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【スペック】全長×全幅×全高=3970×1704×1803mm/ホイールベース=2513mm/車重=1185kg/駆動方式=FF/1.4リッター直4SOHC8バルブディーゼル(70ps/4000rpm、16.3kgm/1750rpm)(欧州仕様車)

プジョー・ビッパーティピー アウトドア1.4HDi(FF/5MT)【海外試乗記】

楽しめる実用車 2010.03.30 試乗記 森口 将之 プジョー・ビッパーティピー アウトドア1.4HDi(FF/5MT)

日本未導入のフランス車「プジョー・ビッパーティピー」に、本国で試乗。「ルノー・カングー」のライバルとなりうる、その魅力を報告する。
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サイズアップの一方で

「ルノー・カングー」がモデルチェンジで一気に大型化したことに、複雑な思いを抱く人がいるかもしれない。でもヨーロッパの小型商用車がサイズアップしているのは、カングーに限った話ではない。

たとえば同じフランスのPSAが送り出している「プジョー・パートナー」と「シトロエン・ベルリンゴ」は、旧型の4137×1724×1810mmから、2008年のモデルチェンジで4380×1810×1810mmに成長している。
しかしこれでは大きすぎるという声は欧州にもあるのか、カングーは全長が342mm短い、2ドアの「ビーボップ(乗用)/コンパクト(商用)」を造った。一方PSAは、ひとまわり小さな車種を用意。それが、「パートナー/ベルリンゴ」と同じく2008年にデビューした、「プジョー・ビッパー/シトロエン・ネモ」だ。

この2台はフィアットとの共同開発車で、プラットフォームは「グランデプント」と共通になる。2513mmのホイールベース、前1464/後1465mmのトレッドは、たしかにグランデプントに近い。生産はフィアット版の「クーボ(乗用)/フィオリーノ(商用)」ともども、トルコにあるフィアット系のTOFAS(トルコ自動車製造会社)で行われる。

PSAとフィアットの共同開発/生産はいまに始まったことではない。1978年にSEVEL(ヨーロッパ軽量車両連合)という組織を結成し、ミニバンや小型商用車を生産してきたという実績がある。現行プジョーラインナップでは、「807」と「エキスパート/ボクサー」がここから送り出されている。
今回乗った「ビッパーティピー」は、商用車であるビッパーの乗用車仕様。グレードは2009年春に追加された「アウトドア」で、名前のとおり、SUVテイストを盛り込んだ仕様だ。

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ただ広いだけじゃない

3970×1704×1803mmのボディサイズは、旧型カングーに近い。日本の道でも取り回しに苦労することはないだろう。フロントノーズやサイドウィンドウのデザインがダイナミックなのは、イタリアとの共同開発ゆえかもしれない。
テールゲートは他のグレードでは観音開きになるが、アウトドアでは跳ね上げ式が標準。フロントのアンダーガード、幅広のサイドプロテクター、リアクォーターウィンドウ、リアの黒い飾り帯も専用装備で、最低地上高は15mmアップし、タイヤは175/70R14から185/65R15へサイズアップされている。

フロアは低いがヒップポイントは高めの運転席に乗り込む。インパネは上面が広い棚で、センターコンソールは穴だらけ。縦長のドアミラーを含め使いやすい。メーターのレイアウトやエアコンのダイヤルはフィアット流だ。
そういえば座面に傾きがあり、もっちりした着座感の前席もフィアットを思わせる。ただしサポート性はグランデプントほどタイトではなかった。前席より一段高い位置に座る後席も傾きは大きい。形状は平板だが、足を下ろす着座姿勢のおかげもあって、身長170cmの人間にはじゅうぶん以上の空間がある。

ラゲッジ容量は5名乗車時でも356リッター。6:4分割の後席を背もたれ前倒し→全体跳ね上げの順で畳むと、884リッターまで拡大できる。フロアは540mmと低く、室内灯には、取り外し可能で磁石つきの懐中電灯が一体化されている。ただ広いだけでなく、使って楽しくなるような仕掛けがうれしい。

右は旧型の「ルノー・カングー」。
右は旧型の「ルノー・カングー」。 拡大

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荷室の室内灯部分には、取り外して使える懐中電灯が備わる。
荷室の室内灯部分には、取り外して使える懐中電灯が備わる。 拡大

ハンドリングにも手抜きなし

ガソリンとディーゼルターボの1.4リッターが用意されるエンジンはPSA製で、試乗車は最高出力70ps/4000rpm、最大トルク16.3kgm/1750rpmのディーゼル。1kmあたりCO2排出量119gという環境性能も自慢だ。トランスミッションは今回乗った5段マニュアルのほか、ディーゼルでは2ペダルの5段MTも選べる。

1185kgの車重は、「207」やグランデプントと同等。メーカー発表の最高速度は152km/h、0-100km/h加速は18.7秒とかなり控えめだが、1名乗車で130km/hぐらいまでの加速はまったく不満がなかった。
ターボが1500rpmぐらいから立ち上がるので、全域でその恩恵にあずかれる。変速回数が少なくてすむので安楽でさえある。遮音レベルはそこそこだが、吹け上がりや音は滑らかだ。5速100km/hは2200rpmとなり、静かだった。

乗り心地は他のプジョーとはやや異なるけれど、それほどフィアット的でもない。そもそもグランデプントは、昔のフィアット製小型車みたいにヒョコヒョコ揺れることはなく、フラット感の高いフィーリングを獲得しているが、ビッパー・ティピーはそれ以上の落ち着きを備えていると感じられた。

油圧式パワーステアリングのタッチは自然で、操舵に対して車体がスッと向きを変え、コーナーでのロールはうまく抑えられているので、ヨーロピアンコンパクトらしい軽快な身のこなしも味わえる。
全高1.8mにもなる貨客両用車なのに、乗り心地やハンドリングに手抜きはない。しかもデザインやユーティリティで乗り手を楽しませてもくれる。ビッパー・ティピーはカングーとは違うテイストで、欧州製実用車の根源的な魅力を教えてくれる。現状ではガソリンエンジンの2ペダルがないので、日本導入はむずかしそうだ。だからこそ気になるヨーロッパ車の1台である。

(文と写真=森口将之)

森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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