フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)/ゴルフRアドバンス(4WD/7AT)
伝統と革新のホットハッチ 2026.10.26 試乗記 1976年に誕生し50周年を迎えたフォルクスワーゲンのホットハッチ「ゴルフGTI」と、333PSの出力とハイテク満載の4WDシャシーを武器とする高性能モデル「ゴルフR」にサーキットで試乗。両者の違いとそれぞれの特徴を報告する。同門ホットハッチ対決
輸入ホットハッチと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはフォルクスワーゲンのゴルフGTIだ。それもそのはずで、私自身が8世代目ゴルフのGTIと暮らしていて、その前にも3代目と7代目を所有した経験があるからだ。
GTIのどこがそんなに気に入っているのかと聞かれれば、まずはその控えめさを挙げたい。見た目は少しスポーティーなゴルフでしかないのに、ひとたびアクセルペダルを踏み込めば、気持ちのいい加速や軽快なハンドリングを披露してくれる。ふだんの買い物から長距離ドライブ、さらにはサーキット走行まで、これ1台でこなせるオールマイティーさも魅力である。
そんなGTI好きにとって、常に気になる存在がゴルフR。GTIよりもパワフルなエンジンと4WDを組み合わせた、ゴルフシリーズの頂点に立つスポーツモデルだ。
7代目ゴルフの時代には、軽快なハンドリングを楽しむGTIに対し、Rはロングドライブを得意とするグランツーリスモという印象が強かった。ところが8代目では、Rのハンドリング性能が大きく進化。もはや、そんな単純なすみ分けは通用しなくなっている。
ではいったい、フォルクスワーゲンを代表するホットハッチはどっちなのか? 富士スピードウェイのショートコースで、最新のGTIとRを乗り比べることにした。
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50年の歴史を持つGTIと頂点を狙うR
試乗に入る前に、まずは2台の生い立ちを振り返っておこう。ゴルフGTIが誕生したのは、いまからちょうど50年前の1976年。実はこのGTI、フォルクスワーゲンの社内有志が非公式に開発を始めたという、少々変わったヒストリーを持つ。
当初は5000台限定という条件で正式なプロジェクトとして認められたが、110PSを発生する1.6リッター直4エンジンを積んだ軽量なボディーがもたらす走りは、当時としては驚くほどスポーティーだった。最高速180km/hオーバーの速さでアウトバーンの追い越し車線を颯爽と駆け抜け、それまで一部の高性能車だけに許されていた高速走行の特権を、より多くのドライバーに開放した。いわゆる「アウトバーンの民主化」である。
そんな初代ゴルフGTIは当初の計画を大きく上回り、累計販売台数は46万1690台に達した。そのDNAは現代のモデルにも受け継がれ、GTIはフォルクスワーゲンにとって最も重要なアイコンのひとつとなっている。
一方、GTIのさらに上を狙うモデルとして2002年に登場したのが、4代目ゴルフをベースとする「ゴルフR32」だ。3.2リッターのVR6(狭角V型6気筒)エンジンは最高出力241PSを発生。これに「4MOTION」と呼ばれる4WDを組み合わせることでよりパワフルな走りを実現したのだ。
ちなみに日本導入にあたっては、日産「スカイラインGT-R」のR32(アールサンニイ)と区別するため、あえてR32を「アールサーティーツー」と呼ぶことにしたというエピソードもある。
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8代目ゴルフでさらに進化
その後、R32はゴルフRへと名前を変え、GTIとともに世代を重ねてきた。最新の8代目ゴルフでは、GTIもRも2リッター直4ターボエンジンと7段DSGを搭載。マイナーチェンジ後の最高出力はGTIが265PS、Rが333PSで、駆動方式はそれぞれFWDと4WDとなる。
注目したいのは、ホットハッチに欠かせないハンドリング性能の向上策。GTIには、電子制御油圧多板クラッチ式のフロントディファレンシャルが装着され、左右前輪の駆動力配分を制御することで、コーナリング時のアンダーステアを抑え、優れたトラクションと旋回性能を実現する。
これに対してRは、4WDシステムの「4MOTION」に「Rパフォーマンス トルクベクタリング」を組み合わせる。左右後輪への駆動力配分を変え、コーナー外側の後輪により多くのトルクを与えることで、クルマの向きを積極的に変えるというものだ。
つまりGTIは前輪を巧みに使って曲がり、Rは後輪の力も利用して曲がる。理屈はわかったが、実際の走りにはどんな違いが表れるのだろうか。
まずは乗り慣れたゴルフGTIから。走り始めてすぐに感じるのは、やはりその身のこなしの軽さだ。ステアリングホイールを切り込むと、ノーズがスッとコーナーの内側へ向かっていく。この気持ちよさは、ワインディングロードでも味わえるが、サーキットではさらに際立つ。
