ラジオもナビも使えない? トヨタが導入する米国生産車「タンドラ」と「ハイランダー」の特徴を探る
2026.04.09 デイリーコラム完璧な日本向け仕様にはなっていない
トランプ大統領のゴリ押しによって(?)2026年2月16日に施行された「米国製乗用車の認定制度」を活用し、トヨタの米国工場で生産された「タンドラ」とSUV「ハイランダー」が同年4月2日に日本国内で発売された。当面は東京・芝浦の「トヨタモビリティImport」でのみ商談が可能(予約制)となっており、全国での発売は今夏以降の予定であるという。また、あわせて導入検討が進められている「カムリ」については「準備が整い次第、販売を開始する予定」とのことだ。
このたび導入されたタンドラおよびハイランダーの詳細は既報(参照)のとおりだが、要するにタンドラは全長5.9m超のフルサイズピックアップトラックで、ハイランダーは全長4.9m超の3列シート7人乗りSUVである。
ラインナップとしては、タンドラは最上位のラグジュアリーグレードである「1794 Edition」のみを輸入。Toyota Motor Manufacturing, Texas, Inc.(略称TMMTX=テキサス工場)で生産される米国仕様車で、ハンドル位置は当然ながら左。国土交通省から「保安基準に適合する」とみなされている仕様ではあるが、下記の点が一般的なトヨタ車の国内仕様とは異なっている。
- DCM(データ通信モジュール)は、アメリカ仕様のため作動せず。
- マルチインフォメーションディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ(ナビ連動)は、地図データがアメリカ仕様のため、ナビ連動機能は作動しない(※メーター、ヘッドアップディスプレイはkm表示)。
- Toyota Safety Senseの「ロードサインアシスト」は、標識が日米で異なるため、作動しない場合がある。
- マルチメディア関連は、通信環境が日米で異なるため、ソフトウエア更新サービスと車載ナビ操作、ユーザープロフィール設定、販売店情報設定、ラジオの利用ができない(ただしApple CarPlay、Android Autoは利用可能)。
- マルチインフォメーションディスプレイとマルチメディア関連に表示される言語はすべて英語(ただしApple CarPlayとAndroid Auto、Miracast使用時は日本語表示される)。
- Apple CarPlayとAndroid Autoの接続は有線接続のみ利用可能。
- エアコンの温度表示は「華氏:°F」(ただしメーター内の外気温表示は「摂氏:°C」)。
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導入には政治的な配慮があった?
新制度により輸入が開始されたもうひとつのモデルであるハイランダーも、日本向けに輸入されるのは「リミテッド ZRハイブリッド」のモノグレード。こちらは米国アリゾナ州のToyota Motor Manufacturing, Indiana, Inc.(略称TMMI=インディアナ工場)で生産されるニュージーランド仕様だ。
そのためハンドル位置は右となるが、左ハンドル車のタンドラと同様に「ナビ連携機能は作動しない」「車載ナビ操作やラジオの利用等はできない(有線接続でのApple CarPlayとAndroid Autoは利用可能)」「表示される言語は英語(Apple CarPlay等使用時は日本語表示)」など、一般的なトヨタ車の日本仕様とは異なる部分が多い。とはいえニュージーランドは温度表記に「摂氏」を採用しているため、エアコンの温度表示は普通に「℃」となっている。
トヨタの経営層の本心など、筆者は知るよしもない。だが輸入される2モデルの内容が「ほぼ現地使用のままである」ということと、「月販基準台数がきわめて少ない(全国展開時でタンドラが80台/月、ハイランダーが40台/月)」ことから考えると、おそらくは「タンドラとハイランダーを日本において本気で売りまくるつもりなどさらさらない。とはいえトランプ氏がうるさいから、『わかりました、米国車を輸入いたします』という“形”を、アメリカのためではなく、あくまでも日本国のために整えた」というあたりが、トヨタの本音なのだろう。
この表現が適切であるかどうかはさておき、筆者が本件において感じるのは「取りあえず感が強いなぁ」ということである。
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本物感にグッとくるユーザーを狙う
だが本件に関しては、前述した「取りあえず輸入します感」こそが、むしろ物事を良い方向へ導いたのではないかと思っている。
トヨタのタンドラやハイランダーあたりを本気で欲しいと思っているユーザーは、もちろん「サイズ」や「居住性」「積載量」などの実益面も求めているのだろうが、それと同時に、いやもしかしたらそれ以上に「米国感」や「エクスクルーシブ性」に魅力を覚えているのかもしれない。
米国感、すなわちステアリング位置が左であったり、温度の単位が「°F」であったり、あるいはインフォメーションディスプレイに表示される言語が英語だったりすることは、もちろん実用上は何かと不便ではある。しかし、ある種の人にとっては「グッとくる部分」でもあるのだ。
完膚なきまでの日本仕様に手直しされた右ハンドル仕様のタンドラもすてきであり、もちろん便利でもあろう。だがそれは「反骨のロックンローラーが、高級デパートで正規モノの革ジャンを買う」という行為にも似ている。反骨のロックンローラーたるもの、やはり銀座の高級百貨店で正規品を買うのではなく、横須賀のドブ板通りあたりで直輸入品の革ジャンを探して着るのが筋であり、美しさでもある。
そういった意味から考えると、「取りあえず輸入することにした」という緩さゆえにある程度残ったタンドラとハイランダーの「米国感」は、こういったクルマを希求するユーザーにとってはむしろ「ありがたくうれしい部分」であるはずなのだ。
事実、差し当たって唯一の商談経路(しかも予約制)となっている「トヨタモビリティ東京Import」の担当窓口は今、なかなかの盛況となっているもよう。一部の並行輸入業者の心中いかばかりか。左ハンドル等であることは──異論・反論もあろうかとは思うが、本物ならではの存在感と魅力を増しこそすれ、さして減じさせることはないのだ。
(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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