自動パーキングシステムの駐車作業は、人間が行うよりも速く正確になりうるか?

2026.09.15 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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近年の運転支援システムにみられる「パーキングサポートシステム」は、便利ではありますが、人間が駐車する場合に比べて時間がかかっている印象があります。これはいつか、人を凌駕(りょうが)するようになるでしょうか? 

結論から言うと、いつかではなく「もうすでになっている」というのが答えです。

これは中国の現地事情に詳しい方から聞いた話なのですが、中国では防空壕(ごう)を兼ねた広大な地下駐車場を、マンションなどの地下に国策で整備しています。そしてそうした地下駐車場は、「自動駐車機能」とセットでインフラが構築されているのです。

クルマに駐車スペースを学習させると、駐車場の入り口で車両から降りて放置しておくだけで、空のクルマが自ら地下の駐車スペースまで行って止まり、必要なときは呼べば出てくる。そんなシステムがすでに実用化されているわけです。

電波の通りにくい地下で、GPSなどの位置情報をどうやって得ているのか? という点については、以前であれば「高精度な地図データ」や「LiDAR(ライダー)」などが不可欠と思われていましたが、今はそんなものに頼ってはいません。カメラの画像認識技術と、それを処理するAIの技術がここ数年で爆発的に進化したため、カメラとAIの働きでスムーズな自動駐車や自動運転が行えるようになっています。

人間が目視で確認してハンドルを操作するよりも、もはや機械まかせにしたほうが……というのが現実です。駐車作業の精度の面でもスピードの面でも、自動駐車のシステムはすでに人間を超えたレベルにあるといえるでしょう。

質問に対する答えは以上ですが、それにしても、なぜこれほどまでに中国の自動車産業は開発スピードが速いのか? それはまず単純に「同程度の能力の人間が2倍の時間をかけて働いているから」。何か特別な開発手法があったり、飛び抜けて優秀なエンジニアがいたりというわけではないようです。日本で労働環境の整備が進む一方、中国では12時間交代の2シフトで24時間365日、手を休めることなく開発を続けています。同じ課題に対して2倍のスピードで物事を進めれば、圧倒的な差が出るのは当然です。

かつての日本も、それこそ私たちが会社に入ったころは、夜遅くまで仕事に取り組み課題解決に没頭するのが当たり前という時代でした。今の中国は当時の日本以上のハードさで突き進んでいます。

しばしば「日本のエンジニアが自信やモチベーションを失っている」という議論も耳にしますが、こうした「圧倒的な作業量とスピードの差」にどう対抗していくかという、根本的な働き方や開発構造の課題に直面している面もある。これにどのように立ち向かっていくかは、日本の自動車産業の将来を決める大きな鍵となるはずです。

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多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。