もうすぐ明らかになる新生アルピナの全容 でもその答えは見えている?
2026.01.22 デイリーコラムハウスブランド化で明確になる個性
新年早々、ミュンヘンから発表があった。「BMW ALPINA(アルピナ)、新しいエクスクルーシブなBMWグループのブランドとして誕生」というタイトルの公式発表である(参照)。これまでも報道はされてきたけれど、新しいロゴマークを見せられると“いよいよ”という実感が湧いてくる。1965年にはじまり、2025年の年末までちょうど60年続いたボーフェンジーペン家によるアルピナは、商標の移管とともに正式に終わりを迎えたのである。
では新生BMWアルピナはどのようなモデルをリリースするのか? さまざまな臆測が出ているが、現在確かなことは、フォルクスワーゲンで超低燃費車「XL1」(参照)のデザインを手がけ、ポールスターを経て2024年にBMWにやってきたマクシミリアン・ミッソーニ氏が新生アルピナのデザインを手がけることくらい。
大方の予想はレーシングに由来する躍動的なBMW Mに対し、落ち着いて上質なBMWアルピナというこれまでのすみ分けがより具体的になるというもの。筆者もBMWのサブブランドになるBMWアルピナの大まかな収まりどころとしては、これで正しいと思っている。
一方でBMWアルピナのキャラクターは、従来とはまったく違うものになるという確信もある。筆者はE36の時代から新車のアルピナに触れ、歴代のモデルもひと通り経験し、一昨年はドイツでアンドレアス・ボーフェンジーペン社長にも直接話を聞き、彼らのクルマづくりの特殊性をこれまで以上にはっきりと理解できたと感じている。ここからはそれらの経験をもとに、わかったさまざまな“違い”について述べていきたいと思う。
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商標移転の答えはBEVにあり(?)
ちょうど60年でその幕を閉じたアルピナに関する都市伝説はあまたあり、そのなかのひとつが「ホワイトボディーの段階で独自にボディーを補強していた」というもの。これはアンドレアス社長によれば「ロードカーではNO」だという。あくまでBMWのモノコックの強度を鑑みて、それを最大限に生かすモデルづくりをしていたのである。しかも近代のアルピナ車はBMWインディビジュアル(ランツフート工場)の生産ラインでアルピナからの注文通りに組み立てられ、内装の仕上げなどをブッフローエでやっていた。つまり物理的な製造の多くはこれまでもBMWが請け負っていたわけで、それが今後も継続できないはずはないだろう。
一方でBMWの生産ラインのキャパシティーが、アルピナの1700台程度といわれる限られた生産台数に影響を与えていたので、今後その自由度が増すこともあるはず。と同時に、従来のアルピナ車とは異なり、必要のない生産途中の移動もなくなるので、そのぶんのコストや時間も省かれることになる。
だがそれらは、新生BMWアルピナが“現状維持”をした場合の話であって、現実はそうはならないだろう。エンジンに最後までこだわりたいBMW Mに対し、上質なドライブフィールを売りにするアルピナブランドがBMWのものになったのだから、早々とBEV専業に転身する可能性だって否定できないのである。
BEVには興味がなかったのか実際にアンドレアス社長に聞いたところ、「われわれはウサギになるつもりはない(BEVは瞬間的には速いが、度々充電でストップする必要がある)」とひとこと。今回の商標譲渡のきっかけが“電動化”にあったことをうかがわせていたのである。
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新旧アルピナのキャラ変の必然
反対に、大メーカーのオーガナイズだからこそできなくなることも多々あるはず。それは、繊細で手間のかかるブッフローエのクルマづくりそのものだ。
既存のモノコックに独自スペックのエンジンを組み込み、その大パワーに対応するためBMWのパーツリストにある最大容量のクラッチやデフ、冷却系を盛り込み、その装着に必要な最低限のパーツを自製する。そこで発生する“違和感”を、フルアクセスを許されたECUのプログラミングや1種類の専用開発タイヤによって中和させつつ、ピンポイントのセッティングを成立させる。そんな一般的な自動車メーカーとは異なる開発手法が、ブッフローエの作品にアルピナマジックと呼ばれる動的質感を授けていたのである。
見えない部分に多くのコストと知見が投入され、最高巡航速度に強いこだわりがあったブッフローエのアルピナ。これに対し、「ロールス・ロイスとBMWの中間の価格帯に投入される」ともいわれる新生BMWアルピナは、見た目の高級感にも十分なコストを割くことで、多くの人にとってわかりやすいモデルになるはず。今後もそのプレミアム性やパフォーマンスは多くの人を満足させるはずだが、それでもメーカーとしての規模や立場、考え方に違いがある以上、新と旧のキャラクターはまったく違うものにならざるを得ない。
というか、これまでのアルピナを愛してきた者としては違うクルマになってくれないと、AIによって生成された松田優作を見続けている気がして、しっくりとこないという思いもある。それと同時にBEVになったBMWアルピナにも大いに興味はある。その包括的な答えは、遠くないうちに提示されるはずだ。
(文=吉田拓生/写真=アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペンGmbH & Co、BMW/編集=櫻井健一)
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