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【スペック】カイエンSハイブリッド:全長×全幅×全高=4846×1939×1705mm/ホイールベース=2895mm/車重=2240kg/駆動方式=4WD/3リッターV6DOHC24バルブスーパーチャージャー付き(333ps/5500-6500rpm、44.9kgm/3000-5250rpm)+モーター(47ps/1150rpm、30.6kgm/1150rpm)(欧州仕様車)

ポルシェ・カイエン【海外試乗記】(後編)

“らしさ”増量(後編) 2010.05.11 試乗記 河村 康彦 ポルシェ・カイエン
2代目「カイエン」に、新たにラインナップされたハイブリッドモデル。「S」を冠するその走りはポルシェの名に見合うものだったのか?
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「ハイブリッド」でなく「Sハイブリッド」

(前編からの続き)
シリーズの基盤となる2種類のV8エンジン搭載車と、ベーシックグレードとして人気を博したV6エンジン搭載モデル、そして“時代の要請”を受けるカタチでモデルライフ後半にシリーズに加えられたディーゼルモデルという4本柱で構成された従来型に対し、2代目「カイエン」で新たにファミリーに加えられたのは、ハイブリッドモデル。興味深いのは、従来型ベースで開発されたプロトタイプとは異なり、電気モーターと組み合わされる3リッターの6気筒エンジンが過給器付きとなったこと。この点について担当のエンジニアは、「より“ポルシェのハイブリッド”にふさわしい動力性能を追い求めた結果」としている。ちなみに、過給器がターボではなくルーツ式スーパーチャージャーなのは、スペース的な理由によるものという。

プロトタイプでは「カイエンハイブリッド」と名付けられていたが、市販型では「カイエンSハイブリッド」を名乗る。おそらくだが、新型の6気筒ガソリンモデルに対しても0-100km/h加速で1.3秒、最高速で12km/hほど動力性能が上回るあたりが、その理由に違いない。ちなみに、最高333psを発生する3リッターのユニットは、今やグループ企業であるアウディのソリューション。これを最高47ps相当のモーターと組み合わせ、いわゆるシステム最高出力は8気筒4.8リッターエンジン搭載の「カイエンS」にあと20psと迫る、380psを公表。一方、59.1kgmのシステム最大トルクはカイエンSの51.0kgmを軽く上回る。

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重量ハンデを感じさせないフットワーク

カイエンが採用するハイブリッドシステムは、エンジンと8段ATの間に電子制御式のクラッチを挿入し、モーターをエンジンと同軸上に置くレイアウト。同じく1基のモーターを備えるホンダ方式とは異なり、走行中もエンジンを完全停止させられるのが大きな特徴だ。実際、停車中のアイドリングストップはもちろんのこと、走行中も頻繁にエンジン停止を行うことがタコメーターの動きから見てとれた。三洋製のニッケル水素バッテリーの充電状況が規定の範囲にある間は、8速ギアで2600rpmとなる156km/hまでの速度下で、コースティング(アクセルOFF)時にポルシェが「セーリング」と表現する、エンジン停止状態で走るプログラムに切り替わる。

高速走行中はタコメーターの動きに気付かなければエンジンのON/OFFは全く感知できない一方、市街地での低速走行中は「プルン」とエンジンが始動することに気付かされる場面が少なくない。率直なところ、ここは「ちょっと気になる」と意見をする人も現れそう。発進時はモーターパワーのみが基本で、その力強さは満足のいくレベル。標準サイズの18インチシューズを履いたテスト車のフットワークはなかなか軽快で、少なくともこの点では、バッテリーパックだけで79kgに達するというハイブリッドシステム採用による重量ハンデは感じさせられない。

ステアリングフィールには不満が

しかし、走りのフィーリングではこのモデル特有の問題点も明るみになった。中立付近の手応えが曖昧で、切り込みに対しても反力の弱いステアリングフィールが、少なくともボクがポルシェ車に期待する水準には達していなかったのだ。当初は、パワーアシストが電動化されたことによる違和感かと想像したが、後にシステムはフル電動ではなく電動油圧方式と判明。しかし、他のモデルの純油圧式とはアシストシステム全体が異なり、当方の指摘に対しても思いあたるところがあるというのが開発陣の反応だったから、恐らくこれは次のリファインの機会に改善が図られそうだ。

さて今回、シリーズの主役となる8気筒モデルと、新型カイエンのもうひとつのイメージリーダー役となりそうなハイブリッドモデルをテストドライブした現段階で感じるのは、よりスポーティな装いとなった見た目の点にも、さらにダイナミックさを増した走りのテイストにも、なるほど開発陣が今回大いに意識をしたであろう「もっとポルシェらしく!」の思いが分かりやすく具現されているということ。こうなると、いまだ未試乗のベーシックな6気筒とディーゼルモデルの乗り味も、ますます気になってくるものだ。

(文=河村康彦/写真=ポルシェ・ジャパン)

河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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