5種類のパワーユニットを1つのシャシーに 5代目「BMW X5」の進化点を読み解く
2026.07.08 デイリーコラムスポーティーさこそがBMWらしさ
あのころ、というのは1990年代後半のころ、アメリカ市場は電気自動車(EV)が販売台数を稼ぐいまの中国市場にちょっと似ていた。それまでは、ラダーフレームでオフロードを走るための武骨な4WDを“SUV”と総称していたのに、乗用車ベースのモノコックでSUVのような格好をしたモデルが続々と登場。それがアメリカ市場でバカ売れした。その商機に乗っかろうと、それまでSUVなんかつくったことがなかったメーカーまでもがこぞってSUV開発に着手。大きなボディーに乗車定員よりも多いカップホルダーを車内の至るところに配置して、アメリカ市場へ次々に投入した。SUVは「Gクラス」しかなかったメルセデス・ベンツは1997年に新たに「Mクラス」を追加し、アメリカに工場までつくって売る気満々だった。それから2年後の1999年、それまではSUVを一台もラインナップしてこなかったBMWも、メルセデスと同じようにアメリカに工場を建設し、初代「X5」を発売した。
メルセデスの後塵を拝したからか、あるいはそもそもSUVに興味を示してこなかったことへの大義からか、BMWはX5をSUV(スポーツユーティリティービークル)とは呼ばず“SAV”と呼んだ。SAVはスポーツアクティビティービークルの略。乗用車のプラットフォームに大きなボディーをかぶせただけのなんちゃってSUVとは違い、重心が高く重量が重くてもBMWらしいスポーティーな乗り味をきちんと備えた特別なSUVであるということを、SAVという呼び名で示したかったのだろう。
新型X5はこれで5代目となる。スタイリングは“ノイエ・クラッセ”のデザイン言語を用いて、すでに登場した「iX3」を大きくしたような同じムードが漂う。現行の「X5 40d xDrive」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4935×2005×1770mm、ホイールベース2975mm。対する新型の「X5 40d xDrive」は全長×全幅×全高=4994×2000×1751mm、ホイールベース3035mm。全長は59mm、ホイールベースは60mmそれぞれ長くなり、でも全幅は5mm狭くなり全高は19mm低くなった。大きくなった部分と小さくなった部分で差し引きゼロの、ほぼ同じサイズといったところか。いっぽうで、ホイールベースが長くなったことと、全高が低くなったことには意味がある。新型X5の最大の特徴が、5種類ものパワートレインを有していることだからだ。
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直6から燃料電池まで多彩なパワーユニット
5種類とは、ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車(いずれもマイルドハイブリッド)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、EV、燃料電池車。燃料電池仕様のみ、正式発表はまだされていないので、現時点での仕様は次のとおりとなる。
【BMW X5 40 xDrive】
2998ccの直列6気筒ガソリンターボエンジンとモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド。システム最高出力400PS、システム最大トルク540N・m。車両重量2365kg。
【BMW X5 40d xDrive】
2993ccの直列6気筒ディーゼルターボエンジンとモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド。システム最高出力313PS、システム最大トルク670N・m。車両重量2430kg。
【BMW X5 50e xDrive】
2998ccの直列6気筒ガソリンエンジンにモーターを組み合わせたPHEV。システム最高出力489PS、システム最大トルク700N・m。EVモードでの走行可能距離は86-102km。車両重量2640kg。
【BMW X5 M60e xDrive】
2998ccの直列6気筒ガソリンエンジンにモーターを組み合わせたPHEV。システム最高出力612PS、システム最大トルク800N・m。EVモードでの走行距離は81-98km。最高速250km/h。車両重量2715kg。
【BMW iX5 60 xDrive】
前後にモーターを置く4WDのEV。システム最高出力578PS、システム最大トルク805N・m。容量141kWhの駆動用バッテリーを搭載。一充電の走行距離は645-845km。車両重量2900kg。
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50:50の前後重量配分は不変
プラグインハイブリッドだけが2仕様あって、そのうちのひとつが“M”という位置づけである。新型X5はアメリカにあるスパータンバーグ工場で2026年8月から生産が開始される。まずはマイルドハイブリッドのガソリンとディーゼル仕様で、それらは同年11月28日に発売予定(欧州)、EVとPHEVは2027年初頭、燃料電池はさらにその後になるといわれている。
ホイールベースと全長が伸びたのは、パワートレインのラインナップにEVが含まれているからだ。141kWhの駆動用バッテリーを搭載するためにホイールベースを延長し、空力性能を向上させるために全高を落としたと考えられる。それにしても、5種類ものパワートレインをひとつのプラットフォーム、ひとつのボディーに収めるなんてモデルは極めて稀な存在だ。そのうえ、いずれのモデルも前後の重量配分が例によってほぼ50:50になっているというから恐れ入る。似たようなマルチパスウェイの戦略を掲げているトヨタも、電動化戦略の変更を余儀なくされてバタバタしているメルセデスも追い越して、BMWは頭ひとつ前に出た感じである。
インテリアは予想どおり、「パノラミックiDrive」と「パノラミックビジョン」がダッシュボードを支配する。「BMW OS X」や「Amazon Alexa」によるパーソナルアシスタント機能などももちろん採用されている。足まわりには、電子制御式ダンパーと金属ばねを組み合わせたアダプティブサスペンションを標準装備。オプションでエアサスペンションや後輪操舵機構も選べるそうだ。そしてM仕様には専用のサスペンションが用意されている。
新世代になっても、X5はSUVではなくSAVの名に恥じない仕立てになっているようだ。
(文=渡辺慎太郎/写真=BMW/編集=藤沢 勝)

渡辺 慎太郎
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