ボルボC70 T5 GT(FF/5AT)【ブリーフテスト】
ボルボC70 T5 GT(FF/5AT) 2010.04.19 試乗記 ……589.0万円総合評価……★★★★★
大がかりなお化粧直しで見た目が変わった「ボルボC70」。その走りと乗り心地はどうなった? “ぜいたくオプション”装備モデルで試した。
一番多機能で有能なボルボ
「ボルボC70」は、何といっても、メタルトップのクーペボディがもたらす耐候性と、フルオープンで走る気持ち良さを使い分けできる点が便利だ。
布製トップのカブリオレは、雰囲気もあり優雅でもあるが、安心感や静粛性においてはメタルトップが勝る。多少複雑な開閉アクションも、すべてスイッチひとつでこなせるし、特別なメンテナンスはいらないようだから、マニュアルどおりに取り扱いを丁寧にしさえすれば、耐久性の心配はなさそうに思える。
4人がちゃんとオープンで乗れるクルマは、家族で乗っても友人達と乗っても、やはり2人乗りの場合と違って楽しい雰囲気に満ちている。距離的なものも含め、ガンガン走って酷使するにはセダンやワゴンの方が適するのは当然として、こうしてやんわりと雰囲気を楽しむのには、オープンカーやクーペのキャラクターこそ最適。その両方をそつなくこなす「C70」は、1台で何通りもの性格を使い分けられるという点で、一番多機能かつ有能なボルボ車ということもできるだろう。
どんなクルマ?
(シリーズ概要)
クーペ「ボルボC70」とそのオープン版「C70カブリオレ」が一本化される形で、2005年9月のフランクフルトショーでメタルトップの2代目「C70」がデビュー。日本では、約1年半後の2007年3月に発売された。テスト車の現行型は、その次世代モデル。各部のデザインに大幅な手直しを受けるなどし、2010年3月に日本上陸を果たした。
すなわち、最大の特長である3分割式リトラクタブルルーフはそのままに、フロントフェイスはクロスオーバーモデル「XC60」とおそろいの新世代デザインに。波打つ輪郭が特徴的だったリアのコンビランプや、これまで「S40」、「V50」、「C30」と共通だったダッシュボードも新たな意匠へと改められた。
(グレード概要)
従来の2.4リッターNAモデルはカタログから姿を消し、2.5リッター直列5気筒ターボのみ。新世代の「C70」は、「T5 GT」のモノグレードで扱われる。
テスト車はオプションの「ラグジュアリーパッケージ」付き。本革シートはセミアニリンレザーを使ったプレミアムレザーシートに、アルミホイールは17インチから18インチへとアップグレードされ、DYNAUDIO製スピーカー採用のプレミアムサウンドシステムや、死角情報を提供するBLIS(ブラインド・スポット・インフォメーション・システム)なども追加される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
オープンのまま止めおくことも想定して、外から見られることを意識した立体的なデザイン。光りモノを使わずにメタリックな感覚で処理したスカンジナビアの流儀は、硬質にして上品。見ればわかる式の装備品の数々も、スイッチやダイヤルの操作性に優れ、タッチも繊細。冬季には手袋をしたままの操作になるが、そんな時の操作感まで熟知した設定だ。人間工学的という言葉は、スウェーデン車によく似合う。
(前席)……★★★★★
空間的な余裕そのものはスカンジナビアの大柄な人達向けの設定ながら、シートなどは小柄な体型から大きな人まで、あるいは体重によって接触面積を変えてうまくフィットする感覚がある。誰もがどこかで合致する、不思議なホールド感だ。標準の本革シートはソフトなタッチで滑りを融通する。左右どちらのハンドル位置でもセンター部分は共通だから、右ハンドル車ではサイドブレーキレバーがやや遠い。ダッシュボード上に直立するナビ画面の位置は、やや邪魔。
(後席)……★★★
見た目には囲まれ感のある狭い空間ながら、脚もひざも普通におさまる。ヘッドレストがあるのでオープン時でも後方から首筋を風が直撃するのは避けられるが、サイドウィンドウは立てておかないと風にさらされる。それが4シーターオープンの後席ゆえの特徴的な開放環境。肩まですっぽり包まれるので不安感はさほどない。センター部にある引き出しは、アームレストではなく救急箱収納のカバー。後方には緊急時にせり出すロールオーバーバーも収納されている。
(荷室)……★★★
この手の折り畳み式ルーフが収まるトランクの利用は、考え方次第。旅先でものを大量に買い込んだ場合には、ルーフを上げれば400リッター使える。逆に、ルーフを収納している場合でも残り空間は200リッターが確保される。ガラス部分を固定するための棚は、20cmほど持ち上げることができ、限られた空間からの荷物の積み下ろしを容易にする。このあたりの作業性は、よく考えられている。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
5気筒ターボの230psユニットは、GTを名乗るだけあってパワフル。電動収納ルーフなど重装備で1730kgもあるボディを軽々と加速させる。5段ATは普通のトルクコンバーター式ではあるが、ロックアップも適切でブカブカしたスリップ感のあるつながり方はしない。ドライブコンピューターが示す瞬間燃費値は、決して省エネレベルではないが、定速巡行に移ればまずまずの小食。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
