BMW X3 20 xDriveオリジナル(4WD/8AT)/X3 20d xDriveオリジナル(4WD/8AT)
市場へのメッセージ 2026.09.12 試乗記 「BMW X3」に新たなエントリーグレードの「オリジナル」が登場。装備の厳選によって価格抑制を図ったとのことだが、人気のディーゼルエンジン搭載車では、なんと基準車から100万円近く引き下げたというから見逃せない。安かろう悪かろうのはずはないと思いつつも、その仕上がりをチェックした。最適化の意味とは
BMWが新たに設定したオリジナルというグレードの「1シリーズ」「X1」に試乗した。いずれもBMWの原点を見つめ直し、クルマの本質を追求したというモデルである。もう一度確認しておくが、BMWはオリジナルのシリーズを廉価版とは考えていない。「駆けぬける歓び」「BMWらしいデザイン」「最新のデジタル体験」「安心と安全(先進運転支援システム)」の4項目を重視して装備内容を厳選したモデルという位置づけだ。
従来のモデルからの引き算ではなく、装備の最適化だと主張している。最適化という言葉は、ある条件(制約)を守りながら、目的とする数値や成果を「最大」または「最小」にする一番よい答え(最適解)を見つけることを意味する。多くのユーザーに届けるという意味でマーケティング的には正しいが、最適解はともすれば無難な選択に収まってしまうことになりかねない。BMWは最大公約数的な商品とは対極のものづくりを志向してきたメーカーだったはずだ。元からあった魅力が最適化で失われてしまったのでは元も子もない。
そんなことはもちろん承知のうえだろう。市場に最適化するということではなく、BMWを好むユーザーにとっての価値を高めることを目指している。「120オリジナル」と「X1 sDrive20iオリジナル」は、コアの要素を損なうことなく手に入れやすい価格のモデルに仕上がっていた。「BMWらしさを味わえる」×「日本で日常的に使える」×「比較的現実的な価格」という3つの条件が重なるポイントを追求しているのだと思う。
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引き算と足し算
今回試乗した「X3 20オリジナル」は、BMWの新世代モデル「iX3」が登場したことで直接的な影響を受けるはずだ。ほぼ同じサイズのプレミアムSUVであり、将来を見据えたiX3に対して旧世代ととらえられてしまう。存在意義が問われるといってもいいかもしれない。
廉価版ではないといっても、価格はオリジナルの大きな魅力だ。昨今はクルマの価格が急激に上昇していて、それは輸入車も国産車も同じ。円安・インフレ・人件費や材料費の高騰が原因なので、避けようがないのが実情である。X3 20オリジナルは、従来モデルよりマイナス51万円の767万円。ただし、この従来モデルというのは2026年5月末に販売が終了しているので、現状での比較対象ではない。
もう1台用意されていた「20d xDriveオリジナル」は885万円の「20d xDrive Mスポーツ」に比べると98万円安い787万円である。ただし、試乗車には60万円の有料オプション「Mスポーツパッケージ」が付けられていた。オリジナルは引き算で生まれたグレードではないとの説明だが、ここでは明らかに足し算が行われている。どうしてもMスポーツが欲しいという顧客が多いのだと推察するが、ややこしくて設定にブレが生じているように感じた。
BMWにとって不可欠な要素とは
X3オリジナルで外された装備は「タイヤリペアキット」「フロントランバーサポート」「アダプティブLEDヘッドライト」「harman/Kardonオーディオ」「3ゾーンオートマチックエアコンディショナー」。オリジナルが重視するのは「駆けぬける歓び」「BMWらしいデザイン」「最新のデジタル体験」「安心と安全(先進運転支援システム)」という4つのポイントで、オーディオやエアコンがそこに含まれないのは理解できる。
20d xDriveオリジナルのホイールサイズは18インチである。プレミアムSUVとしてはやや小径だが、見栄えよりも乗り心地を重視しているのだろう。少し気になったのは、タイヤリペアキットが装備されないこと。1シリーズやX1でも同じだ。確かに、道路運送車両法や保安基準では、スペアタイヤ、パンク修理キットの搭載義務はない。BMWでは登録から3年間のタイヤパンク補償が用意されているし、どうしても欲しければディーラーオプションで購入することもできる。オリジナルのコンセプトに沿った判断なのだとは思うが、オーディオやエアコンとは意味合いが違うようにも思える。
20d xDriveオリジナルはディーゼルの太いトルクが重厚感をもたらす。よりSUVらしい乗り味が味わえるのはこちらだろう。Mスポーツパッケージが付いているから、スポーツサスペンションと19インチホイールが装備されている。シルバーウィンドウモールディングが施されるなど、内外装も高級感があって、気分はいい。ただ、それがBMWにとって不可欠な要素なのか。オリジナルがBMWの原点を追求するというなら、やはり焦点が定まらない印象が残った。
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粋で愛らしいデジタル技術
スマートフォンとの連携やOTA(無線通信)による機能更新は、クルマにとって不可欠なデジタル技術となった。ただ、使い勝手に関しては少し事情が違う。単にスマホやタブレットに寄せていけばいいというものではないだろう。物理スイッチをなくしてすべてをタッチパネル操作に統合する試みは、十分な成果を上げることができなかった。デジタルを生かしながらも、人間の感覚に合わせたデバイスでなければならない。
