トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)
安定の味わい 2026.08.12 試乗記 トヨタの人気SUV「RAV4」が6代目へと進化。どれくらい人気なのかは本文をご覧いただきたいが、日本だけでなく約180もの国と地域で愛されているモデルゆえに、その仕上がりはとにかく手堅く、そして隙がない。街から高速道路、さらに山道まで走り回って、気になったのはわずか1カ所のみだった。ニッチ商品だったのに
「そういえば“RAV4”ってもともとなんの略だったっけ?」と気になって調べたら、“Recreational Active Vehicle 4 Wheel Drive(リクリエーショナル・アクティブ・ヴィークル・4WD)”だったが、先代で“Robust Accurate Vehicle with 4 Wheel Drive”に変わったそうだ。個人的には当初の意味のほうが分かりやすくてしっくりくる。いずれにせよ、厳密にいえば発音が違うとはいえおそらく「RAV」と「LOVE」をひっかけたりしているのだろう。うまいこと考えたネーミングだなとあらためてちょっと感心してしまった。いまではRAV4の車名がそういう由来であると知っている人はほとんどいないかもしれないけれど、もはやRAV4は多くの人に耳なじみのある車名であり、ブランド化しているといってもいいかもしれない。
クルマの認知度を上げる方法はいくつかあるけれど、RAV4の場合は目や耳にする機会が多いからだろう。それもそのはずで、先代RAV4の全世界における年間の販売台数は100万台を達成したという。年間100万台なんて言われてもなかなかピンとこないが、平均すると1日あたり約2740台がコンスタントに売れていると言われたら、それがとてつもない偉業だということが分かる。
1994年に登場した初代RAV4は、ラダーフレームではなくモノコック、4ドアではなく2ドア、そして5ナンバー枠に収まるコンパクトなSUVというかなりニッチな商品だった。それがいまでは「カローラ」に並ぶ100万台超えのベストセラー商品となったのである。カローラのほうが100万台超えの歴史は長く、ある時点から世界戦略車として本格的に開発されるようになったが、おそらくトヨタ自身でさえ、RAV4がここまで支持されるとは思ってもいなかっただろう。最新型の6代目は、歴史的記録を樹立した先代からのフルモデルチェンジであり、「100万台」を意識して開発された最初のRAV4でもある。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
変えたところと変えなかったところ
他人事ながら、「目指せ100万台」なんて目標を掲げられて開発チームは大変だったろうなとお察しします。自分がもしもその立場なら「100万台なんて、余計なことをしてくれたもんだ」と悪態のひとつもつきたくなってしまう。
先代と同等かそれを追い越すには、何を変えずどこを変えるか、その取捨選択が最も重要になってくる。不満が出ていた部分というのはそれを改善すればいいし、評価の高い部分はキープするかさらにステップアップすればいい。難しいのは、ユーザーから長所としても短所としても表立って出てこなかった部分、つまり可もなく不可もなくみたいな部分に手を加えるかどうかである。新型RAV4では、デザインや電子デバイスは躊躇なくアップデートするいっぽうで、それ以外の部分については大幅な刷新よりも温存を選んだようである。
例えばボディーサイズは先代からほとんど変わっていない。全長も全高もホイールベースも前後のオーバーハングまでも同値である。さらに室内寸法も前後席の距離やラゲッジルームの奥行きなどは先代の数値を踏襲している。そもそも、「GA-K」と呼ばれるプラットフォームを依然として共有しているので、ボディーのディメンションを大きく変更することは難しいとはいえ、ここまでかたくなに先代の数値を死守するのは珍しい。好評な部分はあえて触る必要なしという判断は間違いではないと思うけれど、「さらに」とか「もっと」よくしようみたいな気概が感じられないのは、個人的にはちょっと寂しい気もする。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ソフトウエア分野を大幅に強化
新型RAV4の最も注目するべき点は、見えないところにある。以前からその開発は伝えられていたものの、なかなか導入されなかった電子プラットフォームの「アリーン」が、トヨタ車としては初めてこのRAV4に採用された。自動車メーカー各社は、独自の電子プラットフォームやOSの開発を行っていて、テスラやBMW、メルセデス・ベンツなどはすでに本格導入している。そもそも、多くの電子デバイスを搭載している昨今のクルマは、それらを動かすために複数のソフトウエアも使っていて、それらを統合制御するようになってきた。
簡単に言えば、これまでドライブモードで「コンフォート」を選ぶと、パワートレインと電子制御式サスペンションだけが快適性重視のセッティングに変わっていたものが、そこに例えばリラックスできる室内イルミネーションや画面のグラフィック、運転支援システムまでもが加わるというような機構である。RAV4ではまだ運転支援とコックピットしか協調されていないそうだが、将来的にはボディーとパワートレインが含まれるようになるという。この部分に関しては、正直なところトヨタは他社に後れをとっていたので、今後の巻き返しが期待される。
日本仕様の新型RAV4はハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の2種類が設定され、それぞれ2グレードが用意されている。今回はHEVの「Z」と呼ばれる上級グレード(490万円)である。あくまでも個人的には、RAV4は試乗記を書くのが最も苦手な部類に属する一台だった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
粗探しをするならば
試乗する際は自分なりのチェックシートみたいなものが頭のなかにあって、それをひとつひとつ確かめながら運転したり触ったりしている。新型RAV4は、途中で心配になってチェックシートを繰り返し確認したものの、どの性能もあらゆる機能も極めて盤石なレベルに仕上がっていた。操縦性も動力性能も乗り心地も機能性もパッケージもイヤなところがほとんどない。正確で素直に動く操縦性、欲しいときに欲しいだけのパワーを発生しつつ燃費のいい動力性能、速度や路面への依存度が低い快適な乗り心地、運転席からの視界は良好で各種スイッチのレイアウトや使い勝手も良好、そして前席も後席も十分なスペースが確保されている。100万台も売ろうとすると、誰がどこでどんなふうに乗ってもそこそこ満足させなくてはいけないわけで、そりゃこういう乗り味になるよなと納得した。
このままだとなんだか負けた気分なので、それでも気になったところをあえて挙げてみる。ひとつはエンジンノイズである。実はPHEVにも以前試乗しており、そちらのほうがエンジン音は明らかに静かだった。聞けば、HEVとPHEVは基本的に同じエンジンではあるものの、PHEVのエンジンブロックは新開発だという。だったらHEVもすぐにそっちにすればいいのにと思ってしまうけれど、そう簡単な話ではないらしい。HEVはスロットルペダルを深く踏み込むと、それまでは静かだった室内に「ウィーン」というラバーバンドフィールのエンジン音が容赦なく入り込んできた。
