トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)
売れるのも当然 2026.08.29 試乗記 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。販売台数が爆増
bZ4Xツーリングは、その名のとおりのbZ4Xのステーションワゴン版だ。ベースとなったハッチバック……というかSUVのbZ4Xといえば、トヨタ初の本格量産BEVとして2022年春に発売されるも、直後のリコールや販売休止などの影響もあり、販売は低迷した。
しかし、そのbZ4Xは昨2025年10月の大幅改良で、一充電走行距離を約3割増させると同時に、内外装の質感や使い勝手も向上、本体価格も下げた。さらに新充電サービス「TEEMO」のお得感もあって、bZ4Xの販売は急増……というか、改良直後の3カ月(2025年10月~12月)の国内販売台数≒登録台数は前年同期比の22倍を記録! それまでの3年間がウソのような急伸となった。
その勢いは年が明けた2026年も衰えないどころか、今回の主役でもあるツーリングが追加されたことで、さらに加速。(ツーリングを含む)bZ4X全体の国内登録台数は、2月と3月で前年同月比で90倍以上(!!)となった。
その結果、bZ4X/bZ4Xツーリングの2026年上半期(1月~6月)の国内登録台数は前年同期比の約70倍にあたる1万3777台となり、1万0012台を売り上げた日産の「リーフ」、同じく4972台の「サクラ」をおさえて、国産BEV登録台数でトップとなった。
ちなみに、国内BEV販売の純粋なトップは、盛んに報道されているようにテスラだといわれている。また、クルマの魅力に補助金バブルまで加わって大バズり中の「ホンダ・スーパーONE」だが、生産能力の限界もあってか、ここまでの登録台数はbZ4X/同ツーリングのそれにおよばず、さらに直近7月の登録台数は、熊本地震の影響もあって減少している。
主な相違点はリアにあり
というわけで、bZ4Xツーリングである。リアドアより前の基本デザインは昨2025年10月発売の最新改良版bZ4Xと変わらず、ホイールベースも同寸。リアオーバーハング延長分の140mmが、そのままbZ4Xとの全長差になっている。諸元上は全高もツーリングが25mm大きいが、これも実質はルーフレール分だ。
総電力量74.69kWhの三元系リチウムイオン電池を筆頭とする基本メカニズムもbZ4Xに準じるが、乗員や荷物が多めになりがちなステーションワゴンであることを意識してか、今回試乗した4WDのリアモーターだけは、ベースのbZ4Xよりも強化される。細かくいうと、bZ4Xのリアはフロントより低出力型のモーターとなっているのに対して、ツーリングのそれはフロントと同じモーターが選ばれている。それでも、同じ「Z」グレードの4WDで比較すると、車検証重量はbZ4Xより30kg重いだけ。そして、ご想像どおり、それはすべて後ろの軸重で増加している。
一充電走行距離(WLTCモード、以下も同様)はツーリングのほうが基本的に数km短い。ただ、今回の試乗車のような“20インチホイールをオプション装着した4WD”という条件だと、一充電走行距離はbZ4Xの622kmに対して、ツーリングは627kmとなぜか逆転する。その理由は定かではないが、ツーリングでも、実際の航続距離は“誤差”と呼べるくらいの差でしかないということだ。
ツーリング最大の特徴である荷室は、bZ4X比で奥行きが約10cm、フル乗車時の容量が130リッター以上大きい。荷室側からもシートバックを倒せるリモートレバーが追加されるのもステーションワゴンらしい。それでいて、本体価格はbZ4Xの25万~40万円高。KINTOのようなサブスクだと、条件にもよるが月額で数千円レベル上乗せするだけで、この荷室が追加されるのだから、ツーリングにより魅力を感じる向きも少なくないだろう。
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熟成が進んだパワートレイン
荷室以外のクルマとしての魅力や味わいは、当たり前だが、bZ4XツーリングはbZ4Xによく似ている。初期のbZ4Xではペダル操作と実際の加減速に分かりやすいラグがあったアクセルレスポンスは、明確にタイトになっている。そのかわり、停止や減速の状態からガバッとベタ踏みするような下品なアクセル操作では、従来はあまりなかったショックが感じられるケースが、ときおりある。こうした“ショック”と“ラグ”の間を突くサジ加減は、BEVの味付けではキモのひとつで、ツーリングを含むbZ4Xは、そのあたりも熟成が進んでいる。
もっとも、こうしたパワートレインのしつけでは、国産BEVだと、まだまだ日産がいちばん上手い。たとえばリーフなどは、ガバ踏みでもショックをほとんど感じさせないのに、同時に右足にリンクした加速もきっちり匂わせてくれる。次点は個人的にはホンダだと思う。ラグの詰めかたでは日産に一歩ゆずるものの、中間域の穏やかさとリニア感の両立表現が見事だ。少なくともパワートレインの味付けでは、トヨタのBEVは、日産やホンダの域にはまだ達していないように思える。
