新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.09.04 デイリーコラム1978年に登場した初代「プレリュード」
長いティザー期間を経て、ついに正式発表となった新型「プレリュード」は通算6代目。2001年9月に生産終了した5代目から数えて24年ぶりの復活となる。そんな新型プレリュードのデビューに先立って、ホンダコレクションホールが動態保存する歴代プレリュードを集めたメディア試乗会が催された。
もっとも、どれも今や歴史的遺産級の貴重な個体ということもあり、本来はカートやミニバイク向けとなるモビリティリゾートもてぎの北ショートコースで、一台あたり数周ずつ、先導車つきでのあくまで“チョイ乗り体験会”という雰囲気だったことをお断りしておく。ただ、筆者は幸運にも、初代からデビュー順に乗ることができた。というわけで、最初にステアリングを握ったのは、1978年11月発売の初代プレリュードである。
その初代のデビュー当時は、トヨタの「セリカ」、日産の「シルビア」に「フェアレディZ」、マツダの「コスモ」などなど、国産クーペがたくさんあった。そんななかで、ホンダは1974年11月に「145クーペ」を生産産終了してからクーペ不在の時代が続いていた。その沈黙を破るように発売したのがプレリュードだったわけだ。
初代プレリュードは、1976年に登場した初代「アコード」の主要メカを多数活用。1.8リッター直4のCVCCエンジンを搭載した。3段ATもあったが、試乗車は5段MT。当時はめずらしかったパワーステアリングも備わっていたものの、実際の操舵感は、今の感覚だとそうとは思えないくらいに重い。加速もかなり物足りないが、こうして走らせていただくだけでも涙が出る。そして、初代プレリュードといえば……の日本初の電動サンルーフは、試乗車にもしっかり装着されていた。しかもちゃんと動いた。さすがである。
初代プレリュードは1979年から北米や欧州などの海外にも輸出。1982年11月に2代目にバトンタッチするまでの4年間で、31万台あまりがつくられて、国内販売は累計4万台強だった。
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リトラクタブルヘッドランプを採用した2代目
2代目は初代からすべてが刷新された。担当デザイナー氏によると、初代は企画時に想定したほどには売れなかったことと「アメリカで、若い女性が通勤などで使う“セクレタリーカー”に分類された」ことが、ホンダとしては不本意だったらしい。
そこで2代目は、フロントに当時としては異例のダブルウイッシュボーンサスペンションを採用して、1.8リッター直4エンジンもデュアルキャブの12バルブ(気筒あたり3バルブ)を新開発。さらには、日本車初のABSも用意するなど(当時のホンダでの呼称はALB)、高度なメカニズムを満載したのだった。デザイン面でもダブルウイッシュボーンを生かして、にわかにはFFとは思えないほど低いフロントフードにリトラクタブルヘッドランプを組み合わせて、クルマ好きの男性が乗りたくなる本格クーペを目指した。
そんな2代目の運転席に座ると、開放感……というか、腰から上がすべてさらされているような開けっ広げな乗車感覚が、いかにも1980年~1990年代前半のホンダ車らしい。試乗車は当時の憧れだった最上級「XX」グレードで、パワステもついていた(他グレードはノンパワステだった)が、今の目で見ると操舵力は軽くない。
ホンダのもくろみどおり、本格的な内容が評価された2代目は、1987年春までの4年半の累計生産も約63万台と初代から倍増。とくに国内累計販売は日本経済の成長とも相まって、先代の4倍増となる約16万7000台にふくれあがった。
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プレリュード史上最も台数を伸ばした3代目
続く3代目は1987年4月に登場。2代目が空前のヒット作だっただけに、3代目は見るからに、いわゆる“キープコンセプト”である。ただ、1980年代終盤から1990年代初頭といえば、「セルシオ」「スカイラインGT-R」「NSX」など、日本車が名実ともに世界トップカテゴリーに挑戦しはじめた時代でもある。当時の夢の先端技術だった4輪操舵(4WS)も国産各社がこぞって手がけるようになり、リアサスごと動かす日産の「HICAS」に続いて、ホンダはこの3代目プレリュードで、世界初の“本物の4WS”をうたった。