新型RAV4はいわゆる万人受けするクルマとして最上級だと思う。いっぽうで、例えば同じく万人受けする「カローラ クロス」と比べて、ボディーサイズ以外に固有の特徴があるかと聞かれると答えに窮してしまう。キャラクターを際立たせる独自の乗り味がないことがベストセラー車に求められる乗り味だとしたら、それはなんだかチェーン店の鶏の唐揚げ定食みたいで、そんなもんなのかなあと自分なんかはちょっと寂しく思ってしまう。
(文=渡辺慎太郎/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタRAV4 Z
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1855×1680mm
ホイールベース:2690mm
車重:1720kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:186PS(137kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:221N・m(22.5kgf・m)/3600-5200rpm
フロントモーター最高出力:136PS(100kW)
フロントモーター最大トルク:208N・m(21.2kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:240PS(177kW)
タイヤ:(前)235/50R20 104V XL/(後)235/50R20 104V XL(ダンロップSPスポーツマックス050)
燃費:22.5km/リッター(WLTCモード)
価格:490万円/テスト車=528万6100円
オプション装備:235/50R20タイヤ×7 1/2Jアルミホイール<切削光輝+ブラック塗装>+センターオーナメント+ホイールナット(11万円)/ITSコネクト(2万7500円)/緊急時操舵支援<アクティブ操舵機能付き>+フロントクロストラフィックアラート<FCTA>+レーンチェンジアシスト<LCA>(7万8100円)/パノラマムーンルーフ<チルト&スライド連動、挟み込み防止機能付き>(14万3000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<デラックスタイプ>(2万7500円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:4016km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:275.1km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.4km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 慎太郎
-
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.26 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。
-
レクサスES350h(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.24 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。8代目となる新型ではボディーがググッと大きくなったほか、デザインも一気に現代的に。さらにトヨタグループでは最新鋭のパワーユニットを積むなど、中身も外身も刷新されている。2.5リッターハイブリッドモデルを試す。
-
マツダCX-30 25エアエディション(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.23 マツダのコンパクトクロスオーバー「CX-30」に、一部改良で2.5リッターガソリンモデルが登場。新たなパワートレインを得た最新型は、過去のモデルからどのような進化を遂げているのか? 装備全部盛りの最上級グレードで確かめた。
-
フェラーリ12チリンドリ マヌアーレ(FR/8AT)【海外試乗記】 2026.10.21 MT車が長らく不在となっていたフェラーリ。そこに突如として現れファンを驚かせたのが、MT車と同じ変速動作で運転できる「12チリンドリ マヌアーレ」だった。果たして、その乗り味は? 名コースで試乗した西川 淳の第一報。
-
トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(4WD/10AT)【試乗記】 2026.10.19 トヨタの「ランドクルーザー“300”」にハイブリッドパワートレイン搭載モデルが登場。環境負荷低減のために牙を抜かれた……どころか、電気の力を味方に、さらに力強さを増しているから面白い。愛知県のオフロードコースで乗った印象をリポートする。
-
NEW
第879回:メルセデスがうたう「想像以上」は本当か? フル電動の新型「メルセデス・ベンツCLA」に1000km乗ってわかったこと
2026.10.27エディターから一言フルモデルチェンジした「メルセデス・ベンツCLA」の中でも本命とされるのが「CLA with EQテクノロジー」。新世代EVをアピールするメーカーのうたい文句は本当なのか、北海道で1000km乗って確かめた。 -
NEW
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】
2026.10.27試乗記ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。 -
NEW
「乗り物酔いしやすいクルマ」と「酔いにくいクルマ」の違いは?
2026.10.27あの多田哲哉のクルマQ&A乗り物酔いしやすい同乗者がいると、ドライバーは運転に気を使う。では、クルマの側にはその要因はないのだろうか? 「酔いやすいクルマ」を見極めるポイントを、車両開発者の多田哲哉さんに聞いた。 -
2026-2027 Winter webCGタイヤセレクション
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2026-2027のウインターシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけたスタッドレスタイヤか。各社自慢の最新モデルの実力を検証する。 -
新山千春 ダンロップのWINTER MAXX ICE ProとSYNCHRO WEATHERを試す
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>俳優/タレントとして活躍し、クルマ好きとしても知られる新山千春さんが、ダンロップの最新スタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」とオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を乗り比べ。キャラクターの異なる2つのタイヤは、それぞれどんな人におススメか? -
試して分かったブリヂストンのSUV向け冬用タイヤ「ブリザック アイスピーク」の実力
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>ブリヂストンからSUV向けとなるスタッドレスタイヤの新製品「ブリザック アイスピーク」が登場。氷上・雪上性能を高め、摩耗ライフも大幅に向上させたというその実力を、モータージャーナリストの斎藤 聡さんと自動車ライターの伊藤 梓さんがチェックした。






















