デジタル技術を使った装備ということでは、BMWにはとても粋な意匠の時計がある。通常はディスプレイに普通の時計が表示されているが、スクロールすると漢字と漢数字が正方形に並べられた画面が姿を現す。文字で時間を表示するアート時計「QLOCKTWO(クロックツー)」のデジタルウィジェットだ。文字の一部がハイライト表示され、「現在の時刻は二時四十分です」などの文章が読み取れる。5分ごとに変化し、「あと五分で三時です」という表現になることもあった。
運転しながら読み取るのは危険であり、実用的とはいえない機能だ。不要不急ではあるが、なんとも愛らしい。使いようによってデジタル技術は機知に富んだアナログ芸を見せることだってできる。クロックツーはもともと卓上時計や腕時計として世界中で販売されている。10万円を超えるプライスタグを付けた製品もある高級品なのだ。BMWに採用されているのはデジタルで表現されたウィジェットなので、この機能を省いても10万円安くはならない。
裾野を広げる試み
価格高騰でクルマが手に入れづらくなっているが、プレミアムブランドへの憧れは変わっていないとBMWは考えている。ならば、クルマの価値を再設定することで幅広いユーザーにアピールするべきだ。それでオリジナルが生まれたのだろう。円安の逆風下でも価格を下げることができる、というメッセージを市場に送ることの意義は大きい。
1980年代から1990年代にかけて、ドイツ車には入口となるモデルがあった。「メルセデス・ベンツC180」や「BMW 318i」などで、まずはブランドを知ってもらい、その後に上級車にアップグレードしてもらう狙いである。現在では若者が気軽に買える手ごろなモデルがなかなか見つからず、裾野を広げるのが困難になっている。オリジナルはそこに風穴を開けるための試みといっていい。
かつての廉価版モデルはエンジンが非力で見た目が安っぽい代物も多く、ブランドの価値を損なう可能性もあった。オリジナルはBMWらしさを凝縮したモデルで、低価格は結果にすぎないというのがコンセプトである。ユーザーが「安いBMW」ととらえたのでは失敗だ。合理的でスマートな選択をしたと感じさせることが肝要で、X3オリジナルにはそのための仕掛けが巧みに詰め込まれている。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
BMW X3 20 xDriveオリジナル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1920×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:1890kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:190PS(140kW)/5000rpm
エンジン最大トルク:310N・m(31.6kgf・m)/1500-4000rpm
モーター最高出力:11PS(8kW)/3000rpm
モーター最大トルク:25N・m(2.6kgf・m)/500rpm
タイヤ:(前)225/60R18 104Y XL/(後)225/60R18 104Y XL(ネクセン・エヌフィラ スポーツ)
燃費:16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:767万円/テスト車=767万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:820km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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BMW X3 20d xDriveオリジナル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4755×1920×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:1930kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:197PS(145kW)/4000rpm
エンジン最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1500-2750rpm
モーター最高出力:11PS(8kW)/3000rpm
モーター最大トルク:25N・m(2.6kgf・m)/500rpm
タイヤ:(前)245/50R19 105Y XL/(後)245/50R19 105Y XL(ネクセン・エヌフィラ スポーツ)
燃費:19.8km/リッター(WLTCモード)
価格:787万円/テスト車=847万円
オプション装備:Mスポーツパッケージ(60万円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:456km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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