他社の4WSの多くが速度感応式だったのに対して、3代目プレリュードのそれは舵角応動式。「高速レーンチェンジでは安定する同位相、交差点や駐車場では小回りが利く逆位相」という2つの動作を、完全メカニカルで実現するための策だった。具体的には、ステアリングの切りはじめは高速走行を想定して後輪も同位相に切れる。操舵角120度付近で最大1.5度の同位相となるが、さらに切り込んでいくと後輪舵角は減少。操舵角230度付近で中立まで戻ると、そこから先は逆位相となり最大5.3度まで切れた。
3代目では直4エンジンも2リッター化。試乗車は、DOHC+電子制御燃料噴射のハイパワー版(145PS)を搭載する「2.0Si」で、もちろん4WS付き。実際、2代目より格段にパワフルになったが、舵角によって挙動が変わる4WSはやはり独特。当時を知る関係者は「2代目から3代目に乗り換えたお客さんから“車庫でお尻をぶつけた”というクレームが何件かあった。逆位相では曲がるときに、テールが少し外に出ちゃうんです」と語ってくれた。
1987年~1991年という日本のバブル景気の真っただ中(日経平均株価のピークは1989年12月)に販売された3代目は、2代目を超える17万5000台以上の国内累計販売を記録。いっぽうで、最大のライバルとなった5代目のS13型「日産シルビア」が、1988年5月~1993年10月に国内で売り上げた約30万台にはおよばなかった。
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4代目で大きくコンセプトを変更
1991年9月に発売となった4代目は、2、3代目とはコンセプトを大きく変えた。そこには「キープコンセプトで2世代続けると、飽きてしまう」というホンダの特異体質(?)に加えて、3代目の国内販売がプレリュードとしては過去最高なのにシルビアには負けたこと、そしてさらに第2期F1がセナ人気のピークを迎えて、NSXより手ごろな本格スポーツモデルが求められていたことなども影響した。
スタイリングはそれまでの水平基調とは一転したウエッジシェイプで、室内も囲まれ感のあるものになった。技術的には2.2リッター化された直4エンジンと電子制御4WSが売りだったが、今の目で見ても剛性感が高く、プチ体験では物足りないほどのポテンシャルを感じさせた。ただ、当時はクーペの人気が下降しはじめ、1991年9月から1996年10月の5年間で4代目の国内販売は約8万5000台に終わった。頼みの北米販売でも10万台を切るまでに減少した。
そして、プレリュードの歴史にいったん幕を引くことになるのが、1996年11月から2001年9月に生産された5代目である。プラットフォームは先代改良型だったが2.2リッター直エンジンはさらにパワフルとなり、最上級の「タイプS」には、従来の4WSのかわりに「三菱ランサー エボリューションIV」の「AYC(アクティブヨーコントロール)」に続くトルクベクタリング機能「ATTS(アクティブトルクトランスファーシステム)」がFF車として初採用された。
その強力な旋回性能の片りんは今回も感じられたが、あからさまに過去の栄光=2、3代目への回帰を思わせるデザインに、開発当時の迷いがうかがえる。5代目の国内累計販売は1万4000台弱にとどまり、直接的な後継モデルがつくられることもなかった。
新型プレリュードは最初からプレリュードと呼ばれることが決まっていたわけではなく、そのデザインに歴代プレリュードとのつながりは感じない。しかし、過去の5世代のプレリュードは、そのクルマづくりは微妙に揺れつつも、特徴的な台形サイドウィンドウグラフィックだけは守られていたんだな……と、集められた歴代プレリュードを見て気がついた。
(文=佐野弘宗/写真=本田技研工業/編集=櫻井健一)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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