ロータス・エメヤR(後編)

2025.09.04 あの多田哲哉の自動車放談 多田 哲哉 長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。
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驚き恐れるべき存在

ロータス・エメヤは、レーシングカーを思わせる加速性能に、電気自動車(BEV)に期待される環境性能、そして「アルファード/ヴェルファイア」に迫るほど広い後席、そしてエンターテインメントやマッサージ機能……と富裕層のクルマに求めるすべてが詰め込まれたクルマだと、多田さんは評する。しかも、そうしてあらゆるものを両立ならぬ“全立”させたうえで、一台のクルマとしてそれなりにまとまっていることに、多田さんはさらに驚いたという。

「優秀なレベルのテストドライバーがきっちり煮詰めた感じが、すごく伝わってきます。同じ中国生産のBEVでも、以前に乗ったBYDはちゃんとしたテストドライバーがまだいないなって感じがしたのですが、エメヤは違います」

エメヤはいわば“究極の万能車”といった印象だが、そうしたスタイルも走りも燃費も実用性もすべてで80点以上を目指すのは、本来は日本の自動車メーカーの得意技だった。

しかし、多田さんが手がけた「86」や「スープラ」は、そうした昔ながらの日本車を否定した一点突破型のクルマづくりで、スポーツカーの楽しさや気持ちよさを目指したはずだ。

「はい、私は、あれもこれも中途半端に目指したクルマは、ロクでもないものにしかならないと思っていました。余分なものを捨てることこそ面白いクルマをつくることと思っていたのですが、エメヤでそれがひっくり返されたことが最大の衝撃なんです」

「エメヤはすべてを欲張りに詰め込んでいるのに、すべてがそこそこレベルが高くて、明らかにダメなところがない。もちろん、細かいことを突っ込めば言えることはありますが、これだけ脈絡のない方向性を無理やりブチ込んで、それがすべてある程度のレベルに達しているというのは、私に言わせれば驚異であり脅威。私が培ってきたクルマづくりの常識が覆されてしまった思いです」

 
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