次世代車の開発拠点として、スバルが渋谷にこだわるのはどうしてか?
2025.03.12 デイリーコラム 拡大 |
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“マストな人材”ファーストでいく
スバルは2025年2月、東京・渋谷のWeWork渋谷スクランブルスクエア内に、SUBARU Lab(スバルラボ)の新拠点を開設した。渋谷駅直結の好立地である。スバルは2020年12月にH1O(エイチワンオー)渋谷三丁目に第1弾のサテライト開発拠点を設けている。運転支援システムのアイサイトをAIの技術でブースト(強化)させる拠点として設けた。WeWork渋谷の拠点はスバルのソフトウエア開発の拠点としては2つ目ということになる。
なぜ、渋谷なのか。スバルラボの所長でスバルの執行役員 CDCO(Chief Digital Car Officer) 兼 技術本部副本部長を務める柴田英司氏は次のように語る。
「H1OもWeWorkと同じレンタルオフィスです。(開設時は)コロナ禍で大変な状況で、『オフィスは要るのか?』という話にもなりましたが、拠点を構えた成果は大きかった」
「当時、AIのエンジニアは会社であまり抱えていませんでした。初期の技術検討は東京・三鷹にいる画像処理のソフトウエアチームがやっていたのですが、人が足りないと。じゃあ一気に増やそう。AIのエンジニアの中心地は渋谷だと。首都圏の通勤圏のど真ん中に事務所を置いたところ、素晴らしいエンジニアに来ていただけました。ソフトウエアエンジニアが集まるところに拠点を置くことは大事です」
渋谷にソフトウエア開発拠点を設けてうまくいっている。その成功体験が2拠点目の開設を後押しした。今度は何をやるのか。それは、柴田氏の役職と関連する。2024年4月にCDCOに就任し、アイサイトをはじめとする運転支援技術だけでなく、関連する部門に横串を刺し、デジタルカー開発を加速させる役割を担うことになった。堅苦しい言葉で説明すれば、「クルマの進化とIT技術の融合で持続的価値を生み出してゆく」のが、柴田氏に課された使命である。
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内製ソフトとハードウエアの高度な融合がカギ
クルマはソフトウエアによって機能や価値が変えられるようになっていく。そんなクルマを「SDV(ソフトウエア・ディファインド・ビークル)」と呼んでいる。スバルには、水平対向エンジンやシンメトリカルAWDといった得意とするハードウエアの技術がある。車両運動性能にも一定の評価が得られていると自負している。これらハードの技術をベースに、ソフトウエアの技術を加えることによって“デジタルカー”として深化させ、新たな時代の「安心と愉(たの)しさ」を提供する。それがスバルのビジョンだ。
「クルマ専用の技術とITの技術をどう融合して、新たな価値に引き上げていくか」が課題で、キーワードは“内製”だ。出来合いのソフトウエアを購入して自分たちの製品に適合させるのではなく、ハードに合ったソフトを内製で開発する。アイサイトは衝突回避に最適なステレオカメラを内製し、その性能を引き出す半導体や画像認識のソフト、車両制御を内製で開発し、進化を続けながら全車に適用している。
今後はアイサイトに代表されるADAS(運転支援システム)に加え、EV制御のソフトウエアとそれらを載せる統合制御ECUを内製する。それをスバル全車に入れ、デジタル時代のクルマとして一気に展開し、世界中のユーザーに届ける。ADASだけでなく、コネクテッド、電動制御にインフォテインメント、そして新しいサービスの開発も行っていかなければならない。開発をスピードアップするためにも優秀な人材が必要で、だからソフトウエアエンジニアの中心地である渋谷に第2の開発拠点を設けたのだ。
レンタルオフィスのWeWorkに拠点を設けたのは、異業種との交流が期待できるからでもある。渋谷スクランブルスクエアの7フロアに6000坪のフロア面積を持つWeWorkには200社のメンバーがおり、うち6割がIT企業。メンバー企業や団体との交流は盛んで(WeWork側が積極的に働きかけている)、「ラボ拡張の目的に合致した提案をいただいた」と柴田氏。「このなかでひとつの世界が完結している。出歩く必要がまったくない」と評価する。
柴田氏は渋谷に新たなソフトウエア開発拠点を構えたのは、「スバルが激動の時代を生き残るための方策」と話した。うまくいく自信があるというより、「期待している」というのが本音のよう。現地で働くエンジニアは「(自動車業界に訪れているとされる)100年に一度の大変革期は思いっきりチャンス。これを楽しむために渋谷に来させていただいた」と話した。
楽しく働ける環境であることは、とっても大事だ。ソフトウエアエンジニアの中心地でどんな技術やサービスが生まれるのか。楽しみで仕方ない。
(文=世良耕太/写真=スバル、webCG/編集=関 顕也)

世良 耕太
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