車の退潮が予想される昨今では、今後こうした名を持つモデルが登場することは考えにくい。それこそフェラーリ12チリンドリが最後かも……。

(文=沼田 亨/写真=フェラーリ、ステランティス、ゼネラルモーターズ、ブガッティ、ジャガー・ランドローバー、モーガン、フォルクスワーゲン、トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車、TNライブラリー/編集=藤沢 勝)

2001年「フォルクスワーゲン・パサートW8 4MOTION」。V4を2基組み合わせた感じの4リッターW8 DOHCエンジンを積み、駆動方式はフルタイム4WD。
2001年「フォルクスワーゲン・パサートW8 4MOTION」。V4を2基組み合わせた感じの4リッターW8 DOHCエンジンを積み、駆動方式はフルタイム4WD。拡大
1953年「DKW 3=6」。2ストロークの896cc 3気筒エンジンで前輪を駆動。これは2ドアセダンだが、4ドアセダンや2ドアコンバーチブル、3ドアワゴンなどもあった。
1953年「DKW 3=6」。2ストロークの896cc 3気筒エンジンで前輪を駆動。これは2ドアセダンだが、4ドアセダンや2ドアコンバーチブル、3ドアワゴンなどもあった。拡大
1964年「トヨタ・クラウン エイト」。全長4720mmに対して全幅1845mmという極端にワイドなボディーに総アルミ製の2.6リッターV8 OHVエンジンを積む。
1964年「トヨタ・クラウン エイト」。全長4720mmに対して全幅1845mmという極端にワイドなボディーに総アルミ製の2.6リッターV8 OHVエンジンを積む。拡大
1964年「プリンス・グロリア6」。スタンダード仕様のボディーに2リッター直6 SOHCエンジンを積んだレアなグレード。
1964年「プリンス・グロリア6」。スタンダード仕様のボディーに2リッター直6 SOHCエンジンを積んだレアなグレード。拡大
1991年「三菱ランサー6 MXサルーン」。双子車の「ミラージュ」ともども、1.6リッターV6 DOHCエンジンはセダンの上位グレードのみに積まれた。
1991年「三菱ランサー6 MXサルーン」。双子車の「ミラージュ」ともども、1.6リッターV6 DOHCエンジンはセダンの上位グレードのみに積まれた。拡大
沼田 亨

沼田 亨

1958年、東京生まれ。大学卒業後勤め人になるも10年ほどで辞め、食いっぱぐれていたときに知人の紹介で自動車専門誌に寄稿するようになり、以後ライターを名乗って業界の片隅に寄生。ただし新車関係の仕事はほとんどなく、もっぱら旧車イベントのリポートなどを担当。

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