どんどん伸びる新型BEVの航続距離 “買いの数字”はどれくらい?
2026.05.18 デイリーコラム15年で隔世の感
電気自動車(BEV)のWLTCモード一充電走行距離(バッテリーを満充電にした状態で、どれだけの距離を走行できるか)は700km超えが目につくようになってきた。グレードによって数値は異なるが、「日産リーフ」で最高値を示すのは「B7 X」の702kmである。「トヨタbZ4X X」(FWD)は746km、姉妹車ともいえる「スバル・ソルテラET-TS」(FWD)も同数値だ。bZ4X/ソルテラをベースにリアのオーバーハングを延ばして荷室容量を拡大した「トヨタbZ4Xツーリング」と「スバル・トレイルシーカー」は最大734kmを示す。
ソルテラの初期型は最大567kmの数値を示していたが、商品改良でバッテリーやeアクスル(モーター+インバーター+減速機)の効率改善を行い、大幅に航続距離を伸ばしている。その理由をメーカーは「航続距離に対するお客さまの不安を払拭するため」と説明する。日産リーフの場合もトヨタbZ4Xツーリングもやはり、メーカーは航続距離の伸長を大きなセールスポイントに掲げ、距離を伸ばした理由について「お客さまの安心感のため」と話す。日産は新型リーフの航続距離を説明するにあたり、ユーザーの安心感を得るには日本と欧州では600km、米国では300マイル(約483km)がマジックナンバー(商品やサービスを継続利用する可能性が高くなる数字)だと説明した。
思えば、2010年に発売された初代リーフが搭載するバッテリーの容量は24kWhだった。現在ならプラグインハイブリッド車(PHEV)が搭載するバッテリー並みの容量である。JC08モードによる一充電走行距離は200kmだった。
筆者が家族とともに沖縄を訪れ、レンタカーの日産リーフを借りたのは2012年12月のことだった。借り出した際は満充電になっており、メーターの走行可能距離は155kmを示していた。滞在2日目、借り出しから82.8km走ったところで最初の急速充電を行った。このとき、航続可能距離は28kmになっていた。実質的には満充電で110km程度走行できることになる。あちこちに充電器(普通充電も含めて)があるわけではないので、20~30km分は残すつもりで走りたい。
となると一充電あたりの実質的な走行距離は80~90kmとなる。滞在2日目以降は、まず充電スポットをチェックし、これを起点に観光プランを立てるようになった。順番が違っており、充電優先のプランに付き合わされる家族は不平タラタラであった。
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決め手は“実質500km”
一充電走行距離670kmの「日産リーフB7 G」(3代目の「プロパイロット2.0」装着車)を借りて4日間をともに過ごしたのは2026年3月のことだった。バッテリー容量は78kWhで、初代リーフ登場時の3.25倍にふくれ上がっている。東京を起点に関東近県を移動したにすぎないが、4日間で386.2km走り、平均電費は6.4km/kWhだった。満充電で約500km走る計算になる。
急速充電を経験したかったので残量が47%ある時点でつぎ足し充電をしたが、借り出し期間中の走行距離が386.2kmなら充電なしでクリアできる。初代リーフなら3~4回は充電が必要だったはずだ。
カタログ値で700km、実質的に一充電で500km前後走ることができれば、電欠に対する不安なく走れるというのが筆者の現時点での実感である。正直、新型リーフで4日間をともに過ごした際は、「これだけの航続距離があるなら自宅に充電器がなくてもBEVと過ごせるのでは」と感じたほどだ。もっとも、BEVオーナーに言わせると、自宅で充電できないと不便で仕方ないらしいが……。
月に500km程度走行するユーザーなら、充電は月に1回のペースで済む。高速道路を使って遠出をする使い方はせず、通勤や買い物など、近場を移動するだけの使い方なら、実質500kmの走行距離は要らないかもしれない。「ホンダN-ONE e:」に乗ったときにそう感じた。この軽BEVの一充電走行距離は295km、バッテリー容量は29.6kWhである。
都内を軽く移動した際のN-ONE e:の平均電費は9.8km/kWhだった。車重が軽い(1030kg)ことを差し引いても超優秀な数値だと思うが、この場合、満充電で実質的に約290km走ることになる。チョイ乗りの繰り返しで自宅に充電器があるなら、日常使いとしては十分な性能だろう。この条件なら、「日産サクラ」の一充電走行距離180km、バッテリー容量20kWhですら十分かもしれない。
要は使い方次第なのだが、たまに遠出もするような使い方を想定するなら、カタログ値で700km、実質500kmの一充電あたり航続距離は、BEVのマジックナンバーだと思う。
(文=世良耕太/写真=スバル、本田技研工業、トヨタ自動車、BMW、webCG/編集=関 顕也)
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世良 耕太
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