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大英帝国復活なるか!? ―再起をもくろむ名門BSA そのブランド像と新型バイクの実態に迫る―

2025.08.15 デイリーコラム 河野 正士
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復活を遂げた栄光のバイクブランド

インド二輪大手、マヒンドラ傘下のクラシックレジェンズは2025年7月29日、英ロンドンでBSAモーターサイクルの新型車「Bantam 350(バンタム350)」を世界初公開。2025年はじめの英モーターサイクルショーで発表した「Scrambler 650(スクランブラー650)」と合わせ、2025年秋より欧州や北米、日本で順次発売すると発表した。

……などと書き始めたはいいが、webCG読者の多くにとっては、「BSAってなに?」といった感じだろう。あらためて、BSAはかつて世界的な栄華を誇った、英国のバイクメーカー/ブランドである。そのはじまりは1854年、14人の銃器職人が集い、銃器工場を立ち上げたのが起源とされている。1861年にはバーミンガムスモールアームズ(頭文字を取ってBSA)として会社登録がなされ、今日に受け継がれる社名が誕生する。

二輪車製造部門が発足したのは1903年のことで、1910年には最初の市販車を上市。モデルバリエーションは年々増加し、それに伴い会社の規模も拡大していった。1951年には同じ英国のトライアンフも傘下に収め、当時の工業大国たる英国を象徴する二輪メーカーに成長。エンジンバリエーションは単気筒から3気筒、排気量は35ccから750ccまでと、幅広い構成でもって世界の二輪市場を席巻した。しかし、日本車の台頭とともに徐々に業績は悪化。1973年に、BSAブランドは消滅した。

そのBSAが復活したのは2016年。印マヒンドラがクラシックレジェンズを設立し、商標管理などを行っていたBSAを買収。2021年に「Goldstar 650(ゴールドスター650)」を発表した。英国で設計/デザインされ、インドで生産されるその車両は話題となり、英国で販売を開始すると、その後に欧州、そして東南アジアへと販売網を拡大。2025年春からは、世界各国の二輪車を輸入するウイングフット社によって、日本にも導入された。冒頭でも述べたとおり、今回発表となったバンタム350およびスクランブラー650も、2025年秋ごろの日本導入を目指しているという。

発表会の会場より、壇上に飾られた「BSAバンタム350」(写真右)と「スクランブラー650」(同左)。
発表会の会場より、壇上に飾られた「BSAバンタム350」(写真右)と「スクランブラー650」(同左)。拡大
発表会にて、報道陣の質問に答えるクラシックレジェンズのアヌパム・タレジャCo-founders(共同創始者)。BSAの発表会で表に出てくる、顔役的な人物である。
発表会にて、報道陣の質問に答えるクラシックレジェンズのアヌパム・タレジャCo-founders(共同創始者)。BSAの発表会で表に出てくる、顔役的な人物である。拡大
最初の市販モデルは1910年に登場と、バイクメーカーのなかでも屈指の歴史を誇るBSA。一時は世界最大のバイクメーカーに上り詰めたが、英国製造業のご多分に漏れず、1970年代に不振に陥り、1973年にその歴史の幕を下ろした。
最初の市販モデルは1910年に登場と、バイクメーカーのなかでも屈指の歴史を誇るBSA。一時は世界最大のバイクメーカーに上り詰めたが、英国製造業のご多分に漏れず、1970年代に不振に陥り、1973年にその歴史の幕を下ろした。拡大
新生BSAの嚆矢(こうし)として、2021年に登場した「ゴールドスター650」。
新生BSAの嚆矢(こうし)として、2021年に登場した「ゴールドスター650」。拡大

世界中の人々をバイクに引き戻せ!

新型車の詳細を見ると、バンタム350は排気量350ccの水冷単気筒DOHC 4バルブエンジンを搭載する、ネオクラシックスタイルの中型車だ。同じくクラシックレジェンズが展開するJAWA Motorcycle(ヤワ モーターサイクル/欧州では「ジャワ」と発音されることが多いチェコ生まれのバイクブランド)の「JAWA350(ヤワ350)」とプラットフォームを共有している。

しかし、より古典的なテイストに振ったヤワ350に対し、バンタム350はクラシックというよりはオーセンティックなスタイルを目指したスタンダードモデルだ。クラシックレジェンズのスタッフたちは、ライバルは「ロイヤルエンフィールド・ハンター350」だと明言。前後17インチホイールを装着し、軽快なハンドリングとコンパクトな車体を目指したという。さらには「英国をはじめ、世界中の人々をふたたびバイクカルチャーに引き戻す」とプレゼンテーションで何度も語っていたことから、そのコンセプトもハンター350に類似している。

