アウディA6 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)
新しいアウディの味 2026.08.05 試乗記 歴史的にも車格的にも、アウディの中核に位置している「A6」。その最新モデルが日本に導入された。往年の「100」から数えて9代目となる新型は、いかなる走りを備えているのか? 既存の車種とは一味違う、新時代のアウディのドライブフィールを報告する。それは電気自動車のほうです
A6といえば、アウディの歴史においても100の系譜という最深部に属する、SUV全盛の現在でも精神的支柱となるモデルだ。ちょっと大げさになぞらえれば、トヨタの総代が「クラウン」ならアウディのそれがA6と言っても過言ではないだろう。
そのA6、初代100から数えれば58年目にして、9代目となる新型が日本でもいよいよ発売された……のだが、これを聞いたクルマ好きの読者におかれては、「?」の電球が頭にともっていることだろう。新しいA6という触れ込みのクルマは、既に昨年(2025年)、日本に上陸しているからだ。ただ、それは「A6 e-tron」、つまり電気自動車(BEV)専用モデルだった。一方で、今回導入されたのは内燃機を搭載する、従来のA6の延長線に位置づけられるモデルだ。
パワートレインも違えばプラットフォームも違う、なのに名前は同じA6とはこれいかに? と思われるのもやむなしで、アウディは2020年代前半、BEVを主軸に据えた新戦略に伴い、車両の命名の法則性を、内燃機=奇数、BEV=偶数というふうに改定した。2024年にはそれにのっとり、従来「A4」のポジションにあった内燃機モデルが「A5」として登場。それまでA5の名を冠していた2ドア/5ドアクーペ/カブリオレは、押し出されるカタチでディスコンになってしまった。が、わずか1年でその法則も変わり、BEVも内燃機モデルも、旧来通り車格に応じた数字並びの車名を踏襲することになったわけだ。
そのお約束ごとが適用された最初のクルマとなるこの新型A6は、発表が半年早ければスポーツバックを亡き者として「A7」を名乗ることになっていたのかもしれない。BEVを取り巻く欧州のすったもんだを今さらウジウジほじくるのも大人げないとは思うが、結局とっ散らかるのは現場とお客というオチを、アウディ/フォルクスワーゲングループのお偉いさんはどう考えているのかとも思う。
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ラインナップにおける微妙で絶妙なポジション
というわけで気を取り直してA6だ。登場した内燃機モデルは、BEV専用車のe-tronと動くことにまつわるメカニズムの共通項はない。そもそもA6 e-tronがプラットフォームにBEV専用の「PPE」を採用しているのに対して、A6は内燃機の搭載を前提とした「PPC」を用いている。同じPPCを採用するA5の5ドアと比較すると、新しいA6のセダンの全長は、165mm長い5000mm、全幅は15mm広い1875mm、全高は30mm高い1465mm、そしてホイールベースは105mm長い2925mmとなる。A5が大きくなったこともあって、サイズ的な差異は従来のA4&A6ほど明瞭ではなくなった感もあるが、新型A6は灯火などに新たな意匠を採り入れていることもあり、グラフィカルな識別は難しくはない。
加えてA6オンリーの大事なポイントは、独立したトランクルームを備えるセダンが、ステーションワゴンとともに用意されるということだ。A5は実質的にA4の後継的位置づけながら、5ドアのハッチバックとステーションワゴンというバリエーションになった。果たしてそこにどれほどの意味があるかはさておき、王道を貫くのがA6という安心感はブランドに重みをもたらしてもくれる。
A6のバリエーションはシンプルだ。パワートレインは最高出力272PSを発生する2リッターガソリンターボ=「200kW TFSI」と、同204PSを発生する2リッターディーゼルターボ=「150kW TDI」の2つで、ともに7段の「Sトロニック」を組み合わせる。エンジンとトランスミッションの間には48Vモーターが収まっており、このマイルドハイブリッドシステムはクラッチで稼働を制御して低速走行時の駆動や高速巡航時のエンジンカットオフを行う「MHEVプラス」となっている。駆動方式は全て四駆すなわち「クワトロ」で、A5と同様にセンターデフを持たない形式となる。
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失ったものと手に入れたもの
取材に供されたのはセダンのTDIだったが、横に並んだステーションワゴン=「アバント」のお尻まわりの肉感的な形状には思わず目を奪われた。リアフェンダーの力強い張り出しはA5の側でも感じられたが、全長の伸びしろをうまく使ってリアウィンドウをぐっと寝かせたフォルムが美しい。スリークさはともあれ、初めてアバントが設定された3代目の100シリーズを思い起こさせる。駆動方式もエンジン形式も、そして空力も……とフェルディナント・ピエヒの狂信的なエンジニアリングが全身に宿った1980年代の名車だ。
「E3」と呼ばれる新しい電子プラットフォームを採用したインテリアは、助手席側のモニターも標準化するなどA5との差別化も図られてはいるが、全体的な質感面において刮目するほどの違いはない。アウディといえばず抜けたスタティックのクオリティーでライバルを驚かせてきたが、周囲のキャッチアップも相まって、かつてほどのアドバンテージは感じられなくなった。パッケージについても後席の居住性はさすがにA5と明らかな違いを感じる一方で、積載力については積めるアウディとして鳴らした往時のA6の箔が擦れた感もある。実際、荷室容量はセダンで452リッター、アバントで466リッターと、前型には及ばない。ただし、ちょうどこの位置に搭載されるMHEVプラスの駆動バッテリーが1.7kWhと一般的なハイブリッド車の2倍くらいの容量を備えているなど、やむを得ない事情もある。
