KTM 390 SMC R(6MT)
絶妙なさじ加減 2026.06.19 JAIA輸入二輪車試乗会2026 KTMがラインナップするスーパーモト「390 SMC R」に試乗! スーパーモトといえば俊敏性が命の“かっ飛びマシン”の宝庫だが、オーストリアの雄が擁する一台は、刺激的でありながら疲れすぎることのない、絶妙なあんばいのモーターサイクルに仕上がっていた。過激すぎないところがいい
試乗会場での情報収集に余念がない編集H田によると、KTM 390 SMC Rの評価は、ライダーによって真っ二つに分かれているそうだ。そりゃそうだと思う。国産車みたいに全方位での使い方に配慮したバイクじゃなくて、かっ飛ばし系の要素を詰め込んでいるからである。KTMのいう「READY TO RACE」のコンセプトにビビッとくるなら390 SMC Rは素晴らしいバイクだし、まったり走りたいライダーにこいつのよさは伝わらんだろう。
スポーティーな走りを最優先に考えられたエンジンは、フライホイールマスが小さくてビュンビュンとレスポンスする。シャープな吹け上がりはエキサイティングで、スポーティーに走りたいライダーのマインドをくすぐる。その代わり、低回転ではまったく粘らず、回転を落とすとガタガタしてしまうし、無精して高いギアのまま走ろうとするとエンストしてしまうことだってある。ステップとシートには振動も出る。要は、あんまり快適という感じではないのだけれど、スポーティーに走りたいライダーにとっては、さほど気になるようなものではないだろう。
KTMが2008年につくった690エンジンは、素晴らしい性能と信頼性を確保した傑作だったと思う。この390のエンジンは、それととてもよく似ている。排気量が小さいぶん、全体的にパワーは抑えられているけれど、ストリートであればこれくらいのほうが扱いやすいし、使い切る楽しさもある。排気量が小さいから回り方もスムーズ。実にいいエンジンである。
スパルタンなエンジンだからハンドリングも手ごわいかと思いきや、こちらはなかなかの優等生。さすがスーパーモトで長年やってきたメーカーのマシンという感じだ。ご存じのように、スーパーモトはオフロードバイクのタイヤを前後17インチにして、オンロード用のタイヤを装着したジャンルだ。フロントタイヤが21インチから17インチになるのでトレールやキャスターが変わり、ハンドリングは激変する。なかには違和感のある操作性になってしまうモデルもあるのだけれど、390 SMC Rは実に素直なのである。オンロードバイクから乗り換えると、シッティングポジションの高さやピッチングモーションの多さが気になるかもしれないが、少し乗っていれば慣れてしまうはず。ストリートやワインディングロードを軽快に走れるようになるはずである。
ヨーロッパのスパルタンなマシンは、一緒にいるとメッチャ楽しいけれど、長くいると疲れてしまうこともある恋人のようなもの。でも390 SMC Rの場合は、ぶっ飛びすぎているわけではない。適度に刺激的で、疲れすぎるようなこともない。このバランスがとてもいいバイクだと思うのである。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1453mm
シート高:860mm
重量:154kg(燃料除く)
エンジン:398.7cc 水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ
最高出力:45PS(33kW)/8500rpm
最大トルク:39N・m(4.0kgf・m)/7000rpm
トランスミッション:6MT
燃費:--km/リッター
価格:85万9000円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2026◆◇
【トップページへ戻る】
【前】ベスパGTSスーパー300(CVT)
【後】ドゥカティ・スクランブラー ナイトシフト(6MT)

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
-
MVアグスタ・ドラッグスターRR SCS(6MT) 2026.7.15 宝石とも形容される伊MVアグスタのバイクのなかでも、アグレッシブなデザインと前のめりな走りで異彩を放つ「ドラッグスター」。自動クラッチシステム「SCS」が搭載されたモデルに試乗し、刺激的でありながら懐の深さも合わせ持つ走りに触れた。
-
ベンダ・ナポレオンボブ250(6MT) 2026.7.10 個性的なバイクがそろうJAIA輸入二輪車試乗会の会場でも、ひときわ強烈な存在感を放っていた「ベンダ・ナポレオンボブ250」。中国からやってきた250ccクラスのクルーザーには、他のこのセグメントのバイクにはない“こだわり”が存分に注ぎ込まれていた。
-
トライアンフ・タイガースポーツ660(6MT) 2026.7.8 英国の老舗、トライアンフが擁するスポーツツアラー「タイガースポーツ660」が2026年モデルに進化! 最高出力を95PSまで高めた最新バージョンは、いかなる走りを身に付けているのか? スポーツネイキッドに比肩するその実力に触れた。
-
ハーレーダビッドソン・ナイトスター(6MT) 2026.7.3 ハーレーダビッドソンの水冷Vツインモデル「ナイトスター」に試乗。「X」シリーズのディスコンに空冷「スポーツスター」の復活と、さまざまな情報が飛び交っているハーレーの入門モデル群だが、ナイトスターの未来やいかに? 走りながら考えた。
-
BMW R1300RS(6AT) 2026.7.1 BMWが擁するフラットツインの大型スポーツツアラー「R1300RS」に試乗。巨大なボクサーエンジンと安定志向の足まわりの調律は、大人のライダーが週末を楽しむためのバイクとして、完璧な仕上がりをみせていた。
-
NEW
ホンダ・スーパーONE(前編)
2026.11.1ミスター・スバル 辰己英治の目利き辰己英治さんが今回試すのは、ヤンチャないでたちの「ホンダ・スーパーONE」。軽規格の電気自動車(EV)「N-ONE e:」をベースに走りを鍛えた、電気で走るスポーツコンパクトだ。見た目にも楽しさがあふれる一台の魅力に、“ミスター・スバル”が迫る。 -
NEW
思わずなでたくなってくる 丸いデザインのクルマ特集
2026.11.1日刊!名車列伝最近のクルマのデザインは、シャープなラインが特徴だったり、造形そのものが複雑だったり……。今月は、つるりと丸い、シンプルなエクステリアが印象的な世界の名車を日替わりで紹介します。 -
ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)【試乗記】
2026.10.31試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。 -
「BYDラッコ」がアジアにはばたく!? ニッポンの軽自動車規格が海外勢に奪われる日
2026.10.30デイリーコラム中国のBYDが、軽BEVの「ラッコ」を日本以外でも販売すると発表! 日本独自のスモールカー規格は、はたして海外でも受け入れられるのか? 本家・日本のメーカーが、海外展開に及び腰だった理由とは? BYDが食指を動かす、軽自動車の秘めた可能性を探る。 -
メルセデスのトップからのまさかの転身 BMW日本法人の上野金太郎社長にインタビュー
2026.10.29デイリーコラムメルセデス・ベンツ日本からビー・エム・ダブリューのトップへ。いわば巨人の四番から阪神の四番のような異例の転身を遂げた上野金太郎社長。両ブランドの文化や製品の違い、今後の販売戦略などについて話を聞いた。 -
ボルボEX90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(後編)
2026.10.29あの多田哲哉の自動車放談ボルボの新世代EV「EX90」に、トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんが試乗。ちょっと気になったところと、クルマとしての魅力を感じたポイントについて熱く語る。









