BMWの新世代BEV「i3」の姿からエンジン搭載の次期「3シリーズ」を予想する
2026.04.30 デイリーコラム一充電走行距離が900km以上のBEV
BMWは2026年3月18日、ノイエクラッセ(Neue Klasse)の第2弾モデルとなる「i3」を発表した。第1弾はSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)の「iX3」である。i3はBMWの基幹モデルである「3シリーズ」の伝統を受け継ぎつつ、「独自の機能を加えることで、その魅力を一層高めている」という触れ込みだ。
ノイエクラッセはドイツ語で“新しいクラス”を意味する。オリジナルのノイエクラッセは1960年代に中型スポーツセダンの「1500」を新しいクラスとして打ち出した際に用いられた。その1500が「2000」を経て後に3シリーズに発展する。BMWは「大きく変わる」というメッセージを込めて、再びノイエクラッセの名称を持ち出したのだろう。BMWの製品ラインナップが新しい時代に突入することを強調するために。
確かに、i3はいくつかの面で新しい。第1に、専用プラットフォームを採用した電気自動車(BEV)であること。第2に、新しいデザイン言語を採用していること。そして第3に、新しい情報表示および操作システムを採用していることである。
i3は(iX3も同様)第6世代のBMW eDriveテクノロジー、すなわち高圧電動システムを採用している。システム電圧は800V。急速(直流)充電は最大400kWに対応しており、10分間の充電で最大400km走行分に相当するバッテリーの充電が可能だと説明している。モーターはフロントとリアに搭載。「i3 50 xDrive」の場合、システム最高出力は469PS、最大トルクは645N・mだ。バッテリー容量は公表されていないが、WLTPのテストパターンによる一充電走行距離は第5世代eDrive比で30%増の900km以上と発表されている。
BMWは高速な充電と長い航続距離を実現するキー技術に、新開発したリチウムイオンバッテリーのセルを挙げている。第5世代は角型セルを採用していたが、第6世代は円筒形を採用した。直径46mm、高さ95mmのいわゆる「4695」サイズである。テスラが4680サイズの円筒形セルを使っているが、それより15mm背が高く、そのぶん大容量・高出力だ。
ノイエクラッセ(i3、iX3)では、この円筒形セルをモジュール化せず、直接パックに搭載するセル・トゥ・パック(CTP)の構造を採用することで、仕切りや配線などの部品を不要にして体積効率を高めている。第5世代の角型セル比では、体積エネルギー密度が20%向上しているという。また、バッテリーパックは車体の構造部材としても機能する。BMWはこれをパック・トゥ・オープン・ボディー構造と呼んでいるが、いわゆるセル・トゥ・ボディー(CTB)に近い考え方だろう。この構造は重量軽減とねじり剛性の向上に寄与している。
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目を引くFF的なプロポーション
BMWを象徴するキドニーグリルは受け継いでいるものの、i3ではまったく新しい解釈が採用されている。従来は大なり小なりのキドニーグリルがフロントマスクの中央部に鎮座していたが、i3のそれはフロントマスクいっぱいに広がる。ライティンググラフィックと呼応するような格好で、光のラインによりキドニーグリルが表現される。グリルは開口しておらず、冷却風を取り入れる役目は担っていない。
BMWは「シャークノーズデザイン」と呼んでいるが、グリルは道路側に向かって傾斜し、これによりスポーティーさを表現。ボンネットフードからフロントグリル先端にかけて彫りの深い谷としたのは、BMWのブランドエンブレムを目立たせるためだ。
サイドに目を転じると、21インチの大径ホイールと前後の短いオーバーハングに気づく。ボンネットはあまり長くなく、その証拠にFRらしさの指標とされるフロントアクスルセンターからフロントドア前端までのいわゆる「プレミアムレングス」は短く、FRというよりFF的なプロポーション。リアウィンドウはなだらかに傾斜してトランクリッドにつながっており、デッキ部分が短い。ゆえにBMWはi3のフォルムを2.5ボックスと呼んでいる。サイドのウィンドウグラフィックは後端で跳ね上がっており、1500で初めて採用された、BMW伝統の「ホフマイスターキンク」を受け継いでいる。
リアエンドはサイドでキックアップした形状のコンビネーションランプを持つ。フロントと同様に中央部が谷になっているのは、こちらもBMWのブランドエンブレムを目立たせるためだ。
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エンジン搭載の3シリーズは従来の改良型?
エクステリアと同様、BMWの新しいデザイン言語でまとめられたインテリアのハイライトは、「BMWパノラミックiDrive」と呼ぶ情報表示および操作システムである。表示系は3つの要素で構成。ヘッドアップディスプレイとBMWパノラミックビジョン、そしてセンターディスプレイだ。
パノラミックビジョンはフロントウィンドウの下端、左右のAピラーに挟まれた領域に広がっており、ここに各種情報を投影する。焦点距離は1.2mなので、前方に向けた視線を移動させた際の焦点の調節が、ステアリングのすぐ奥にあるコンベンショナルなメーターを見るのに比べて楽でストレスが軽減される、という考え方に立脚した設計だ。運転席の前のエリアは車速やADAS系など重要度の高い情報を表示し、中央と助手席側はマップやメディアプレーヤーなどインフォテインメント系の情報を表示するのが基本。これらの表示内容はカスタマイズが可能である。
17.9インチサイズのセンターディスプレイは視認性向上のため、またタッチ操作しやすいよう運転席側に傾いている。BMWは長らくロータリーコントローラーを採用していたが、ノイエクラッセで採用したパノラミックiDriveでは採用していない。iX3が展示されたジャパンモビリティショー2025のBMWブースでこの点を開発担当者に質問すると、「調査の結果、85%以上の人がタッチ操作を好んでいることがわかった。システムを最適化するなら、より直感的に使えるタッチ操作を優先すべきと考えた」との答えが返ってきた。
BEV専用プラットフォームに新世代の高圧電動システム、新しいデザイン言語、そして新しい情報表示・操作系の採用と、i3は初モノで埋め尽くされており、新しいクラスを名乗るにふさわしい内容を備えているといっていい。気になるのは、エンジンを搭載する3シリーズはどうなるのか、という点。i3はBEV専用プラットフォームをベースに設計されているので、このプラットフォームにエンジンを搭載するのは無理がある。
BEVへ移行する流れにブレーキがかかっている現状を考えると、エンジン車をなくしてBEVに一本化するのは危険。エンジンを搭載する3シリーズも残すと考えるのが自然だ。新しい3シリーズは、エンジンを搭載できるFRレイアウトのプラットフォーム(現行プラットフォームの改良型?)に、i3を特徴づけている新しいデザイン言語と新しい情報表示・操作系(BMWパノラミックiDrive)を適用して出してくるのではないか、と予想しておく。現行MINIのBEVとエンジン車の関係と似たようなものだ。
(文=世良耕太/写真=BMW AG/編集=櫻井健一)
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世良 耕太
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