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2000万円以上で当たり前! 「メルセデス・ベンツGクラス」は高くなってもなぜ売れる?

2025.07.28 デイリーコラム 玉川 ニコ
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もうワケがわからない!

昨今、クルマの価格は昔と比べて軒並み高額化しているわけだが、そのなかでも特に驚かされるのが「メルセデス・ベンツGクラス」だ。

Gクラスの何に驚かされるかといえば、一番安いグレードでも1844万円から、特別仕様車になると3000万円に達する場合もあるその高額っぷりと、「その高額なクルマを購入できる人が大勢いる」という事実に対してである。

当然ながら筆者は1844万円のクルマを即金で買うことなどできず、ウェルカムプラン(残価設定型ローン)を利用しても、Gクラスの新車はちょっと難しいと思う。だが筆者が住まう東京・世田谷あたりでは、最新世代のGクラスを複数台見かけない日はない。なんなら昨日は、5台以上の現行型Gクラスを駅前で見かけた気がする。

メルセデス・ベンツGクラスというクルマはなぜ、こんなにも高額なのだろうか? そしてそのように高額なクルマがなぜ、こんなにもよく売れているのだろうか?

まずは「なぜ高いのか?」という部分から考えてみよう。Gクラスの高額っぷりは、「原価が高いから高い」「希少ゆえに高い」という2点に加えて「高いから高い」という、身もふたもない話を加えた計3つの要因で成り立っている。

メルセデス・ベンツのオフィシャルサイトにある「Gクラス」のお品書き。左から1844万円、2849万円、2635万円と、買い手を選ぶ数字が並ぶ。
メルセデス・ベンツのオフィシャルサイトにある「Gクラス」のお品書き。左から1844万円、2849万円、2635万円と、買い手を選ぶ数字が並ぶ。拡大
「メルセデス・ベンツGクラス」には、さまざまな限定車や特別仕様車も設定される。写真は2025年4月に発売された、ファッションブランドであるMONCLER(モンクレール)とのコラボモデル「Gクラス Past II Future」。日本市場への割り当ては4台で、価格はなんと3000万円。
「メルセデス・ベンツGクラス」には、さまざまな限定車や特別仕様車も設定される。写真は2025年4月に発売された、ファッションブランドであるMONCLER(モンクレール)とのコラボモデル「Gクラス Past II Future」。日本市場への割り当ては4台で、価格はなんと3000万円。拡大
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レアさが値上げを加速させる

「原価が高いから高い」という部分に関しては、ある意味当たり前すぎるほど当たり前な話だ。

高剛性シャシーとパートタイム4WDの堅牢(けんろう)な設計を、乗用車ベースではなく専用設計で行い、「もはやほぼ『Sクラス』」といえるほどの内装の高品質化とラグジュアリー化を断行する。そしてそれを自社の工場ラインではなく、ニッチな高額モデル(特に4WDモデル)の少量生産を得意とするマグナ・シュタイヤー社のオーストリア・グラーツ拠点に依頼して、職人仕上げにも近い製造工程を用いて生産する――というようなクルマを、日本円にして数百万円レベルで買えると思うほうがむしろおかしい。円安の影響はけっこうあるにしても、「スタート価格が1844万円」というのはおおむね妥当と考えるべきだろう。

そして「希少ゆえに高い」という部分についていえば、前述したとおりGクラスはメルセデスの自社工場で大量生産されるクルマではなく、マグナ・シュタイヤー社の工場にて手作業的に少量ずつつくられているクルマである。それに加えて、1979年から基本的には不変な唯一無二のスタイリングという希少性と、「クロカン性とラグジュアリー性の見事なハイブリッド」という希少性も備えている。つまりは希少性の三段重ねである。そのため、他のラグジュアリーSUVでは、なかなかGクラスの完全な代替品にはなり得ない。

それゆえ人々の需要はGクラスに集中し、しかし比較的少量しかつくれない車種であるがゆえに、納期はどうしても長くなり、ひんぱんに受注制限もかかる。そのような「手に入れにくい希少な品」の価格が上昇するのは、昨今の金(ゴールド)相場を見るまでもなく、ごく当たり前の話である。

「Gクラス」は、マグナ・シュタイヤーのグラーツ工場で、ていねいな手作業を基本につくられる。写真は、同モデルが先代から現行型へと移行しつつあった2017年当時のもの。
「Gクラス」は、マグナ・シュタイヤーのグラーツ工場で、ていねいな手作業を基本につくられる。写真は、同モデルが先代から現行型へと移行しつつあった2017年当時のもの。拡大
高品質なレザー張りシートや凝ったステッチは当たり前。軍用車を祖とする「Gクラス」の内装は今や、価格なりの高級仕立てとなっている。写真は「AMG G63ローンチエディション」のもの。
高品質なレザー張りシートや凝ったステッチは当たり前。軍用車を祖とする「Gクラス」の内装は今や、価格なりの高級仕立てとなっている。写真は「AMG G63ローンチエディション」のもの。拡大

好スパイラルで高騰は続く

そして「高いから高い」という身もふたもない理由も、見逃すわけにはいかない。

クルマに限らず世の中のプロダクトやサービスは、もちろん「性能などのレベルが高いからユーザーに支持される」というのが基本線ではあるが、それに加えて「売れているから売れる」という身もふたもない状況も、しばしば発生する。

「何の行列なのかさっぱりわからないが、多くの人が並んでいるので、取りあえず自分も並んでみた」というのは落語や漫才のなかだけの話だろうが、そこまで極端ではないにしてもこれに近い事例は、映画や歌謡曲、エンターテインメント書籍などの消費現場でひんぱんに発生していることだ。

もちろんメルセデス・ベンツGクラスは「特に意味もなく売れているモノ」「マーケティングの妙で売れた商品」ではなく、前述したような確固たる優位性があるゆえに売れている機械製品だ。しかしGクラスを買うすべての人が「1935年に設立された合弁会社、シュタイヤー・ダイムラー・プフの歴史が……」とか、「フロントサスペンションの独立懸架化を筆頭とするシャシーの全面刷新が……」などとブツブツ言いながら販売店へ向かうわけではない。「とにかくGクラスを選んでおけば、性能の面でも見栄えの面でも、そしてリセールの面でも間違いないらしいし、インフルエンサーの誰それさんと、芸能人のなんとかさんも乗ってるから」というような理由でGクラスを指名する人も、たくさんいる。

そうしてコアな自動車愛好家と比較的ライトな(同時に富裕でもある)ユーザー層の両面展開によって「とにかく売れる」という好循環となったGクラスを、メーカーやインポーターが値上げすることはあっても、「値下げする」というオプションは基本的には存在しない。順調に得られるはずの利益を自ら削る必要は特になく、また「安直に値段を下げる」という行為は、自らのブランド性を著しく毀損(きそん)する悪手でもあるからだ。

電動化やミニGクラスの登場(予定)が、既存のGクラスの価格に若干の影響を与える可能性はあるかもしれない。だが物の道理から考えるのであれば、Gクラスの価格高騰は今後も続くという結論にしかならないのである。

また、後回しにしていた「そんな高額なクルマを買える人が、なぜこんなにも多いのか?」という疑問に関しては、長考してみたものの答えが出なかったため、今後の個人的な探究課題とさせていただきたい。

(文=玉川ニコ/写真=メルセデス・ベンツ日本、webCG/編集=関 顕也)

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2024年には、フル電動の「Gクラス」となる「メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー」が登場。4輪それぞれを独立した個別のモーターで駆動するというドライブトレインで、新時代のGクラスの姿を示した。価格は2635万円。
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玉川 ニコ

玉川 ニコ

自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。

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