感心するのは、コーナーの途中からアクセルペダルを踏み込んだときの動きだ。一般的なFWD車なら、駆動力が増すにつれてアンダーステアが強まりがちだが、GTIは違う。フロントディファレンシャルが巧みに働き、アクセルを踏み込んでもノーズが外側へ逃げにくい。むしろ、グイグイとコーナー出口に向かっていく感覚があるのだ。
続いてゴルフRに乗り換える。今回の試乗車は、19インチの軽量鍛造ホイールなどを備える上級仕様の「ゴルフRアドバンス」だ。さっそく走り出すと、まず加速力の違いに驚かされる。ショートコースのストレート後半に設けられたブレーキングポイントで、GTIが約120km/hだったのに対し、Rは約135km/hに到達。短い直線でもこれだけの差がつくのだから、68PSと4WDの違いは大きい。
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Rの走りはGTIとは別物
それ以上に思い知らされたのがRの高い旋回性能。コーナーへの進入では、GTIのほうがノーズの動きが軽快で、ステアリング操作に対する反応も鋭い。Rはそれに比べると少し落ち着いた印象だ。ところが、コーナーの途中からアクセルペダルを踏み込むと、Rの動きが一変する。4輪がしっかりと路面をつかんだまま、わずかにリアが外側へ動くような感覚とともに、クルマの向きが変わっていく。これがRパフォーマンス トルクベクタリングの効果なのだろう。
さらにRでは、GTIよりもステアリングの舵角が少なくて済む場面が多かった。GTIが前輪のグリップを巧みに使って曲がっていくのに対し、Rは後輪の駆動力を積極的に利用してクルマの向きを変えていく。アクセルペダルを踏み込んでもESCの介入をあまり意識させず、4輪のグリップを生かして力強く加速する。
しかも、その高い性能を引き出すのに特別なテクニックは必要ない。コーナーに進入し、クルマの向きを変えてアクセルペダルを踏み込めば、Rはドライバーの期待に応えてくれる。
今回の比較試乗を通じて、7代目のころに抱いていた「ハンドリングのGTI、グランツーリスモのR」という印象は、すっかり過去のものになった。いまやRは、GTIに負けないほどコーナリングが楽しいクルマに仕上がっている。
そうなるとGTIを選ぶ理由はなくなってしまったのか? いや、そんなことはない。ステアリングを切り込んだ瞬間の軽快さや、前輪のグリップを感じながらコーナーを駆け抜ける一体感は、やはりGTIならでは。ドライバーが自分の手でクルマを操っているという実感は、GTIのほうが強い。
一方、RにはGTIでは味わえない圧倒的な加速力と、4WDを生かした独特のコーナリングの楽しさがある。より速く、しかも安心して走れるという点では、Rに軍配が上がる。GTIを長年乗り継いできた身としては、やはりあの軽快なハンドリングが捨てがたいが、今回の試乗でRの実力を思い知らされたのも事実である。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1790×1465mm
ホイールベース:2620mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:265PS(195kW)/5250-6500rpm
最大トルク:370N・m(37.7kgf・m)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)235/35R19 91Y XL/(後)235/35R19 91Y XL(ハンコック・ヴェンタスS1 evo3)
燃費:--km/リッター
価格:557万9000円/テスト車=655万8000円
オプション装備:ボディーカラー<オリックスホワイト マザーオブパールエフェクト(4万4000円)/レザーシートパッケージ(30万8000円)/Discover・テクノロジー・DCCパッケージ(62万7000円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:909km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1790×1460mm
ホイールベース:2620mm
車重:1520kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:333PS(245kW)/5600-6500rpm
最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/2100-5500rpm
タイヤ:(前)235/35R19 91Y XL/(後)235/35R19 91Y XL(ハンコック・ヴェンタスS1 evo3)
燃費:--km/リッター
価格:761万9000円/テスト車=--円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1005km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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