スズキ・アルト ラパンSS(FF/5MT)【試乗記】
ユルいくらいがちょうどイイ 2003.09.21 試乗記 スズキ・アルト ラパンSS(FF/5MT) ……119.0万円 クラシカルな外観、部屋のようなインテリアをコンセプトにつくられたオシャレな軽自動車「アルト ラパン」。女性向けにつくられたモデルに、ターボ+5MTで男性に訴求する「ラパンSS」が加わった。ベンチシートをもつ新グレード「L」と合わせ、『webCG』記者が試乗した。
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今度は男性向け
“ゆるい”をコンセプトにつくられた「アルト ラパン」に、ハイプレッシャーターボエンジンを積むスポーティ仕様「アルト ラパンSS」(ストリート・スポーツの意味)が追加された。シリーズで初めて、若い男性をターゲットにするニューモデルである。ラパンのデビュー時に、自動車ジャーナリストの河村康彦さんが「オジサン向きのディテールデザインを備えたモデルも欲しい」とインプレッションに記していたモデルが、現実になった。(アルト・ラパンX(FF/4AT)【短評】:http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000011161.html)
2001年1月、若い女性をターゲットにデビューしたラパンは、角を丸めたボディデザイン、家具や雑貨をイメージしたインテリアがウケてヒット。販売台数は約6000〜7000台/月と、目標を上まわる人気を博し、中低速トルクを重視した「Mターボ」を積む「ラパンターボ」や、ベルアート社が架装するキャンバストップモデルの追加など、バリエーションを拡大してきた。新機種のラパンSSは、高出力エンジン、シリーズ初のマニュアルトランスミッションで、男性ユーザーの取り込みを図る。もちろん、コラム式4段AT仕様も設定。駆動方式はFFと4WDの2種類で、価格は112.3万円から132.0万円まで。
クラシカルなスポーツカーをイメージした外観は、2003年の「東京オートサロン」に出品されたコンセプトカーのデザインとほぼ同じ。ショーに出展したところ、評判が高かったため、市販化に踏み切ったという。黒いメッシュグリルと丸目ヘッドランプ、フォグランプ埋め込み式バンパーを採用したラパンSSのフロントマスクは、これまでよりグっとアグレッシブ。スポーツサスペンションにより、車高はノーマル比10mm低く、タイヤは1インチ大きい165/55R14サイズのブリヂストン・ポテンザRE030を履く。とはいえ、威圧感や物々しさがないところに、ラパンらしい愛嬌が残る。
しっとりした味付け
インテリアは、ヘッドレスト一体型のスポーツバケットシートが目をひく。ノーマルに装備されるハイトアジャスターはないが、直立したAピラーとフロントスクリーンによる、見晴らしのよさとヘッドクリアランスはそのままだ。ステアリングホイールごしに見える大きなホワイトメーターの、クラシカルな文字表示も雰囲気に合っており、ラパンの美点を受け継ぎながら、スポーティをうまく演出していると感じた。
“ラパン初”ということで、試乗車はすべて5段MT仕様。パワーソースはホットハッチ「Keiワークス」からのキャリーオーバーで、いわゆる自主規制枠イッパイの64ps/6500rpmと、10.8kgm/3500rpmを発生。一方ギア比は、ローとファイナルはKeiワークスと変わらないが、2〜5速を高速側に振った穏やかな設定にされた。「適度なユルさが失われては、ラパンじゃありませんから」とは、商品企画スタッフ。その通りだと思います。
ハイギアードといいながら、車重が800kgと軽いため走りは軽快だ。3000rpmを超えて活発に盛り上がるエンジンをフルにまわすのは、MTならではの楽しさ。クラッチペダルは足を乗せるだけで切れるほど軽い。シフトのトラベルはけっして短くないが、そのユルさもクルマのキャラクターに合っていて気になることはなかった。おそらく、ATで乗ってもそれなりに楽しめるハズ。走りだけに集中するなら、ワゴンRR(?)やKeiワークス、ほぼ同じ値段のリッターカー「スイフトスポーツ」(119.0万円)がある。ユルいくらいがちょうどイイ。
リポーターが驚いたのは、乗り心地。直進、コーナリングの安定感はラパンシリーズでもっとも高く、段差でのいなしもしなやかだ。「もっと硬くという声もありましたが、ラパンのキャラクターに合うしっとりした味付けにしました」との説明にも納得。この乗り心地だけでも、ラパンSSを選ぶ価値があると思った。1998年の軽自動車新規格誕生から約5年経ち、ダイハツやホンダの軽が2世代目に進化する昨今だが、まだまだ競争力を失っていない。
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“部屋感”向上のLグレード
ボーイズバージョンの追加と同時に、ノーマルモデルがマイナーチェンジを受け、前席ベンチシートを装備する新グレード「L」がラインナップされた。名前に「アルト」を冠するラパンは、「ワゴンR」のようなハイトワゴンとは違い、前席は独立式のみだったのである。
マイナーチェンジでは、10・15モード燃費が19.0km/リッターから19.8km/リッターに向上。NAのFFモデルは全車「超ー低排出ガス」と平成22年度燃費基準をパスした。ほかに、シートとドアトリム表皮に質感の高い生地を使うなどして、商品力が高められた。NAのFFモデルは、全車「超ー低排出ガス」と平成22年度燃費基準をパス。グリーン税制に適合し、自動車取得税9000円が軽減(平成16年3月31日届け出まで)されることもメリットである。
Lグレードの特徴は、レバー式サイドブレーキをフット式に変えて足下スペースを拡大し、ベンチシートの採用によりサイドウォークスルーを可能にしたこと。停車中なら、前席でふたりがくっつき合える!?
装備品はちょっと豪華で、オートエアコンや丸形リモコンドアミラーなどを備える。価格はじゃっかん高く、112.3万円(FF、4WDは124.5万円)。
走りは、あたりまえだが普通のラパン。だが、ベンチシートによって、左足のリラックス度(だらしなさ?)が高まり、“部屋のようなインテリア”の性格が引き立てられた。
新機種の追加で、ラパンシリーズは全9グレード、トランスミッションと駆動方式で分けると、19車種も用意される。デビュー当初の3グレード6車種展開と較べて、2年半で大きく成長した。目標販売台数は当初の4000台/月の2倍から8000台/月に引き上げられたが、着々と台数をのばしてきた過去を見ると、ラパンの勢いは、まだ衰えそうにない。
(文=webCGオオサワ/写真=峰昌宏/2003年9月)

大澤 俊博
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