第879回:メルセデスがうたう「想像以上」は本当か? フル電動の新型「メルセデス・ベンツCLA」に1000km乗ってわかったこと
2026.10.27 エディターから一言 拡大 |
電動化時代を見据えて開発された、メルセデス・ベンツの新世代コンパクトモデル「CLA」。その本命ともいえる電気自動車(BEV)「CLA250+ with EQテクノロジー」の実力を確かめるべく、北海道で2日間、約1000kmを走るロングドライブを実施した。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
一般道/高速道路それぞれのパフォーマンスを知る
新型CLAは、メルセデスの新世代プラットフォーム「MMA」を採用したモデルだ。BEVのCLA250+は800Vの高電圧システムと、使用可能容量85.5kWhの駆動用バッテリーを搭載。リアアクスルには最高出力200kW(272PS)の電動駆動ユニットを備え、後輪を駆動する。
なかでも注目したいのが、一般的なBEVでは珍しい2段のオートマチックトランスミッションだ。1速は発進加速や低中速域の、2速は高速巡航時の効率を重視した設定で、モーターの回転数を適切に保つことができる。さらにCd値(空気抵抗係数)0.21という優れた空力性能も備え、WLTCモードの一充電走行距離は771kmに達する。
今回は、その電費性能を実際の走行で確かめようという企画だ。しかも2段式トランスミッションを備えるだけに、走行速度による電費の違いも興味深い。技術資料によれば、1速から2速へのシフトアップは低負荷時で約70km/h、高負荷時では約100km/hを目安に行われる(手動での変速はできない)。そこで、制限速度50~60km/hの区間が大半を占める一般道主体の初日と、高速道路主体の2日目というルートを設定した。1速主体と2速主体、それぞれの走行環境で電費を計測してみようというわけだ。
出発地点は、知床ウトロにある「北こぶし知床 ホテル&リゾート」。ホテルには充電設備があり、CLAのバッテリーはSOC(充電率)100%。準備万端でのスタートとなった。
初日はオホーツク海沿いを半時計回りに走り、宗谷岬を経由して日本海側の留萌を目指す。翌日は深川から道央自動車道に入り、函館空港まで南下する。北海道の北東部から最北端を経由して南西部へ。2日間で1000km以上。これだけ走っても北海道から一歩も出ないのだから、あらためてその広さを実感する。
回生機能は上手に生かして
知床を出発して、まず立ち寄ったのは網走近くの能取湖。お目当てはサンゴ草だ。正式にはアッケシソウという塩生植物で、秋になると真っ赤に色づく。ちょうど見ごろを迎えており、湖畔には赤いじゅうたんを敷き詰めたような光景が広がっていた。白いCLAとの対比も鮮やかで、しばし撮影に時間を費やす。電費を稼ぐには一定の速度で走り続けるのが理想だが、旬の景色に出会ってしまうとそうもいかない。
能取湖を後にして、さらにオホーツク海沿いを北上。昼時になったので、道の駅おうむに立ち寄り、近くのそば屋で昼食をとることにした。
注文したのは山かけそば。長距離ドライブでは食後の眠気を避けたいので、比較的GI値の低い(=血糖値の急上昇を抑えられる)そばを選んだというわけだ。店内は地元のお客さんでにぎわっていた。こうしたロングドライブ企画では、高速道路のサービスエリアで食事を済ませることも多いが、今回は一般道が主体。街のそば屋で地元の人たちに交じって食事ができるのが、なんだかうれしい。
その後もオホーツク海沿いを北上し、日本最北端の宗谷岬に到着した。三角形のモニュメントの向こうには宗谷海峡が広がる。しかし、この日は風が強く、とにかく寒い。念のために持参した厚手のジャケットを引っ張り出して羽織った。まだ9月の終わりだというのに、さすがは日本最北端である。
宗谷岬に到着した時点で、知床からの走行距離は372km。16時ごろに出発し、ここからは日本海側を南下して留萌を目指す。しばらくすると日も暮れ、あとはひたすら走るのみとなった。
北海道の道というと、平たんな直線路が延々と続くイメージがあるが、実際には意外とアップダウンもある。そこで気を使ったのが、下り坂での走らせ方だ。回生なしとなる「D+」を選択し、アクセルを戻して惰性で走るコースティングは、BEVのエコドライブの基本ともいえ、下り坂では自然と速度が伸びていく。回生ブレーキを使わず、できるだけ長く転がしたほうが効率がよさそうにも思える。しかし、速度が上がれば空気抵抗も増大する。制限速度を守りつつ、必要以上に速度を上げないよう、適度に回生ブレーキも活用した。「D-」の強い回生を選択し、アクセルの戻し具合で速度をコントロールするのだが、CLAのペダルは微妙なアクセル操作にも忠実に反応してくれるのでありがたい。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
