メルセデス・ベンツE350 BlueTEC ステーションワゴン アバンギャルド(FR/7AT)【試乗速報】
キレイはエライ 2010.03.24 試乗記 メルセデス・ベンツE350 BlueTEC ステーションワゴン アバンギャルド(FR/7AT)……932万5000円
「排ガスが超キレイ!」なディーゼルのワゴンが、メルセデスから登場。クルマのできは? 商品としての魅力は? 下野康史がテストした。
AT車では一番乗り
メルセデスの最新型クリーンディーゼルが世界一厳しい日本のディーゼル排ガス規制“ポスト新長期”をクリアした。新型Eクラスのワゴン登場と同時に導入された「E350 BlueTEC(ブルーテック)」である。米国ですでに販売されている「ML350」のエンジンをEクラスに搭載し、これまでの「E320CDI」よりさらにNOx(窒素酸化物)を7割、PM(粒子状物質)を2割削減した。
ポスト新長期規制はすでに「日産エクストレイル ディーゼル」がクリアしているが、欧州市場メインに開発されたSUVだから、品ぞろえはマニュアルに限られる。AT車ではこのメルセデスが一番乗りである。
E350ブルーテックは、欧米の最新ディーゼル規制にもすべて適合する。日本国内での現世御利益としては、エコカー減税の適用で43万円(セダンは42万円)の優遇措置が受けられる。車齢13年超のクルマから買い替えると、さらにプラス25万円の補助が出る。メルセデスの場合、実際、古いメルセデスからの買い替えも少なくないので、想像以上に意味のある恩典らしい。
ポイントは「尿素SCR触媒コンバーター」
最新のディーゼル排ガス規制が求めているのは、排出物質のなかでもとくにNOx値の厳しい削減である。そのソリューションとして、E350ブルーテックはこれまでの排ガス浄化システムに加えて「尿素SCR触媒コンバーター」を採用している。
SCRとは、邦訳すると「選択的触媒還元」の意。専用の触媒コンバーターの中で排ガスに尿素水溶液を噴射し、化学反応によりNOxを分解する。NOx吸蔵触媒で対応するエクストレイルは、この種の添加剤を必要としないが、そのかわり触媒に高価なレアメタルを使う。
ドイツ自動車工業会の登録商標で、「アドブルー」と呼ばれる尿素水溶液のタンクは、スペアタイヤが置かれていた位置にある。24.5リッター入りで、消費量は1000kmあたり1リッター。満タンにしておけば約2万4000kmもつ計算だ。アドブルーがきれるとエンジンはかからなくなるため、タンク残量はモニターされて計器盤に表示され、走行可能距離が1600kmをきったところからは100kmごとのカウントダウンが始まる。
ニオイをかいでみたが、アドブルーは無味無臭の透明な液体である。満タンならかるく2万kmもつから、一般のメルセデスユーザーは定期点検の際に“おまかせ”でみてもらうことになるはずだ。尿素水溶液には有効期限があり、距離にかかわらず、2年経つと交換しなくてはならない。自分でも簡単に補充できる。
アドブルーの価格は、メルセデスディーラーで10リッターで2000円。尿素SCR方式のディーゼル車はトラックなどですでにあり、アドブルーも一般に流通している。 しかし、クリーンな排気のために、新たな薬液を持って走るとは、フクザツな思いである。さらに規制が厳しくなると、さらに薬液の種類が増え、“走る理科室”のようなことになるのだろうか。アドブルータンクの新設でスペアタイヤが追いやられたため、E350ブルーテックにはランフラットタイヤが標準装備される。
失ったものはなにひとつない
試乗したのは、E350ブルーテックのステーションワゴン アバンギャルド(833万円)である。新型Eクラスのワゴンボディもお初だが、それよりも興味の焦点はやはりエンジンだ。
E350といっても、ディーゼルの場合、エンジンは旧型の「E320CDI」と同じコモンレール式直噴3リッターV6ディーゼルターボである。“新長期”から“ポスト新長期”へ排ガス規制のステージがワンランク上がったのに、211psのパワーを始めとするエンジンのアウトプットはE320CDIと同じである。
走っても、失ったものはなにひとつない、どころか、エンジン音などはボディが新しくなったこともあって、いっそう静かになった。外で耳をそば立てれば、クルマにくわしい人ならディーゼルと言い当てられるかもしれないが、それはエンジンの音というよりも、もはや重箱の隅をつついている音である。クルマの価格もキャラクターもまったく違うが、日産エクストレイル ディーゼルと比べると、こちらは悠揚迫らぬ高級エンジンである。
パワーも申し分ない。というか、速いクルマである。箱根大観山の頂上で撮影していると、気づいたら試乗車の返却時間まで20分をきっていた。あわてて山を下り、大磯プリンスホテルまで、くわしく書けないペースで急行する。間に合った。ディーゼルターボの強大なトルクもさることながら、西湘バイパスの追い越しレーンでは、スリーポインテッドスターの御威光にもあらためて感じ入った。なんていう使用法はよろしくないが、しかしバックミラーに映ったその“ベンツ”は、いまや世界一クリーンでもあるのである。
(文=下野康史/写真=菊池貴之)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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