スズキ・アルトX (FF/CVT)【ブリーフテスト】
スズキ・アルトX (FF/CVT) 2010.04.05 試乗記 ……102万9000円総合評価……★★★★
軽乗用車界のビッグネーム、「スズキ・アルト」。7代目となる最新型の実力を、最上級グレードの「X」で試した。
安いけれど、ケチじゃない
「スズキ・アルト」は、長年にわたる改良の積み重ねで、商品として全体的にまとまっている。造りなれたメーカーとしての完成度の高さも感じる。だからといって、新型車としての新しい魅力がないわけではない。「ワゴンR」など背の高いミニバンスタイルとも違って、4ドアセダンの落ち着いたたたずまいとコンパクトハッチバックの利便性を兼ね備えた、独自の性格がちゃんと表現できている。乗り心地はまさにセダンのそれで、前席と後席の差が少なく、ゆったりした走行感覚と居住性をもつ。
動力性能も十分だし、走行安定性も高い。街角のコーナーなどでのロール感はこれまでのモデルと変わらない。いまではもっと抑える方法はあるが、しばらく接しているとやっぱりこの程度のロールも必要かな……と納得するにいたった。中国市場をことさら意識していない、丸目の穏やかな表情もいい。
「軽自動車といえば廉価なクルマ」と思われた時代もあったけれども、いまでは目立ってコストを意識して下げる風潮もなく、必要なところをケチっていない姿勢は共感がもてる。2度踏みリリース方式のサイドブレーキを採用しないなど、良心的と思える箇所を見るにつけ、そのメーカーの考え方や技術水準など、正しい常識と価値観をもった人達が造っていると信じることができる。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1979年に初代がデビュー。装備を徹底的に簡略化することで47万円という低価格を実現し、大ヒット。「ボンバン(ボンネットバン)・ブーム」の火付け役となった。
現行モデルは、2009年12月16日にデビューした7代目。「省資源・低燃費で気軽に使え、世代を超えて愛される軽自動車」をコンセプトに、軽自動車ならではの優れた環境性能と経済性を、親しみやすいスタイルに包み込んだのが特徴。パワートレインの改良により、乗用、商用のすべてのグレードで「平成22年度燃費基準+15%」以上を達成、全車エコカー減税の対象となった。デザインも、やや無機的なスタイリングだった先代モデルに対し、より親しみやすい有機的なフォルムが採用された。
(グレード概要)
ラインナップは、乗用タイプが「E」「F」「G」「X」の4グレード。「E」がベーシックモデル、今回のテスト車「X」が最上級モデルとなる。駆動方式はFFと4WDが選べ、トランスミッションは、「E」と「F」が5段MTまたは4段AT、「G」は4段ATまたはCVT、「X」はCVTのみとなる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
メーターは明るく見やすく、楽しい気分にさせてくれる。マルを基調にしたデザインのセンター部も、見るからにほほえましく、各スイッチの操作もしやすい。小さなサイズがもたらすかわいらしさや遊び心などがうまく表現された秀作といえる。
そのうえ、こまごまとしたポケット類などの配慮もあって、日常生活を快適に過ごせる。袋物を引っかけるハンガーまである。「X」は最上級仕様で、キーレスプッシュスタートシステムやチルトステアリングも標準で備わる。
(前席)……★★★★
小型サイズのシートのなかでは、最良の座り心地。クッションのウレタンが体重の分だけうまく沈んで、ポジションを固定してくれる。おかげでズレにくいし、横方向のホールド性もいい。ドア開口部の敷居は低めで鴨居は高く、乗降性も良好。CVTのセレクターはP/R/N/D/Lの一直線と副変速スイッチのみとシンプル。サイドブレーキは昔ながらのレバー式で安心。
(後席)……★★★★
背もたれは分割可倒で折り畳めるが、座面は前席同様のウレタンクッションで座り心地良好。寸法的にはさして大きくはないものの、足元の余裕や膝の前、頭上の空間があって、より大きな2+2やクーペのリアシートに見られる緊急用のシート以上の居住性をもつ。リアウィンドウもそれほど乗員に迫るものではなく、後方には余裕がある。乗り心地も下からの突き上げ感はなく、前席の乗り心地と大きく変わるものではない。センタートンネルも低い。
(荷室)……★★★
絶対的な容量は限られる。トランクフロアの前後長も、一般的な小型ハッチバック車のものより短いが、ルーフまでの高さがあるから、日常の買い物程度では十分なスペースといえる。フロア床面はハッチゲート下端よりちょっと低い位置にあり、開けた時に物が中から転げ出さないのがいい。シートバックを倒せばフロアはフルフラットに。その操作ノブは後ろからでも倒しやすい形状をしている。
|
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
CVTにロー/ハイの副変速機を加えアイドル制御するなど、燃費向上策は見事。エンジンは、アイドル回転はもとより、CVT車で気になることの多い加速の初期段階でも十分静かで力強い。音質も嫌みのない機械音で不快感はない。シューンと一気に上まで回さずとも、下から有効なトルクが得られ、40km/h以下でトロトロ流すような状況であれ高速道路の合流であれ、不満は感じなかった。緩急自在。
|
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
重心高が高くなりつつある最近のクルマのなかにあって、ロールセンター高の設定に特別の配慮は見られない。ただ、ロールするにせよ、その角度などは今までどおり予測しやすく自然に感じられる。長いホイールベースのおかげで、ピッチングのたぐいはよく抑えられている。姿勢はおおむねフラットで、大きく上下動するような状況でもダンピングをよく抑えてくれる。パワーステアリングの操舵力は軽めで、ギア比も適度。よく切れてUターンも簡単だ。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2010年2月16日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:2083km
タイヤ:(前)145/80R13(後)同じ(いずれも、ダンロップSP10)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:258.6km
使用燃料:17.1リッター
参考燃費:15.12km/リッター

笹目 二朗
-
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】 2026.10.17 三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。





