マシンとして洗練されている
今回、電費を意識しながら走っていてあらためて感心したのが、CLAの走りの洗練度だ。とりわけコースティングが気持ちいい。アクセルを戻すと、クルマが実に滑らかに、スーッと転がっていく。駆動系の機械的な洗練度の高さが伝わってくる。Cd値0.21という優れた空力性能も効いているのだろう。エネルギーを節約するための運転操作が、そのまま走る気持ちよさにつながっている。
ステアリングフィールもいい。操舵に対するノーズの反応が素直で、狙ったラインに気持ちよく乗せられるうえ、コーナリング中の姿勢も安定している。電費を稼ぐには、必要以上に減速せず、速度変化を小さくすることも大切だ。もちろん安全が最優先だが、CLAなら無理なく適切なコーナリングスピードを維持できる。こうしたシャシー性能の高さも、効率よく走るうえでの助けになっているのだ。
18時15分、道の駅てしおに到着。走行距離は465kmとなった。そこからさらに南下を続け、留萌に到着したのは21時過ぎ。知床からの走行距離は577kmで、平均電費は10.4km/kWhだった。
撮影のために何度も停車しているので、所要時間はかなり長い。それでもメーターに表示された平均速度は49km/h。一般的な郊外路と比べても高い数字だ。信号が少なく、一定の速度で走りやすい北海道ならではの道路環境が、電費にも好影響を与えたのだろう。
驚いたのは、バッテリー残量がまだ36%あり、航続可能距離が333kmと表示されていたことだ。すでに走った577kmと合わせると910km。カタログのWLTCモード航続距離771kmを139km、約18%も上回る計算になる。もちろん残り333kmは推定値だが、初日からCLAの電費性能の高さを実感する結果となった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
公称「771km」は軽々クリア
翌朝はホテルから約3kmの留萌ICで深川留萌自動車道に入り、深川JCTから道央自動車道へ。2日目は高速道路主体の走行となる。
ところが、午前中はあいにくの激しい雨。タイヤが大量の水を押しのけながら走るため、電費にとっても好条件とはいえない。しかも高速道路では速度が上がるぶん、空気抵抗も増大する。
初日の一般道で記録した10.4km/kWhに対し、2日目の電費は樽前サービスエリア(SA)の時点で9.0km/kWh。それでも、高速巡航時の効率向上を狙った2速トランスミッションが、電費の悪化を抑えることに貢献しているのだろう。
樽前SAに到着した時点で、知床からの走行距離は789km。すでにWLTCモードの一充電走行距離771kmを超えていた。しかも、メーターの航続可能距離を見る限り、次の有珠山SAまでは走れそうだ。
そこで充電せずに走行を続けたのだが、有珠山SAが思いのほか高い場所にあることを忘れていた。手前は上り坂が続き、電費もやや悪化したものの、無事に到着することができた。
ここまでの走行距離は852km。WLTCモードの771kmを、実際の走行で81kmも上回ったことになる。しかも、2日目は高速道路主体で275kmを走り、午前中には激しい雨にも見舞われた。それでもこの数字を記録したのだから、CLAの航続性能はなかなかのものだ。
ここでようやく充電することにした。少し早い時間だが、充電中に昼食をとるにはちょうどいい。サービスエリアの食事とはいえ、北海道らしいメニューが充実している。黄金豚のしょうが焼き定食と帆立づくし定食で迷った末、前者を選択。初日は地元のそば屋、2日目はサービスエリア飯。食事のスタイルまで、今回のルート設定を反映することになった。
充電と昼食を終えて外に出ると、午前中の激しい雨がウソのようにあがっていた。それどころか、雲の切れ間から青空までのぞいている。ゴールの函館空港までは残り177km。しかも、ここからは下り基調のルートだ。気分よくCLAを走らせる。
下り坂ではコースティングを積極的に活用した。もちろん、速度が上がりすぎないように注意しながらだが、アクセルを踏まずにスルスルと距離を稼げるのは気持ちがいい。
