ディフェンダー130 V8 P500(4WD/8AT)
煩悩あれば菩提あり 2025.02.26 試乗記 2025年モデルで5リッターV8スーパーチャージドエンジンが選べるようになった「ディフェンダー130」。最高出力500PSを誇るジャガー・ランドローバー伝統のV8によって、3列シート8人乗りの大型クロカンモデルの走りはどのように変わったのか。試乗を通して確かめた。5リッターV8は2025年モデルで登場
まったくの偶然ではありますが、この「ディフェンダー130 V8 P500」に試乗するちょうど前日、新潟県の苗場スキー場周辺の取材で、「ディフェンダー90」の助手席に乗る機会があった。日本海側が記録的な豪雪に見舞われていることはニュースで知っていたけれど、見ると聞くでは大違いで、驚くほどの大雪だった。
あちこちで除雪車がフル稼働していて、国道の両側は見上げるような雪の壁となっている。駐車場に止めたクルマは、数時間で雪の塊に姿を変える。
こんなコンディションのなかで、知人が運転するディフェンダー90は何事もなかったかのように安定した走りを見せた。優秀なスタッドレスタイヤの助けもあって、ぴたりとグリップするうえに乗り心地も快適。多少のわだちならひょいと乗り越えるし、コマンドポジションからの見晴らしのよさもあり、その安心感、信頼感は感動するほどだった。どれくらい感動したかというと、帰りの上越新幹線でディフェンダー90の中古車を検索したほど。
幸か不幸か、人気モデルゆえ中古でも高値安定しており、思いとどまることができたけれど、危ないところだった……。
前置きが長くなってしまいましたが、こうして目がハートの形になっている状態でディフェンダー130の試乗に臨んだことをあらかじめお伝えしておきたい。
ディフェンダー130は、2024年モデルまではディーゼルエンジンしかラインナップされなかったけれど、2025年モデルより5リッターのガソリンV8エンジンも選べることになった。今回試乗したのは、そのV8モデルである。
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コマンドポジションは偉大だ
最近は大柄なSUVを見慣れたけれど、やはり全長5275mmのディフェンダー130の質量は圧倒的だ。90(全長4510mm)と「110」(全長4945mm)、そして130(全長5275mm)のディフェンダー3兄弟でおもしろいのは、全長こそ違えど、1995mmの全幅と1970mmの全高は共通であることだ。
エクステリアのデザイナーには、3モデルのうち、「全長×全幅×全高」のバランスが一番いいのはどれかを尋ねてみたい。好みとしては、90が一番カッコよく、バランスのよさなら110だ。110のホイールベースを変えずにリアのオーバーハングだけを延ばした130に対しては、ふたつの感想を抱く。ひとつは「ちょっとバランスが悪くて不格好」というもの。もうひとつは「懐かしい」というものだ。
なにが懐かしいのかといえば、当時、ランドローバーと呼ばれていた初代ディフェンダーは、さまざまなアタッチメントを装着することで、救急車や消防車、あるいは農耕車として活躍した。リアが不自然に長くなっているように見えるディフェンダー130は、“働くクルマ”だった頃のランドローバーを想起させて、懐かしい感じがするのだ。
外から眺めていると不安になるほどの大きさを感じさせるのに、運転席に座るとボディーの四隅が把握できるように感じるのは、ディフェンダーに限らずランドローバーの各モデルに共通した特徴だ。コマンドポジションは偉大なり。
2025年モデルよりセンターコンソールのレイアウトが変更され、スライド式のトレイとiPadぐらいは入りそうなポケットが加わった。地味ながら、使う側にとってはありがたい改良だ。
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煩悩はもう捨てたと思っていたのに
新たにパワートレインのラインナップに加わった、5リッターのスーパーチャージドV8を始動する。このエンジンは、最新の「レンジローバー」が搭載するBMW由来のV8ではなく、さかのぼれば1990年代に起源を見つけることができる「AJ型」の改良版だ。
ただし、走らせてみるとこのエンジン、古いと感じさせる要素は皆無だ。ふた昔前のスーパーチャージャーのようにミャーミャー言わないから、スーパーチャージャーが利いているという実感は薄いけれど、低回転域から2.5t超の重量級のボディーを無理なく加速させるあたり、間違いなく過給が利いているのだろう。
市街地ではせいぜい2000rpmも回せば交通の流れをリードできるくらいトルクはリッチで、この回転域だと音も静かだし回転フィールも滑らか。
いっぽうアクセルペダルを踏み込むと状況は一変。3500rpmを超えるあたりから回転計の針が盤面を駆け上がる速度が速くなり、メカニカルな回転フィールとソリッドな排気音が、眠っていた昭和のクルマ好きを呼び起こす。