とはいえ、今回のbZ4Xツーリングを単独に乗っているかぎり、以前よりパワートレインはリニアになっているし、静粛性の高さはbZ4X系の美点でもある。
また、エネルギーロスを従来比で約40%も低減した新開発eアクスルのおかげか、箱根のような急な山坂道で遠慮なくアクセルを踏んでも、電池残量が目に見えて……みたいな事態にはならない。今回の取材は真夏日(猛暑日ではない)におこなわれたが、プレコンディショニング機能を使わずとも、ベーシックな90kW出力の急速充電器につないだ直後から、80kW以上で元気よく電気を飲んでくれたのも気持ちよかった。
スルリと曲がってシレッと速い
ツーリングを含むbZ4Xの4WDは、前輪:後輪=70:30~30:70の間でトルク配分するという。最新トヨタ車の例にもれず、ブレーキによる「アクティブコーナリングアシスト」も備わっていて、センター画面でモニターすると、走行中は緻密にトルク配分するとともに、旋回時には主にイン側のタイヤにブレーキを作動させている。
その駆動配分は基本的に安定志向で、リアモーターが強化されたとはいえ、フェイントめいた運転をしても、これ見よがしに後ろから曲がっていくような挙動にはならない。と同時に、明確なアンダーステアにおちいることもなく、全域で安定していて、それでいてスルリと曲がってシレッと速い。
ただ、車重や重量配分の影響もあるのか、以前に乗った最新改良版bZ4Xより、乗り心地はストローク感があって穏やかに感じられた。そのぶん、上屋の上下動は少し増えているものの、路面からの突き上げはマイルドなので、ツーリングのほうを快適と感じる向きも少なくないと思われる。
bZ4Xツーリングがスポーツカー的な走りをさせても素直に楽しいのは先述のとおりである。ただ、ベースのbZ4Xと比較すると、日常域でのステアリングの手応えがわずかに希薄で、操舵時に少しばかりオーバーシュート感が生じている。これもツーリングならではの重量配分の影響かもしれない。
とはいえ、初期のbZ4Xと比較すると、このツーリングも(荷室にとどまらない)使い勝手、航続距離、電費、充電性能、乗り味……のすべてで別物といえるほど進化している。さらに例のTEEMOの魅力も加えれば、なるほど、国産BEVではもっとも商品力にあふれた一台だとは思う。今年度のCEV補助金も当然のように、満額の130万円が出る。売れるのもわかる。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
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テスト車のデータ
トヨタbZ4XツーリングZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1860×1675mm
ホイールベース:2850mm
車重:2030kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:227PS(167kW)
フロントモーター最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
リアモーター最高出力:227PS(167kW)
リアモーター最大トルク:268N・m(27.3kgf・m)
システム最高出力:380PS(280kW)
タイヤ:(前)235/50R20 104V XL/(後)235/50R20 104V XL(ダンロップSPスポーツマックス060)
一充電走行距離:627km(WLTCモード)
交流電力量消費率:134Wh/km(WLTCモード)
価格:640万円/テスト車=662万3520円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルブラックシリカ×ブリリアントブロンズメタリック>(5万5000円)/225/50R20タイヤ&20×7 1/2Jアルミホイール<ブラック塗装、マットブラック塗装エアロホイールカバー、センターオーナメント付き>(8万2500円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(4万1800円)/前後2カメラドライブレコーダー<TZ-DR210>(4万4220円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:3043km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:377.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.3km/kWh(車載電費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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