途中、八雲PAでひと休み。ここは噴火湾を見渡せる高台にあり、眺望が大きな魅力だ。せっかく天気も回復したので、しばし撮影タイムとした。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
高速域での電費に感心
その後も順調に走り、函館空港に到着。2日間にわたるロングドライブを終えた。下り基調のルートも幸いし、2日目の電費は有珠山SA到着時の8.8km/kWhから9.2km/kWhにまで回復。一般道主体だった初日の10.4km/kWhに対し、高速道路主体の2日目は9.2km/kWh。全行程1029kmの平均電費は9.8km/kWhという結果になった。
ここで、CLAの電費性能をあらためて考えてみたい。
カタログに記載されたWLTCモード電費は132Wh/km。内訳を見ると、市街地モードが125Wh/km、郊外モードが129Wh/km、高速道路モードが138Wh/kmとなっている。市街地に対する高速道路の消費電力量の増加率は、わずか10.4%だ。
ちなみに、2021年に登場した「EQA」の改良型、「EQA250+」では、市街地モードの129Wh/kmに対して高速道路モードは153Wh/kmで、増加率は18.6%だった。車体形状や空力性能の違いもあるため単純比較はできないが、世代の新しいCLAでは高速域での効率改善が際立っている。
今回の実走でも、一般道主体の初日は10.4km/kWh、高速道路主体の2日目は9.2km/kWhだった。これを消費電力量に換算すると、それぞれ約96Wh/kmと約109Wh/km。増加率は約13%で、カタログ値の10.4%よりは大きい。ただし、初日の一般道が非常に好条件だったことに加え、2日目の午前中には激しい雨にも見舞われている。単純に数字だけで比較できるものではない。
とはいえ、高速道路での電費悪化が比較的小さく抑えられていることは確認できた。高速巡航時にモーターの回転数を抑える2段式トランスミッションは、そのための重要な技術のひとつだろう。もちろん、Cd値0.21という優れた空力性能なども貢献しているはずだ。
そして、CLAの魅力は高速電費だけではない。そもそもの電費性能が優れている。今回は信号が少なく、一定の速度で走りやすい北海道の道路環境に恵まれ、エアコンの負荷も比較的小さかった。一方、両日ともスタート時はバッテリーが冷えており、2日目は激しい雨に見舞われるなど、電費にとって必ずしも有利な条件ばかりではなかったわけだ。
それでも、充電前にはWLTCモードの航続距離771kmを超える852kmを走り、2日間の総走行距離は1029kmに達した。これまでにも1000km級のロングドライブは何度となく経験しているが、今回は不思議と疲れが少なかった。音や振動の少ないBEVならではの快適さに加え、アクセルやステアリングの操作に素直に応えるCLAの優れたドライバビリティーも効いているのだろう。電費のよさを確かめる旅だったが、最後に強く印象に残ったのは、走ることそのものの気持ちよさだった。
(文=石井昌道/写真=三浦孝明/編集=関 顕也/取材協力=メルセデス・ベンツ日本)
【Movie】メルセデスがうたう「想像以上」は本当か? フル電動の新型「メルセデス・ベンツCLA」に1000km乗ってわかったこと
(このリポートをYouTubeの動画で見る)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツCLA250+ with EQテクノロジー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1835×1470mm
ホイールベース:2790mm
車重:2050kg
駆動方式:RWD
モーター:永久磁石同期式電動モーター
最高出力:272PS(200kW)
最大トルク:335N・m(34.2kgf・m)
タイヤ:(前)225/40R19 93W/(後)255/35R19 99W(ブリヂストン・トランザ6)
一充電走行距離:771km(WLTCモード)
交流電力量消費率:132kWh/km(WLTCモード)
価格:775万円/テスト車=840万8000円
オプション装備:AMGラインパッケージ(59万8000円)/ボディーカラー<ポーラーホワイト>(6万円)

石井 昌道
-
