第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦
2026.06.27 エディターから一言 拡大 |
世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
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「白くまくん」の買収も気になるが……
ドイツのロバート・ボッシュといえば、世界屈指の規模を誇るテクノロジー企業であり、自動車の世界でもメガサプライヤーのひとつとして知られている。そのボッシュの日本法人が、2026年6月17日に横浜市の本社で年次記者会見を開催し、2025年の業績や事業の振り返り、そして今後の展望を語った。
まずは2025年の業績だが、グローバルにおけるグループ全体の売上高は前年比プラス0.7%の910億ユーロ(約16兆7184億円)を達成。その途方もない数字にメガサプライヤーのビジネス規模を感じる。日本でも第三者連結売上高は前年比プラス7%の約4600億円となり、2022年以来4年連続で過去最高を更新した。
そんな彼らの同年の大きな動きとしては、日立のルームエアコン「白くまくん」(厳密には、日立とジョンソンコントロールズの合弁会社である日立ジョンソンコントロールズ空調)を買収したことがトピックとして挙げられるが、私たちとして気になるのは、やはり自動車関連事業の動向だ。実際、彼らが掲げるモビリティー、産業テクノロジー(産業機器関連)、消費財(電動工具)、エネルギー・ビルディングテクノロジー(空調)という4つの柱のなかでも、一番の基盤となるのはやはりモビリティー事業なのだ。近年の売り上げ増のけん引役でもあり、さらなる躍進のために、将来の成長を見据えた技術開発が進められている。そのひとつが、日本のエンドユーザー向けに最適化したAI搭載コックピットの開発だ。
音声アシスタントが日本の方言にも対応?
先日発表された「メルセデス・ベンツSクラス」のように、自動車メーカーの間ではインフォテインメントシステムへのAIの実装が進められており、対話形式での快適な機能操作の実現が模索されている。とくにボッシュが開発しているものは、ドライバーと同乗者の会話をさえぎることなく、また日本の方言への対応にも取り組んでいるというから面白い。複雑な日本語の聞き取り・発話にどのように対応しているのか、そもそも現状ではシンプルな内容にとどまっている車載機器の音声認識操作が、どこまで広がっていくのか。興味は尽きない。
運転支援システムの分野では、この2026年に「クルーズコントロール オフロード機能」を発表するという。これは山道や岩場、未舗装路など、運転に慣れた人でも難しいと感じられる悪路での走行をサポートするもので、ソフトウエアで駆動と制動を最適に制御。レジャーとしてのオフロード走行の間口を広げるというよりは、林業や建設業などの現場で日々悪路を走るユーザーにとって、天の助けとなるかもしれない。
また、長年培ってきた燃料噴射システムや素材技術についても引き続き注力。ブラジルのフレックス燃料車やインドのCNG車など、地域特有のニーズに応えることでユーザーと自動車メーカーを支えるとともに、代替燃料の活用による二酸化炭素削減にも貢献していくとしている。
市街地での高度な運転支援機能にも注目
記者会見後は、ボッシュの最新技術の見学も行われた。そこで気になったのが、試験車に搭載された最新技術の数々だ。
ひとつは、「Point-to-pointナビゲーション」機能。これはカーナビで目的地が設定されると、車両が計画したルートに沿って自動で車線変更などを行い、出発地点から目的地までの走行を支援する運転支援機能のこと。中国のWeRide 社と共同開発したもので、すでに中国市場では実用化済みとのことだ。その機能の搭載車として展示されていたのが、「EXEED(エクシード)ES」だ。中国チェリー(奇瑞汽車)のプレミアムブランド、エクシードの電気自動車である。2026年5月より横浜周辺で試験走行を開始しているので、皆さんもその姿を目撃することがあるかもしれない。
同機能は「自動運転レベル2++」に分類されるもので、高精度地図に依存せず、E2E AI(end-to-end AI)によって都市部の複雑な交通環境にも対応。人間のように自然な走行を実現しているという。中国での走行映像を見ると、街なかの細い道を、それもクルマの脇を人やバイクがすり抜けるような状況でも、安定した走行を行う様子に驚かされた。ボッシュの担当者いわく、「中国と日本では走行車線が異なるが、今のところは問題なく対応できている。日本のほうが交通マナーがよい点も、実証にいい影響を与えている」とのこと。現時点ではデータ収集が目的だというが、実際にドアツードアでのハンズフリー走行などが可能となれば、私たちの日々の移動も大きく変わるかもしれない。
自動車が運転を教えてくれる時代に
もうひとつは、これも少し先の未来の技術である「トラックパフォーマンスアシスト」。なんとシステムがサーキットでの最適なドライビングを指南し、安全に走行を楽しめるようにするという機能なのだ。単走に特化したもので、コースマップでサーキットの情報を、6軸センサーで車両の状況を認識し、ステアリングやアクセル、ブレーキの最適な操作をドライバーにレクチャー。運転自体は人が行うが、緊急時には車両の性能限界を越える前にシステムがアクセル・ブレーキ操作に介入し、コースアウトを防ぐという。また初心者から上級者まで、レベルに合わせた設定も用意されるので、スキルアップにもつなげられる。
現在は「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」をテスト車として、ボッシュエンジニアリングの日独チームが共同で開発を進めている段階だが、完成のあかつきには国内外のプレミアムブランドに提案していくとしている。実装は早くとも数年先になるようだが、サーキット走行の間口を広げてくれる面白い機能になるのではないか。筆者もぜひ試してみたいと思った。
最後に、少し身近な話題にも触れておこう。2026年は、ボッシュが電動ワイパーを発明して100周年の記念すべき年だ。会場には「日本人の『もったいない精神』に合わせた」という、ワイパーゴムのみの交換が可能なフラットワイパーが展示されていた。聞けば、「ボッシュのワイパー100周年」を記念した企画も検討中とのこと。未来の自動運転から身近なワイパーまで、自動車とカーライフに広く、深くかかわっているのがボッシュという存在なのだ。
(文と写真=大音安弘、ボッシュ/編集=堀田剛資)

大音 安弘
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