メルセデス・ベンツGLC400 4MATIC with EQテクノロジー(4WD)
濃厚な味わい 2026.06.11 試乗記 「メルセデス・ベンツGLC」のモデルラインナップに電気自動車(BEV)版の「GLC400 4MATIC with EQテクノロジー」が仲間入り。システム最高出力は489PS、一充電走行距離は700km超と、まず間違いのなさそうなスペックが示されている。本国ドイツで仕上がりを試した。新型の「GLC」にはあらず
メルセデス・ベンツのGLC400 4MATIC with EQテクノロジーは、2025年のドイツ国際モーターショー(IAA)でお披露目されたGLCのBEV仕様である。しかし、その発表の場に居合わせた自分や多くのメディアは、アンベールされるまでそれが「GLCのフルモデルチェンジ」だと勘違いしていた。事前に知らされていたのは「新しいGLC」だったからだ。
実際には「EQC」のフルモデルチェンジに相当するモデルで、内燃機を搭載するGLCはいまでも張り切って販売中である。確かに「新しいGLC」ではあるけれど、だったら「EQCのフルモデルチェンジ」と言ってくれればよかったのに、どうしてそうしなかったのかを本社の広報に聞いたら「察してください(笑)」と言われた。つまり、“メルセデスEQ”と呼んでいたサブブランドが消滅してしまい、EQCとは名乗れなくなっていたのである。よって、GLC400 4MATIC with EQテクノロジーは、現行のGLCに追加導入されたBEV仕様という位置づけとなる。
似たような混乱はつい先ごろにも起こった。「Cクラス」のBEV仕様である「C400 4MATICエレクトリック」が発表された際、一部のメディアは「新型Cクラス登場」とあたかも現行Cクラスのフルモデルチェンジのように報道した。もちろんこれもGLCのときと同様に、現行のCクラスにBEV仕様が追加導入されたにすぎず、内燃機仕様はこれまでどおり販売が続けられている。
ちなみに、いままでCクラスにBEV仕様はなく、今回が初登場となる。実はBMWの現行「3シリーズ」にもBEV仕様はなく、「次期3シリーズのBEV仕様」として名言された「i3」が発表されたばかりである。ここまで両者の発表のタイミングが近いといろいろ勘ぐりたくもなるけれど、どうやら単なる偶然らしい。
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お下がりのコンポーネントもやむなし
GLC400は、日本でも価格が公開された「BMW iX3」のライバルとなるモデルである。iX3には試乗しているので、GLC400の国際試乗会を心待ちにしていたのだけれど、GLC400の日本導入は2027年に持ち越すらしく、残念ながら日本メディアの参加がかなわなかった。でも、個人的にはどうしても試乗してみたかったのでいろいろと手だてを探ってみたところ、「本社まで来てくれたらメディア向けの試乗車を貸し出すよ」と言われたので、新型「Sクラス」試乗会の前にシュトゥットガルトへ寄って“ひとり試乗会”をやってきた。
GLC400のプラットフォームやパワートレインは、基本的に「EQS」「EQE」の改良版である。EQS/EQEがもっとバカ売れしていたら、新しいアーキテクチャーを用意していたかもしれないけれど、いろいろうまくいかなかったのでやむを得まい。ちなみにC400エレクトリックの中身はこれとほぼ同じである。
車名のとおり、GLC400は4WDの駆動形式を持ち、前後にひとつずつモーターを配置している。フロントモーターには必要に応じて駆動力を完全に遮断して後輪駆動にする「DCU(ディスコネクトユニット)」を設置。リアモーターには低速用(11:1)と高速用(5:1)の自動変速式2段トランスミッションを備えている。
システム最高出力は489PS、システム最大トルクは800N・m。容量94kWhの駆動用バッテリーを搭載し、800Vの電子アーキテクチャーを採用。一充電走行距離(WLTPモード)は713kmと公表されている。このバッテリーは新型「CLA」から採用されているモジュラータイプの新設計で、さまざまなボディータイプにフィッティングできるようになっている。
全幅1m近い一枚物のスクリーン
EQSやEQEは空力を最優先したスタイリングになっていた。Cd値が0.01下がると航続距離が約5%伸びるともいわれているので、メルセデスとしては理想を追求したわけなのだけれど、そのスタイリングがどうやら不評だったともいわれている。だからという理由だけではないが、GLC400のエクステリアデザインは空力よりも現行のGLCになるべく寄せることを優先したフォルムとなっている。ただ、「ひと目でBEVだと分かるデザイン」というのが要件だったらしく、光り輝く巨大なフロントグリルやわずかにスラントしたテールライトなどは、内燃機仕様のGLCとの明確な差別化が図られている。
