「デュアルクラッチ車ではニュートラル走行はしないほうがいい?」
2010.07.03 クルマ生活Q&A トランスミッション「デュアルクラッチ車ではニュートラル走行はしないほうがいい?」
いわゆるデュアルクラッチトランスミッションを搭載した車両の運転についてお尋ねします。燃料を節約するためエンジンブレーキをかけずに惰性で走らせたいとき、セレクターをニュートラルにしても大丈夫なのでしょうか? その昔、トルクコンバーター式のAT車では、そういうことはしないほうがいいと聞いた記憶があるのですが。
お答えします。デュアルクラッチトランスミッションにも、大きく分けて湿式クラッチを使ったものと乾式クラッチを使ったものがあります。フォルクスワーゲンのDSGでいえば、6段が湿式で、7段が乾式です。
このうち乾式クラッチのものならば、ニュートラルで走行しても機構的には問題はありません。
注意が必要なのは、湿式クラッチの場合です。湿式クラッチはクラッチ板を潤滑油に浸してあり、走行中はポンプで潤滑油を循環させることで、摩擦熱が発生したクラッチ板を冷却しています。走行中にニュートラルにすると、エンジンは回転が下がってアイドリング状態となりますが、オイルポンプの働きも弱まります。
あるメーカーに尋ねたところでは、この状態でも潤滑油は循環しているので、クラッチがオーバーヒートするようなことはないとのことでした。しかし、ニュートラルではなくギアを入れているほうが潤滑油の循環が安定し、よりクラッチ板の放熱効果が高まり、熱による潤滑油の劣化も抑えられるのは事実です。
よって個人的には、ニュートラルで走行しないほうがいいと考えています。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。