その甲斐もあってだろう。A6の走りには電気の介在が割と頻繁に感じられる。発進から低速時は思いがけずモーター駆動のみでスルスルと走ってしまうことも多い。そして中間加速の肉厚ぶりは、たとえトルクリッチなTDIベースであっても確実にモーターの加勢が手に足に伝わってくる。0-100km/h加速は6.9秒と十分以上の性能を確保しているが、それよりもエンジンと駆動モーターの仲を取り持つクラッチ制御の巧みさに感心させられる。
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今までとは違うドライブフィールに寄せる期待
取材車がリアステアやエアサスペンションといった、飛び道具的なオプションを装備していたからかもしれないが、その乗り味はさすがアウディとうならされるものだった。
同じアーキテクチャーのA5では感じられなかった変化として見逃せないのは、ステアリングフィールのアナログ感がぐっと高まったことにある。ここ何年かのアウディといえば、舵を筆頭に軽い操作系で方向をひらっと定めつつ、クルマ任せ……というかクワトロ任せで路面をカッチリ刻んでいくリモート的な感触が、個人的には肌に合わないところがあった。一方で、その操作の軽さはひとつの指標となり、直接的なライバルを含めて多くのメーカーに影響を与えたとも思う。
が、新しいA6のそれは、軽さのなかにもフィードバックが手のひらにリアルに伝わってくる。アクセルやブレーキの操作による微妙な姿勢の変化や、荷重の移動にまつわる情報も、解像度が高い。指先のわずかな力加減ひとつでゲインをちゃんと管理できる。そこに足まわりがしっかり呼応している。明らかに今までのアウディとはちょっと異なる操安づくりの新たなさじ加減がくみ取れた。
実は同じような印象は、ちょっと前に販売が開始された、新しい「Q3」にも感じられた。よーし電気だ、いや内燃機も……と社内の開発リソースが振り回されるなか、アウディはアイデンティティーの補剛のために、新しい何かをつかみ始めているのかもしれない。社是よろしくバリバリの技術オリエンテッドだった彼らのエンジニアリングが、いまなにを指標としているのかは、限られた情報のなかで計り知るしかないが、新しいA6の乗り味に、再びプレミアムセグメントで競合をひと泡吹かせてくれるんじゃないかという期待を抱いたのも事実だ。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
アウディA6 TDIクワトロ150kW
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5000×1875×1445mm
ホイールベース:2925mm
車重:2120kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/3800-4200rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1750-3250rpm
モーター最高出力:24PS(18kW)
モーター最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)
タイヤ:(前)255/40R20 101Y XL/(後)255/40R20 101Y XL(ファルケン・アゼニスFK520)
燃費:17.6km/リッター(WLTCモード)
価格:898万円/テスト車=1191万円
オプション装備:S lineパッケージ ブラック<S lineエクステリア+スポーツサスペンション+スポーツシート フロント+レザー/アーティフィシャルレザー+デコラティブパネル マットブラッシュトアルミニウム リニアエンボス アンスラサイト+ステンレスペダルカバー+ドアシルトリム アルミニウム Sロゴ+ステアリングホイール 3スポーク レザー マルチファンクション パドルシフト フラットトプ&ボトム+ヘッドライニング ブラック+アコースティックガラス>(51万円)/テクノロジーパッケージプロ<電動チルト/テレスコピックステアリングコラム+ステアリングヒーター+シートヒーター[フロント/リア]+デジタルマトリクスLEDヘッドライト+デジタルOLEDリアライト+3Dサラウンドビューカメラ+パークアシストプロ+リアオキュパントディテクション+エマージェンシーブレーキアシスト フロント/リア>(67万円)/MMI experience proパッケージ<MMI experience pro+ヘッドアップディスプレイ+USBクイックチャージング[フロント60W/リア100W]+アンビエントライティングプロ/ダイナミックインタラクションライト+Bang&Olufsen 3Dプレミアムサラウンドシステム[16スピーカー]/フロントヘッドレストスピーカー>(50万円)/アルミホイール マルチスポークデザイン グラファイトグレー ポリッシュト 8.5J×20 225/40R20タイヤ(21万円)/スマートパノラマガラスルーフ コントラストルーフ<ブリリアントブラック>(44万円)/アダプティブエアサスペンション/アウディドライブセレクト アシスタント(35万円)/オールホイールステアリング(25万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:910km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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