インテリアで圧倒的な存在感を放っているのは「MBUXハイパースクリーン」(オプション)である。メルセデス史上最大のディスプレイユニットで、全幅99.3cm(39.1インチ)の液晶パネルが運転席から助手席までのダッシュボードほぼ全面を覆う。これまでのハイパースクリーンは、1枚のガラスのカバーの中に3枚のパネルが組み込まれていたが、新型CLAからは1枚の液晶パネルで全体を網羅するタイプに切り替わっている。MBUXはこれも新型CLAから第4世代となり、最新の「MB.OS」を採用。「ChatGPT4o」などの生成AIを統合し、Googleマップも標準搭載している。
ハイパースクリーンのせいで、室内はなんだか妙にキラキラしていて若干ビジーな印象を受ける。一方で、スクリーンはほぼ垂直に取り付けられていて、ダッシュボードの上の奥行きも短い。これは、スクリーンをできるだけフロントのバルクヘッドへ寄せることで、室内の前後方向のスペースを広く確保しようとする、パッケージを考慮した表れだろう。
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メルセデス濃度の高い乗り味
格好はともかく、EQSもEQEも運転すると特に乗り心地や静粛性といった快適性の部分が秀でていて、全体的な乗り味は決して悪くなかった。だからほぼ同じハードウエアを使うGLC400も悪いはずはないと思って走りだしたがやっぱり予想どおり上質で、むしろEQS/EQEよりもさらにメルセデス濃度の高い乗り味になっていた。
具体的には、タイヤが動きだす瞬間のちょっとしたタメのような反応や、ペダルとステアリングからの入力に対するわずかな重厚感などが、ひと昔前のどっしりしたメルセデスにより近づいたようにさえ感じた。BMWのiX3に試乗したときにも「いま一番BMWっぽいかも」と思ったが、GLC400にも「すごくメルセデスっぽい」という印象を受けた。もちろん、ドライブモードで「スポーツ」なんかを選べば、BEVの特性を生かした瞬発力のある動力性能を披露する。
ハンドリングも正確無比で絶対安定のメルセデスらしいセッティングだし、乗り心地も申し分ない。どれもほぼ想定内で、どこかに新しい機能がないのか調べてみたらありました。試乗車には、オプションの「インテリジェントサスペンションコントロール」が装着されていた。これまでの「エアマチックサスペンション」の車高調整は基本的に速度感応式だったが、このシステムではGoogleマップのデータを活用し、道路状況に応じて走行に支障を来さない範囲でなるべく低い車高を保ち、空気抵抗の軽減を図りながらの走行が続けられるよう制御するという。空力よりも既存のGLCのスタイリングに寄せることを優先したことへの対処なのだろう。ちなみにGLC400のCd値は0.26で、iX3の0.24に負けている。ほんとはそれが悔しくて開発したサスペンションだったりして。
(文=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝/車両協力=メルセデス・ベンツ)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツGLC400 4MATIC with EQテクノロジー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4845×1919×1644mm
ホイールベース:2972mm
車重:2535kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期式
リアモーター:永久磁石同期式
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m
システム最高出力:489PS(360kW)
システム最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)
タイヤ:(前)265/40R21/(後)265/40R21(ピレリ・スコーピオン)
一充電走行距離:568-715km(WLTPモード)
交流電力量消費率:18.9-14.9kWh/100km(約5.3-6.7km/kWh、WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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渡辺 慎太郎
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