そもそもBSAバンタムという車両は、1948年に排気量123ccの2ストローク単気筒エンジンを搭載した「バンタムD1」からスタート。これは軽量コンパクトなスタンダードモデルで、以降1971年まで、排気量150cc、173ccとバージョンを増やしつつ、スクランブラーやスポーツモデルなど14の機種が累計35万台も販売されたという(厳密には、「正確なバリエーション数や販売台数は分からない」とのことだ)。当時は警察や政府の各機関、軍隊などに広く利用され、教習所の訓練車にも使われたことから、多くのライダーをバイクカルチャーに導いた。

新型車のバンタム350に課せられた使命は、そうした初代バンタムから受け継いだものであり、加えてBSAという英国最大を誇ったブランドが復活した現在においては、「新生BSAの普及」という大使命も帯びているのである。

BSAが新たなスタンダードモデルとして訴求する新型車「バンタム350」。
BSAが新たなスタンダードモデルとして訴求する新型車「バンタム350」。拡大
ヘッドランプにはユニオンジャックをモチーフにしたBSAのバッジが。
ヘッドランプにはユニオンジャックをモチーフにしたBSAのバッジが。拡大
エンジンは排気量334ccの水冷単気筒DOHC 4バルブ。空冷でSOHCの「ロイヤルエンフィールド・ハンター350」や「ホンダGB350」とは大きく異なるポイントだ。
エンジンは排気量334ccの水冷単気筒DOHC 4バルブ。空冷でSOHCの「ロイヤルエンフィールド・ハンター350」や「ホンダGB350」とは大きく異なるポイントだ。拡大
会場に飾られていた、ご先祖さまの「バンタムD1」。展示車は1949年のモデルだった。
会場に飾られていた、ご先祖さまの「バンタムD1」。展示車は1949年のモデルだった。拡大

今はやりのスクランブラーモデルもラインナップ

もう一台の新型車であるスクランブラー650は、先に発売されているゴールドスター650をベースにしたスクランブラーモデルだ。BSAゴールドスターといえば、1930年代後半から1960年代前半にかけて生産された、排気量350ccおよび500ccの単気筒エンジンを搭載した当時のスーパースポーツモデルだ。その歴史にあやかり、クラシックレジェンズ社が2021年にまったく新しいゴールドスター650を世に問うたのは、既述のとおりである。

新たに開発された排気量652ccの水冷単気筒DOHC 4バルブエンジンは、シングルながらツインスパーク、ドライサンプと凝った技術が取り入れられており、同じく新開発のスチールパイプ製ダブルクレードルフレームに搭載。ゴールドスターと聞いて多くの旧車ファンが想像する、往年の低く構えたセパレートハンドルとは異なり、リラックスしたポジションがとれるバーハンドルとローシートがセットアップされていた。

スクランブラー650は、そのゴールドスター650のプラットフォームを流用しながら、英国のデザイン/設計チームにインドのエンジニアも加わって開発されている。スクランブラースタイルに合わせて、フロントホイールを19インチ化し、ハンドル形状や前後サスペンションも変更。シート高はベース車から38mmアップの820mmとなり、車体全体のサイズ感も一回り大きくなっている。

今回の発表会は、英国のバイクカルチャーの新たな発信地である、ロンドン・ショーディッチにあるカフェ&ショップ「Bike Shed(バイクシェッド)」で開催された。発表会場には新型車のバンタム350/スクランブラー650に加え、英国の「ナショナルモーターサイクルミュージアム」から運ばれた初代バンタムD1や、175ccの2ストロークエンジンを搭載した「バンタムD14/4」、500ccの単気筒エンジンを搭載した「B34ゴールドスター スクランブラー」なども展示されていた。

既に日本市場では、トライアンフが人気を博し、ロイヤルエンフィールドも伸長している。そこにBSAの2機種が導入され、このブランドの認知が高まれば、ブリティッシュバイクのカルチャーがさらに広がりをみせることだろう。日本の道でバンタム350とスクランブラー650を見かけるようになるのが、今から楽しみだ。

(文=河野正士/写真=河野正士、BSAモーターサイクル/編集=堀田剛資)

こちらも新型車の「スクランブラー650」。「ゴールドスター650」をベースとしたスクランブラーだ。
こちらも新型車の「スクランブラー650」。「ゴールドスター650」をベースとしたスクランブラーだ。拡大
エンジンの側面には、メーカー/ブランドの出自を表すライフルのロゴが。
エンジンの側面には、メーカー/ブランドの出自を表すライフルのロゴが。拡大
発表会場となったライダーズカフェ「バイクシェッド」の様子。屋内には歴代のBSAのモーターサイクルが飾られていた。
発表会場となったライダーズカフェ「バイクシェッド」の様子。屋内には歴代のBSAのモーターサイクルが飾られていた。拡大
1961年モデルの「B34ゴールドスター スクランブラー」。
1961年モデルの「B34ゴールドスター スクランブラー」。拡大
ラインナップの体裁が整い、本格的なブランド再生の兆しがみえてきたBSA。今後の動向が楽しみだ。
ラインナップの体裁が整い、本格的なブランド再生の兆しがみえてきたBSA。今後の動向が楽しみだ。拡大
河野 正士

河野 正士

フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。

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