どっしり落ちついた走行感覚があり、乗り心地は重厚。バネ下はきちんと路面の不整に追従するから、ボディの動きはゆったりとフラット感覚を保つ。ボディサイズや重量なりにキビキビした小業こそ苦手だが、中高速コーナーが連続するようなステージでは、ボディの慣性をもてあますことなく、意外や身軽にコーナーのインを縫える。クーペ時とオープン時の重心高の差はそれなりに感じるし、ボディ剛性的にはセダンより不利ではあるが、だからといって操縦安定性の面で破綻(はたん)をきたすことはない。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2010年3月31日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:2693km
タイヤ:(前)235/40R18(後)同じ(いずれも、ピレリPZERO ROSSO)
オプション装備:ラグジュアリーパッケージ(40.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:241.3km
使用燃料:31.5リッター
参考燃費:7.66km/リッター

笹目 二朗
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
BYDシーライオン6(FF)【試乗記】 2025.12.10 中国のBYDが日本に向けて放つ第5の矢はプラグインハイブリッド車の「シーライオン6」だ。満タン・満充電からの航続距離は1200kmとされており、BYDは「スーパーハイブリッドSUV」と呼称する。もちろん既存の4モデルと同様に法外(!?)な値づけだ。果たしてその仕上がりやいかに?
-
フェラーリ12チリンドリ(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.9 フェラーリのフラッグシップモデルが刷新。フロントに伝統のV12ユニットを積むニューマシンは、ずばり「12チリンドリ」、つまり12気筒を名乗る。最高出力830PSを生み出すその能力(のごく一部)を日本の公道で味わってみた。
-
アウディS6スポーツバックe-tron(4WD)【試乗記】 2025.12.8 アウディの最新電気自動車「A6 e-tron」シリーズのなかでも、サルーンボディーの高性能モデルである「S6スポーツバックe-tron」に試乗。ベーシックな「A6スポーツバックe-tron」とのちがいを、両車を試した佐野弘宗が報告する。
-
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】 2025.12.6 マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。
-
NEW
ホンダ・プレリュード(前編)
2025.12.14思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「ホンダ・プレリュード」に試乗。ホンダ党にとっては待ち望んだビッグネームの復活であり、長い休眠期間を経て最新のテクノロジーを満載したスポーツクーペへと進化している。山野のジャッジやいかに!? -
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】
2025.12.13試乗記「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。 -
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】
2025.12.12試乗記「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。 -
高齢者だって運転を続けたい! ボルボが語る「ヘルシーなモービルライフ」のすゝめ
2025.12.12デイリーコラム日本でもスウェーデンでも大きな問題となって久しい、シニアドライバーによる交通事故。高齢者の移動の権利を守り、誰もが安心して過ごせる交通社会を実現するにはどうすればよいのか? 長年、ボルボで安全技術の開発に携わってきた第一人者が語る。 -
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達―
2025.12.11マッキナ あらモーダ!イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。 -
走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11デイリーコラムマツダがジャパンモビリティショー2025で発表した「モバイルカーボンキャプチャー」は、走るほどにCO2を減らすという車両搭載用のCO2回収装置だ。この装置の仕組みと、低炭素社会の実現に向けたマツダの取り組みに迫る。
























