日産リーフB7 G(FWD)
ジンベイザメを追いかけて 2026.03.20 試乗記 民生用電気自動車(BEV)のパイオニアである「日産リーフ」が3代目へとフルモデルチェンジ。シャシーや電池、モーターなどすべての要素を刷新し、もはやスペック上は何の不安もない水準にまで進化している。360km余りのドライブで実際のところを確かめた。主な進化点は3つ
日産リーフの第3世代は、これならEVライフを送れるかも……という想像力の翼をグッと広げることに成功している。というのが新型「リーフB7 G」に試乗してみての、筆者の率直な実感である。
第1に一充電走行距離(WLTCモード)が先代よりグッと長くなっている。たったの200kmだった、2010年発売の初代リーフとは比べるも愚かだけれど、思い出すなぁ、レンタカーに導入された初代に乗りに沖縄まで行ったことを。走り始めるや、V12のロールス・ロイスもかくやのスムーズな駆動系と静粛性、それと乗り心地のよさに感嘆する一方、楽観主義の筆者をもってしても、走行距離70kmほどでコンビニの駐車場に設けられた充電スポットに駆け込んだのではなかったか。ジンベイザメを見ようと美ら海水族館を目指していたのに……諦めた。
あれからおよそ15年を経た今回、新型リーフB7 Gに筆者が乗り込んだのは東名高速の鮎沢PAで、トリップメーターは136.7kmを刻んでいた。これならジンベイザメまで楽勝だ。眼前のスクリーンは、電気エネルギーの残量は66%で、365kmも走行できる、と表示している。新型リーフの最上級グレードのB7 Gは、WLTCモードで685kmの一充電走行距離を誇る。
第2に充電時間の短さだ。東名高速の裾野IC近くにある出力50kWの急速充電機で、早めの充電を試みたところ、早春の寒い雨の日だったけれど、20分でエネルギー残量は56%から85%に、航続距離は331kmから505kmに延びた。
第3に、見た目のカッコよさ、すなわちデザインである。クロスオーバーEVを一応名乗ってはいるものの、空力的な5ドアハッチバックボディーはシンプル&クリーンで、こざっぱりとしている。アウトドアやオフロードを思わせる要素は、18インチもしくは19インチの大径ホイールぐらいで、最低地上高も135mmとさほど高くもない。何と何のクロスオーバーなの? と聞きたくなるほどアーバンな都会派、って同じ意味ですけれど、のエクステリアがSUV風のライバルたちとの違いを際立たせている。
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適度な未来感がいい感じ
プラットフォームはCMF-EVなるルノー・日産・三菱アライアンスで開発された車台を使っている。1クラス上の「アリア」と基本的に同じだけれど、ホイールベースはアリアの2775mmに対して、新型リーフは2690mmと85mm短い。先代リーフと比べても10mm短く、全長は120mmカットされている。前輪駆動ながらオーバーハングが短めなのは、EV専用プラットフォームだからであり、おそらくはモーターとインバーター、減速機を一体化した新開発のパワートレイン、別名eアクスルのおかげもあるはずだ。
空力を意識したデザインにより、Cd=0.26と立派な値を誇る。タマゴ型だけれど、後席も含め、Cセグメントのハッチバックとして不満のない居住空間、荷室容量を確保している。
外観同様、コックピットのデザインもシンプル&クリーンで、未来すぎていないところが筆者なんぞは好ましいと感じる。とりわけダッシュボードに張られているファブリック素材が家庭的な温かさを醸し出しているように思う。
フロアに電池を敷き詰めているため、着座位置は若干高い。というのが運転席に座っての第一印象である。ノーズが下がっているため、ボンネットの先端が見えないのは1970年代の「シトロエンGS」と同じだ。スタートボタンを押すとスクリーンに「NISSAN」の文字が音楽とともに浮かび上がる。ダッシュボード中央の左から「P」「R」「N」「D」と並んだスイッチのひとつであるDを押す。いざ発進。
自然に使える大トルク
鮎沢PAから乗り始めたから、いきなりの高速走行となったわけだけれど、ファーストインプレッションは、「これはいい」「相当いい!」というCMほどではなかった。鈴木亮平気分で期待が大きすぎたのと、同クラスの某フランス車から乗り換えたためだ。おそらく。フランス車はやっぱり乗り心地がいいのである。235/45R19の「ダンロップeスポーツマックス」なるEV専用の大径タイヤが存在を主張して、乗り心地にフラット感が足りない……ように思えた。直前まで乗っていたフランス車は同じ19インチでも205/55のミシュランを履いていたのだった。
EVというと、電池をフロアに敷き詰めていることから生まれる、フロアの高い剛性感が特徴だけれど、新型リーフはその点、あまりEVらしくないようにも感じた。
安心してください。一般道では悪くなかった。富士の裾野周辺の舗装のツギハギ路面でも、前:ストラット、後ろ:マルチリンクのサスペンションがうまいこといなして、直接的なショックを伝えない。フロアの剛性感も十分と思えた。直前まで乗っていたクルマの影響はでかい……。お騒がせしました。
