スズキ・ハスラー タフワイルド ターボ(4WD/CVT)
気になるアイツ 2024.08.05 試乗記 依然として根強い人気を誇る、スズキの軽クロスオーバー「ハスラー」。デビューから4年半を経た今も、その魅力は健在か? 2度目の一部改良を受けた最新型の実力を、アウトドアテイストを濃くした派生モデル「タフワイルド」で確かめた。モデルライフもいよいよ終盤!
この2024年5月に実施されたハスラーの一部改良は、現行型としては2022年5月に続く2度目のアップデートとなる。現行ハスラー自体の発表は2019年末なので、それからは4年半以上が経過。先代=初代のモデルライフは約6年だったから、この2代目ハスラーも、すでにライフ後半~末期にさしかかっていると推察できる。
今回の一部改良では、LEDヘッドランプの標準装備化や、コネクテッドサービス「スズキコネクト」への対応を全車で実施。「ハイブリッドX」および「ハイブリッドXターボ」という上級グレードでは、「ナノイーX搭載フルオートエアコン」「360°プレミアムUV&IRカットガラス」「シートバックアッパーポケット」などの装備も追加された。さらに両グレードでは、内装ではシート表皮やインパネガーニッシュの質感をアップ。外装ではフォグランプガーニッシュやドアハンドルをメッキ化したことに加えて、エンジンフード前端に「HUSTLER」のメッキアルファベットエンブレムがあしらわれた。
ハスラーファンならご承知だろうが、この(某英国の某高級SUVブランドを思わせる?)アルファベットエンブレムは、これまでは特別仕様車の専売特許的なアイテムだった。それが、ついにカタログモデルに投入されたのだから、ある意味でサプライズだ(笑)。
で、今回の一部改良のもうひとつのメダマは、この記事の試乗車でもある、タフワイルドの登場だ。タフワイルドはその名のとおり、もともとアウトドア風味のハスラーに、さらに“タフ”で“ワイルド”な雰囲気をトッピングしたバリエーションである。ベースとなるのは上級グレードの「ハイブリッドX/同ターボ」で、タフワイルド専用のルーフレールを特別装備したうえで、ホイールを含めた外観のディテールをブラックでほぼ統一。そして、内装に目を移すと、今度はディテールにカーキがあしらわれている。
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特別仕様車から独立モデルに格上げ
これまたハスラーに詳しい向きならお気づきのように、タフワイルドは、先代でも“限定なし”の特別仕様車として設定されたモデルだ(参照)。装備やラインナップ構成は今回とは異なるが、先代のタフワイルドも、外観の要所をブラックで引き締めて、内装も専用色(当時はオフブルー)のアクセントが与えられていた。
先代と今回のタフワイルドは、登場のタイミングもほぼ同じ(=ハスラーの発売から4年半後の夏)である。モデルライフ後半~末期で投入されるテコ入れモデルという役割も、新旧のタフワイルドで共通するわけだ。
……といったことをスズキの広報担当者と話していたら、新旧のタフワイルドには決定的なちがいがあると指摘されてしまった。それは先代タフワイルドがあくまで特別仕様車=ハスラーの1バリエーションだったのに対して、新しいタフワイルドは普通のハスラーから独立した派生モデルなのだという。
実際、スズキの公式ウェブサイトでも、タフワイルドは普通のハスラーとは別車種あつかい。つまり、新しいタフワイルドは、「スペーシア」における「カスタム」や「ギア」、あるいは「ワゴンR」の「カスタム」に「スティングレー」、「アルト ラパン」の「LC」に相当する存在ということだ。
新しいタフワイルドが普通のハスラーと別車種であると定義されるココロは、フェイスデザインの仕立てにある。先代タフワイルドのフェイスの基本デザインはハスラーそのままだったが、今回の新タフワイルドでは、車体前面の大半を占めるフロントバンパーだけでなく、フェイスの核ともいうべきセンターグリルも専用デザインになっている。リアバンパーもフロントに合わせた専用意匠だ。エクステリアにおける専用備品の範囲は、たしかに一般的なカスタム系モデルと同等に広い。さらに、ベースのハイブリッドX/同ターボと同じく、フロントには例のアルファベットエンブレムも備わるが、そこもタフワイルド専用にブラックとなっている。
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車内には工夫とアイデアがいっぱい
スズキ的には別車種あつかいのタフワイルドだが、よくも悪くも、その実体はただのハスラーだ。内装の基本デザインは変わらず、特徴的な3連調のインパネガーニッシュやシート表皮のステッチ、シートバックポケット、カップホルダーやドアトリムの一部が専用のカーキ色になるだけである。
フロントシートが、先代ハスラーやワゴンRのようなベンチシートでないのは、長距離ドライブでのホールド性のほか、ハスラー乗りのお約束でもある車中泊にも配慮したからだ。前後シートを倒して左右2人分のベッドにしたときに、シート間のセンターコンソールが、就寝時に意外と困る小物置き場になるという寸法である。また運転席側カップホルダーにある横長のスリットは、知る人ぞ知る隠しアイテムで、夜間などにウオッチホルダーにしたり、カラビナを固定したりすることを想定している。
