ランボルギーニが新型BEVの開発・導入を撤回 その理由と目的を探る
2026.04.16 デイリーコラムランボルギーニ第4のモデルに何があった?
アウトモビリ・ランボルギーニの会長兼CEO、ステファン・ヴィンケルマン氏にインタビューする機会を得た。ランボルギーニは、2025年に1万0747台の新車販売台数を記録。日本でも992台がカスタマーにデリバリーされている。
その好調な数字を達成した最大の理由は、「レヴエルト」や「ウルスSE」といったモデルが持つ新車効果にあることは間違いない。2026年にはこれまでの「ウラカン」に代わる「テメラリオ」の販売も本格化するから、ラインナップがすべてプラグインハイブリッド車(PHEV)化されたランボルギーニの販売がさらに大きく加速することは確かなところだろう。
しかし、すでにカスタマーの期待は、第4のモデルの登場に向かっている。ランボルギーニは2023年に、電気自動車(BEV)である2+2 GTの「ランザドール」をコンセプトカーとして発表。多くのスーパーカーメーカーがBEVの開発を進めるなか、ランボルギーニもまた、そのテクニカルトレンドを追う姿勢をみせていた。
だが今回のインタビューでヴィンケルマン氏から語られたのは、BEV戦略に対しての大幅な方向修正だった。これまで「Direzione Cor Tauri(ディレッツィオーネ・コル・タウリ)」の名のもと、プロダクトの電動化はもとより、本社工場やサプライチェーンに至るまでのCO2排出量削減に取り組んできたランボルギーニの大きな目標のひとつであり、また象徴ともいえる存在だった第4のモデル=BEVに、いったい何が起こったというのだろうか。
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BEVの発表・発売をキャンセル
ランボルギーニの電動化戦略についてヴィンケルマン氏は、「私たちはこれまで、ディレッツィオーネ・コル・タウリ戦略を進めるなかで、当初からの計画どおりに、レヴエルト、ウルスSE、そしてテメラリオという全モデルをPHEV化するという、重要なフェーズを完了しました。PHEVは現在のランボルギーニにとって最良の技術的なソリューションといえるでしょう。これらのPHEVに続いて、2029年までには市場に第4のモデルを投入し、それをBEVとすることを発表していましたが、近年の市場の状況などを慎重に検討した結果、その方針を見直すことにしました。第4のモデル、そして次世代のウルスにおいても、それはBEVではなくPHEVとなるでしょう」と語った。
さらに「ランボルギーニではBEVを開発し、生産する準備はすでに整っていますが、残念ながら市場はそうではありません。BEVの普及は世界的にも、そしてセグメント全体でも鈍化の傾向にあり、それは特にわれわれのようなカテゴリーでは顕著な傾向にあります。そのため第4のモデルは、やはりPHEVとすることを決断しました。したがって近い将来、ランボルギーニがBEVを投入する計画はありません。この決定はランボルギーニの責任において行ったものです。ボディーデザインは2ドアの2+2のほかにウルスよりもコンパクトなSUVや、ランボルギーニ車のイメージには合わないスタイルも検討したのですが、最終的には車高の低いクラシカルなデザインを選択しました」と述べた。
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内燃機関の開発は継続
ランボルギーニの創始者であるフェルッチオ・ランボルギーニが最初に望んだのは、高級で高性能なGTを生産することだった。第4のモデルはその意思を、最新の技術で具現したものといえるのだろうか。
ヴィンケルマン氏は、「確かにそのとおりです。歴史のなかで私たちは多くのGTを手がけてきました。近年のランボルギーニのラインナップに欠けていたものがあるとすれば、それはまさにGTだったのです。このニューモデルをドライブしたとき、カスタマーはこれまでのモデルにはない新しい感覚を体験することになるでしょう。第4のモデルはレヴエルトやテメラリオのようなスーパースポーツとは異なる存在になります。スタイルのみならず、走りのキャラクターや機能面においても特別な個性を持つモデルです。車名はまだ決定していませんが、ランザドールを使う可能性は、私自身としては高いと考えています。すでに一定のインパクトを持ち、そしてランボルギーニの伝統であるファイティング・ブルの名前でもあるからです」と言う。
内燃機関についてランボルギーニは、どのように考えているのか。
「内燃機関を進化させ、生産を続けることに対しての投資は今後も変わることはありません。当社の研究開発部門には、電動化やバッテリー技術のほかに将来に向けて3つの重要な柱があります。軽量素材とエアロダイナミクス、そして内燃機関の継続的な開発です。これらは私たちにとって十分に実行可能な成長領域です」と、内燃機関の開発継続の重要性を強調した。
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フェラーリはBEVの投入を発表
BEV戦略の見直しを決断したランボルギーニと対照的なのは、2025年10月9日に本社のあるイタリア・マラネロで「キャピタル・マーケッツ・デイ」を開催し、ここで新型BEVのプラットフォームと主要なメカニズムから構成される「エレットリカ」を投資家に初公開したフェラーリだ。先日はそのインテリアの一部デザインとともに、車名が「ルーチェ」となることを発表している(参照)。
そのフェラーリは2022年に「BEVの販売比率を2030年に全モデルの40%とする」としていたが、それをエレットリカの発表とともに20%へと下方修正。ランボルギーニのヴィンケルマン氏が指摘したとおり、特にプレミアムブランドにおいてはBEV市場の拡大が鈍化の傾向にあること、そして実際に発表されたエレットリカの性能が、投資家の期待値を超えるものではなかったことなども理由のひとつとなったのだろう。
この日フェラーリの株価は2015年にニューヨーク証券取引所に上場して以来、一日あたりとしては最大となる約15%もの下落を記録することになる。現在でもその数字はエレットリカ発表以前の水準には戻っていない。
スーパースポーツブランド、あるいはプレミアムブランドにとって、BEVというフィールドにはこれからどのような未来が待っているのだろうか。ヴィンケルマン氏はインタビューのなかでこのように語っている。
「私たちは、これからの10年に向けた戦略も進めています。そのなかで重要なのは世界で何が起きているのかを的確に理解することです。カスタマーはランボルギーニに何を求めているのか。そして私たちは何を提供することができるのか。各国の政策決定がどのように進んでいるのかを常に注視することも必要です。それこそがわれわれが未来へと進むための姿勢といえるのではないでしょうか」
(文=山崎元裕/写真=アウトモビリ・ランボルギーニ、フェラーリ/編集=櫻井健一)
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山崎 元裕
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