「スタンダード」モードだと2t近い車重を意識させるけれど、ドライブモードを「スポーツ」に切り替え、ガバチョとアクセルを踏み込むとモーターの駆動力が瞬時に発揮される。355N・mという最大トルクが草食系カピバラ的外観に似合わぬ豪快な加速をもたらす。235/45R19サイズは機能としても必要なのだ。3.5リッターV8級の大トルクの前輪駆動なんて内燃機関では考えられないけれど、日産はモーターを巧みに制御することで実現している。ステアリングフィールも自然で、大トルクを意識させない。
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普及グレードはもっといいかも
3代目リーフで重要なことは、初代、2代目以上に、実用的な小型EVに近づいたことである。価格は試乗車だとオプション込みで700万円と、少々お高いものの、「B5」なら400万円代で手に入る。政府&自治体の補助金もある。
最後になりましたが、新型リーフの車種体系についておさらいしておくと、スタンダードはB5、高性能版はB7と呼ばれる。B5はモーターの最高出力が177PS、最大トルクは345N・mで、電池容量は55kWh。一方のB7はモーターが218PS、355N・mに、電池容量は78kWhに強化されている。一充電走行距離はB5の19インチ仕様で469kmと、先代リーフの「e+」の458kmを上回っている。
ちなみにライバルの「トヨタbZ4X」の標準型は電池容量が57.72kWhで航続距離544km、高性能版が74.69kWhで最長746km。bZX4はホイールベース2850mm、全長4690mmと、ちょっと長いけれど、CセグメントのEVは航続距離が標準版で500km以上、高性能版で700km以上を競う時代になっている。EVの進化は速い。
筆者的に注目したいのは、新型リーフB5の18インチ仕様である。出力はB7比で31PS控えめながら、トルクは345N・mと10N・m小さいだけで、車重は100kg軽い。タイヤは215/55だし、価格も含め、今回の試乗でちょっと気になったところが、なんにもなさそうなスペックだからである。「これはいい」「相当いい!」のはこっちだ……と思うな。あくまで個人の想像ですけれど。
(文=今尾直樹/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=日産自動車)
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テスト車のデータ
日産リーフB7 G
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4360×1810×1565mm
ホイールベース:2690mm
車重:1920kg
駆動方式:FWD
モーター:交流誘導電動機
最高出力:218PS(160kW)/4400-1万1700rpm
最大トルク:355N・m(36.2kgf・m)/0-4300rpm
タイヤ:(前)235/45R19 95V/(後)235/45R19 95V(ダンロップeスポーツマックス)
一充電走行距離:670km(WLTCモード)
交流電力量消費率:137Wh/km(WLTCモード)
価格:599万9400円/テスト車=696万5640円
オプション装備:ボディーカラー<ルミナスターコイズ/スーパーブラック 2トーン>(7万7000円)/100V AC電源<1500W、センターコンソールボックス1個、ラゲッジ1個>(6万6000円)/オーバーヘッドコンソール<サングラスホルダー付き>+ルーフレール+調光パノラミックガラスルーフ<遮熱機能付き>(22万5500円)/後席ヒーター付きシート+リアヒーターダクト+バッテリーヒーター(9万1300円)/ステアリングスイッチ<プロパイロット2.0>+アドバンスドアンビエントライティング<マルチカラー>+ダブルシャークフィンアンテナ+プロパイロット2.0+プロパイロット緊急停止支援システム<SOSコール機能付き>+ワイパーデアイサー+リアLEDフォグランプ<中央>(40万9200円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ1面+フロントドアガラス2面 はっ水処理>(1万3640円)/フロアカーペット(5万0600円)/フレキシブルラゲッジボード(3万3000円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:5620km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:363.1km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.9km/kWh

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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