メルセデス・ベンツEクラスステーションワゴン【試乗記】
“気が利く”ワゴン 2010.04.09 試乗記 メルセデス・ベンツE250 CGI ブルーエフィシェンシー ステーションワゴン(FR/5AT)/E350 4MATIC ステーションワゴン アバンギャルド(4WD/7AT)……739万9000円/962万5000円
「メルセデス・ベンツEクラス」に待望のワゴンボディが登場。1.8リッターのベーシックグレードと、3.5リッターの四駆モデルに下野康史が試乗した。
人気のワケ
新型「Eクラス(W212)」に予定通りステーションワゴンが加わった。
日本車のワゴンブームはすっかり下火になってしまったが、輸入車はいまなお堅調で、Eクラスもこれまでの販売実績ではシリーズ全体の2〜3割がワゴンだった。一般的にワゴンはセダンよりも高い。今度のEクラスでも、同じエンジン/グレードのセダンと比べて“ワゴン代”はプラス35万円だ。でも、100万円の35万円高はイタイが、700〜800万円クラスの35万円なんて“誤差”の範囲内、とは言わないまでも、払える人にとっては大問題ではないだろう。Eクラスワゴンの人気には、そんな背景もあるかと思う。
新しいワゴンボディは先代よりキモチ大きくなった。すなわち、ホイールベースは20mm、全長は15mm延び、全幅は35mm拡大している。それでいながら、5.3mの最小回転半径はキープ。今度のEワゴンも、サイズのわりにこまわり君である。
後席を畳むと、VDA方式で1910リッターを誇る荷室容量は、ステーションワゴンとしては世界最大だという。端的に言うと、「ボルボV70」や「アウディA6アバント」や「BMW5シリーズツーリング」などより広いということだ。
大きさもさることながら、たしかに使いやすそうなのは、荷室フロアにタイヤハウスの出っ張りがまったくないことである。フロアの地上高も低いから、リアタイヤをいったいどこへしまい込んでいるのか、手品のように不思議だ。
テールゲートを開け、荷室の側壁に付くレバーを引くと、後席背もたれが前に倒れて、フラットフロアになる。「EASY-PACKクイックフォールド」という便利な新機軸だ。前席にメモリー付きの電動シートが備わる上級モデルでは、この機能と連動してフロントシートを必要なだけ前に出してくれる。質実剛健な機能性で売ってきたメルセデスのワゴンも、どんどん“気が利く”ようになってきた。
エンジンいろいろ
ワゴンにもセダンと同じエンジンラインナップが用意されている。下からいくと、ガソリン軍団が「E250 CGI」用の1.8リッター4気筒ターボ、「E300」用の3リッターV6、「E350」用の3.5リッターV6、「E500」用の5.5リッターV8、「E63 AMG」用の6.2リッターV8、そしてポスト新長期規制をクリアしたクリーンディーゼル、「E350 ブルーテック」に載る3リッターV6ターボディーゼルである。
試乗会で乗ったのは、「E250 CGI」「E350 ブルーテック」「E350 4MATIC アバンギャルド」の3台だった。クリーンディーゼルは別掲でリポートしているので、ここでは他のガソリン2モデルについて報告する。
E250 CGI(669万円)は、低CO2の新エンジンを積むEクラスワゴンのベーシックモデルだ。セダン同様、エコカー減税対象車。Eクラスワゴンとしては唯一、600万円台に収まるお買い得モデルである。
1770kgの車重はセダンの同グレードより90kg重い。204psの1.8リッター4気筒ターボで走るのか!? と思われるかもしれないが、大丈夫である。クリーンディーゼルあたりから乗り換えれば、歴然と加速の線は細いが、かといって不満はない。馬鹿力こそないが、実に気持ちよく伸びるのがこの直噴4気筒ターボの特徴だ。ボディの遮音性がすぐれるためか、同じパワーユニットを積む「C250 CGI セダン」よりエンジンそのものも高級に感じる。
シート地はあっさりしたファブリック。プッシュボタン式の“キーレスゴー”もオプションになるが、昔から見てきたウォッチャーとしては、メルセデスくらい、ちゃんとキー回してエンジンかけなさい! と思う。いかにも「プレーンなEクラスワゴン」という潔さをもつのがE250CGIである。
ベストチョイスは?
一方、E350 4MATIC アバンギャルドは 、930万円のリッチな四駆ワゴンである。この価格だと、そろそろ「Sクラス」も射程内だが、Sクラスにワゴンはなかった。
アバンギャルドグレードだから、レザーシートが標準装備。静かで力のある3.5リッターV6(272ps)が1890kgのボディを動かし始めた途端、「あ、お金持ち!」な感じがする。ただ、ほかと比べるとサスペンションは明らかにヘビーデューティで、乗り心地がドテッとしている。ワゴンになっても、足まわりが実にしなやかなのが新型Eクラスの基調であることを考えると、ちょっと残念な気がした。もちろん4MATICを選ぶ人は、4MATICでなければならぬ事情もあるだろうが。
コストパフォーマンスの高いE250 CGIもお薦めだが、この試乗会で文句なしにベストEクラスワゴンと感じたのは、クリーンディーゼルの「E350 ブルーテック」である。Eクラスセダンの快適性はそのままに、大量の荷物が積めて、動力性能の力強さはガソリンE350をしのぐ。しかも、ランニングコストの安さはシリーズ随一だ。ガンガン使い、長く乗る。それがクルマも本人も喜ぶメルセデスワゴンの正しい使用法である。
(文=下野康史/写真=菊池貴之)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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