先代のタフワイルドは自然吸気エンジンのみだったが、独立車種あつかいとなった新型では、パワートレインもすべての選択肢が用意される。具体的には、エンジンは自然吸気とターボから選べて、駆動方式もそれぞれに2WDと4WDが用意される。今回の試乗車は、そのなかでもタフでワイルドな使いかたにもっとも適した(?)ターボの4WDだった。
タフワイルドは、走りも当然、おなじみのハスラーそのまま。地上高が大きめのSUVとはいえ、基本設計はスイングドアのハイトワゴン形式である。同形式の軽自動車(以下、軽)としては、「ダイハツ・タフト」よりは少し古いが、「日産デイズ」と「三菱eKワゴン/eKクロス」、そして「ホンダN-WGN」よりは新しい。先進運転支援システム(ADAS)は最新のスペーシアのそれより1世代古くて、積極的なレーントレース機能はないが、骨格設計やシャシーのハードウエアはいまだ新世代に近い。
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古さを感じさせない走りと快適さ
そんなハスラーは剛性感が飛びぬけているわけではないものの、最新の軽として悪くない。現行ハスラーは最近のスズキが好んで使う「高減衰マスチックシーラー」を初めて使ったクルマでもあり、静粛性も軽の最新トップとはいわずとも、まずまず高い。
印象的なのは乗り心地のよさだ。ハスラーを含むスズキ軽乗用車の4WDのリアサスペンションは、ダイハツや日産・三菱と基本的に同様のリジッドアクスルである。ただ、縦方向のトレーリングリンクがアクスルケースとは独立していて、そこを可動リンクで結合しているのはスズキ独特の構造だ。スズキはこれを「アイソレーテッドトレーリングリンク=I.T.L」サスペンションと呼ぶ。
I.T.Lはそのリンク部分でスタビライザー効果を発揮するのも特徴といわれているが、幾何学特性は一般的な3リンクリジッドと大差ない。ただ、リジッドとしてはかなりしなやかで、リアに半独立式トーションビームを使う2WDとは、同じとはいわないが大きく引けも取らない。ロードホールド性能も高いのか、トーインのつかない構造なのに、リアの限界が低い感覚もあまりない。
ハスラーの4WDには、ブレーキ制御による「スノーモード」や「グリップコントロール」、そして「ヒルディセントコントロール」が備わる。しかし、駆動機構そのものは簡素なビスカス式なので、今回のようなドライ路面ではほぼ2WD状態である。となると、この乗り心地と安定感はやはりI.T.Lによるものか。
タフワイルドの車両本体価格は、同じパワートレインのハイブリッドX/同ターボの8万8000円高。明確な装備差はルーフレールだけで、あとは内外装デザインの差別化である。ただ、丸型ヘッドライトを内包したようなスクエアグリルは、ジムニーにも通じるスズキオフローダーの伝統的モチーフだし、細部をブラックで締めるセンスはいかにも今っぽい。先代以上につくりこまれたタフワイルドは、好事家もちょっと気になるハスラーだ。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
スズキ・ハスラー タフワイルド ターボ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1680mm
ホイールベース:2460mm
車重:890kg
駆動方式:4WD
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:直流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:64PS(47kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/3000rpm
モーター最高出力:3.1PS(2.3kW)/1000rpm
モーター最大トルク:50N・m(5.1kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)155/60R15 77H/(後)155/60R15 77H(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:20.8km/リッター(WLTCモード)
価格:197万2300円/テスト車=227万5460円
オプション装備:全方位モニター付きメモリーナビゲーション スズキコネクト対応通信機装着車(21万7800円) ※以下、販売店オプション フロアマット<トレー>(1万5180円)/ETC車載器(2万2440円)/ドライブレコーダー(4万7740円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1579km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6)/高速道路(2)/山岳路(2)
テスト距離:265.1km
使用燃料:16.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.5km/リッター(満タン法)/15.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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