もうこういうのはいい、エンジンなんか上まで回らなくても低回転域でレスポンスよく走ってくれればそれでいい、なんならモーターのほうが滑らかでレスポンスがいい……。こう思っていた昭和のクルマ好きがむっくりと目を覚ました。
カーンと高回転まで突き抜けるこの感じ、青天井という言葉がふさわしいV8の回転フィール。あぁ、煩悩はもう捨てたと思っていたのに。こういう状態を、「煩悩あれば菩提(ぼだい)あり」というのか。ちょっと違うか。
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走りはまるでラグジュアリーSUV
バランスと燃費に優れた直6ディーゼルが存在するにもかかわらず、刺激的だけれど燃費に劣るV8を選ぶ。多数決をとれば、「〇」と「×」の両方の声があがるだろう。ただし、このクルマの乗り心地のよさに関しては、ほぼ満場一致で「〇」になるはずだ。
不思議なのは、軽く全長5mを超える2.5tのクルマが、ふんわり軽く動いていると感じる点だ。路面の不整を越える際にも、「よっこらしょ」ではなく、「ひらり」と越える。じゃあ、ひらりと越えた後にフラつくのかというと、そんなことはなく、ぴしっと揺れが収まる。
エアサスペンションの使い方とセッティングがうまいのか、モノコックボディーがしっかりしているのか、おそらくそのすべてがバランスして、この乗り心地を実現しているのだろう。最新のレンジローバーはさらに快適になっているけれど、このディフェンダー130は先代のレンジローバーぐらいのレベルには達しているように感じる。スタイリングのところで“働くクルマ”というフレーズを使ったけれど、パワートレインと足まわりに関してはラグジュアリーSUVだ。
残念ながらわが家の駐車場からははみ出すほどデカいけれど、そのぶん、3列目シートは大人が座っても問題ないし、3列目シートを畳めば荷室は広大。さらに2列目まで倒せば、そこにテントが張れるんじゃないかと思えるぐらいの面積になる。さすが全長5275mm、室内空間にも余裕がある。
加えて、前日に体験した圧倒的なオフローダーとしての実力を知ると、その完成度の高さに尊敬の念に近いものを抱いてしまう。世界中で品薄だというのも、納得できる仕上がりだった。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
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テスト車のデータ
ディフェンダー130 V8 P500
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5275×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2630kg
駆動方式:4WD
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
最高出力:500PS(368kW)/6000-6500rpm
最大トルク:610N・m(62.2kgf・m)/2500-5000rpm
タイヤ:(前)275/45R22 115W M+S XL/(後)275/45R22 115W M+S XL(コンチネンタル・クロスコンタクトRX)
燃費:--km/リッター
価格:1675万円/テスト車=1797万3018円
オプション装備:ボディーカラー<カルパチアングレー>(8万5000円)/エクステンデッドブラックエクステリアパック(17万5000円)/22インチ“スタイル5098”ホイール<グロスブラックフィニッシュ>(27万4000円)/22インチフルサイズスペアホイール(2万1000円)/オールシーズンタイヤ(0円)/ホイールロックナット(9000円)/ラゲッジスペースパーティションネット(2万2000円)/Wi-Fi接続<データプラン付き>(3万6000円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(5万9180円)/ディプロイアブルサイドステップ一式(54万1838円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1778km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:245.0km
使用燃料:40.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.1km/リッター(満タン法)/7.1km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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