第878回:スタッドレスタイヤなのにドライとウエット性能を強化? 「ミシュランX-ICE SNOW+」の走りを試す 2026.10.23 2026年8月に発売された「ミシュランX-ICE SNOW+」は、氷雪路でのパフォーマンスはそのままに、ドライ/ウエット路面での性能向上を目指したという最新スタッドレスタイヤだ。冬道のさまざまな路面状況において安心感を提供するという、その走りを報告する。
-
第877回:大矢アキオ ロレンツォ視点のパリモーターショー2026 「ケーキを食べればいいじゃない」の革命前夜か 2026.10.22 大矢アキオによるパリモーターショー2026の会場リポート。モーターショー不要論が叫ばれた数年前と比べて出展メーカー数は回復しているものの、訪問者の行動を見ると、やはり時代が変わったことを痛感する。自動車業界に革命が起きる日は意外と近いのかもしれない。
-
第876回:“ヨコハマ史上最高”が目白押し SUV向けスタッドレスタイヤの新製品「アイスガード8 SUV」を試す 2026.10.2 2026年9月1日に販売が開始された横浜ゴムのSUV用スタッドレスタイヤ「アイスガード8 SUV」。従来製品との比較で氷上性能を14%、雪上性能を4%、耐摩耗性能を11%アップさせたというその実力を、一足先に冬のテストコースで確かめた。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
NEW
ダイハツ・ミラ イースtuned by D-SPORT Racing(FF/5MT)【試乗記】
2026.10.27試乗記ダイハツのベーシックな軽乗用車をもとに、ラリーやレース向けの競技車両に仕立てた「ミラ イースtuned by D-SPORT Racing」。軽量ボディーをロールバーで固め、力強いターボエンジンを搭載した一台は、クルマの楽しさを学べる教科書のような一台となっていた。 -
NEW
「乗り物酔いしやすいクルマ」と「酔いにくいクルマ」の違いは?
2026.10.27あの多田哲哉のクルマQ&A乗り物酔いしやすい同乗者がいると、ドライバーは運転に気を使う。では、クルマの側にはその要因はないのだろうか? 「酔いやすいクルマ」を見極めるポイントを、車両開発者の多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2026-2027 Winter webCGタイヤセレクション
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2026-2027のウインターシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけたスタッドレスタイヤか。各社自慢の最新モデルの実力を検証する。 -
NEW
新山千春 ダンロップのWINTER MAXX ICE ProとSYNCHRO WEATHERを試す
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>俳優/タレントとして活躍し、クルマ好きとしても知られる新山千春さんが、ダンロップの最新スタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」とオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を乗り比べ。キャラクターの異なる2つのタイヤは、それぞれどんな人におススメか? -
NEW
試して分かったブリヂストンのSUV向け冬用タイヤ「ブリザック アイスピーク」の実力
2026.10.262026-2027 Winter webCGタイヤセレクション<AD>ブリヂストンからSUV向けとなるスタッドレスタイヤの新製品「ブリザック アイスピーク」が登場。氷上・雪上性能を高め、摩耗ライフも大幅に向上させたというその実力を、モータージャーナリストの斎藤 聡さんと自動車ライターの伊藤 梓さんがチェックした。 -
第347回:カーマニア的に隠れた名車
2026.10.26カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。「トヨタ・アクアGRスポーツ」を夜の首都高に連れ出した。実はこう見えて初代「アクア」の元オーナー。最初期型のハンドリングは「フェラーリ458イタリア」を彷彿させたが、最新モデルの走りはどうか。


























































