カワサキの「W230」と「メグロS1」はどっちが買いか? 古くて新しい中型バイクに思うこと
2024.11.25 デイリーコラム待ってました! の救世主
2024年11月20日にカワサキから2台のバイクが発売された。「W230」と「メグロS1」だ。ベースは共通だけれど、外装が異なる2台は異母兄弟といった風情だ。そこはかとなく似ているような、似ていないような……うん、似ているな。でも、クラシカルな雰囲気は共通とはいえ、実車から受ける印象は意外と違う。W230とメグロS1。はてさてアナタはどちらにグッとくる? 手もとに現金はないけれど、妄想するのはいつでもどこでもタダ!
ちょっと振り返ると1980年代からこっち、かつてニーハンとかクオーターなんて呼ばれていた軽二輪区分の排気量「250ccクラス」にはめっぽう速いヤツから乗りやすいヤツ、高いヤツ、安いヤツ、カッコいいヤツ、そうでもないヤツ……たくさんのカテゴリーのさまざまなライバル車がひしめいていた。ところがどうだ。令和6年の今では、その全体数をすっかり減らしてしまっているのである。気楽にバイクと付き合いたい派のための、フレンドリーな250ccは絶滅したのかと思われるくらいマイノリティーになってしまった。OMG!
250ccクラスのトーンダウンの理由についてはここでは触れないが、サッとまたがってスッと走りだせるコンパクトサイズの250ccモデルが選べないという状況は……相当に悔しい。長年バイクにだけはたくさん乗ってきた二輪ライターの自分が感じる「250ccこそ最も楽しいクラス!」の実感と主張は、それにあたるバイクが手に入ってこそ意味がある。そんな筆者の苦境を知ってか、カワサキはついに救いの手を差し伸べてくれた。メシアのようなW230とメグロS1だ。
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すばらしき“普通のバイク”
2車はどこが違うのか? まず車両のプライスがかなり違う。W230が「64万3500円」で、メグロS1はW230から7万7000円アップとなる「72万0500円」。これは財布の中身が寒々しいオジサン(と若者)には看過できない差額ではあるが、まあ、そこは個人の努力とキモチで乗り越えてもらおう。
それよりも明らかに違うのがカラーリングで、第一印象がはっきりと異なる。カジュアルなW230は「パールアイボリー×エボニー」「メタリックオーシャンブルー×エボニー」の2タイプで、ざっくり言うとそれぞれ白と紺。一方、メッキパーツ多めのメグロS1は「エボニー(黒)×クロームメッキ」の1種のみ。W230がソフト路線だとすればメグロS1はハード路線といった風情で、ライダーが羽織るジャケットの生地はW230だとファブリック系が似合いそうで、一方メグロS1はレザー系がハマりそうな雰囲気だ。
高いハンドル位置によるアップライトなライディングポジション、フロントフォークにかぶせられるゴム製ブーツ、フロント18インチ/リア17インチの前後スポークリム……。それらのオーソドックスな“仕立て”に、取り立てて目覚ましいものは何もない。でもそんな、至ってフツーの車体構成であることが実に好ましいじゃないか。そのあたりのスタンダード感は、1992年のデビューから2017年のファイナルエディションまでなんと25年間(カワサキ車としては最長)もつくられ続けた「エストレヤ」の生まれ変わりといっていいW230とメグロS1だけに、カワサキにとっては手慣れたものなのだろう。なにより7年の時を経て「帰ってきてくれた」ことにありがとうを言いたい筆者である。アリガトー!
空冷4ストロークで単気筒、SOHC 2バルブ。ウェイトは両車とも143kgで、パワーはたったの18PS──。このスペックを見ただけで「ああ、これは自分のためのバイクだ」と直感したアナタ。あなたの選球眼は誠に素晴らしい。乗るのがちとおっくうになるようなヘビーマシンはちょっとだけ遠くに追いやって、“愉快軽快”なライトウェイトランナーW230とメグロS1でめいっぱいバイクライフを満喫しよう。ん? 結局どっちが買いかって? そりゃもう「レビン」か「トレノ」の違いくらいなので、好きなほうを選んでちょーだい!
(文=宮崎正行/写真=カワサキモータースジャパン/編集=関 顕也)

宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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