ホンダが災害時に役立つ発電システムを発表
2012.10.04 自動車ニュースホンダが災害時に役立つ発電システムを発表
2012年10月2日、ホンダは停電時でも発電可能な自立運転機能付きの家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニット「エコウィルプラス」と「低圧LPガス発電機」の説明会を行った。
■きっかけは大震災
ホンダといえば、二輪と四輪のメーカー。加えて最近では小型ジェット機の分野にも参入、またASIMOのようなロボットの開発も行っている。だが、二輪で会社の基盤を固めた後に、四輪よりも先に手を付け、今日では二輪・四輪と並ぶ事業の柱となっている分野がある。
それが何かというと、耕うん機、芝刈り機、除雪機、発電機、船外機、汎用(はんよう)エンジンなどの汎用製品である。最近ではカセットボンベを燃料とするミニ耕うん機や発電機が話題になったが、祭りや縁日の屋台で軽快にうなりを上げるエンジン発電機にHONDAのロゴを見つけ、その分野の存在を認識した人もいるのではないだろうか。
汎用分野のひとつに、ガスエンジンコージェネレーション(熱電併給)や太陽光発電システムなどによってエネルギーを家庭で作るホームパワージェネレーション事業がある。代表的な製品が、「エコウィル」の名で2003年からガス事業者を通じて販売されている家庭向けコージェネレーションシステム。これは天然ガス(都市ガス)またはLPガスを燃料とするエンジンで発電し、その際に生じるエンジンからの排熱を利用して給湯や暖房を行うもので、累計約12万戸に設置されているという。
発電するといっても、一般家庭で必要な電力をすべてまかなうわけにはいかないので、商用電力すなわち電力会社からの電力と併用している。また、システムのコントロールは商用電力で行っているため、停電時には稼働不能だった。
ところが昨年の東日本大震災以降、停電時にも使えるコージェネレーションシステムに対する需要が高まった。それを受けて開発されたのが、停電時自立運転機能付きの「エコウィルプラス」。停電時もガスと水の供給がある限り、エンジンを自立運転させることによって発電と給湯を可能にしたシステムである。
停電の際は、コンセントや発電モードを停電時用に切り替えた後に、ちょうどガソリン発電機や船外機のように、グリップの付いたヒモを引いてエンジンを起動。発電された電気は給湯や暖房のほか、屋内に引かれた自立運転専用コンセントに送られる。発電出力は給湯、暖房、専用コンセントにつながれた電気機器を合わせて、最大約980W。11月からガス事業者を通じて販売するという。
■普及型の燃料から電力を
この日、もうひとつ紹介されたのは、家庭用LPガス(プロパン)を燃料とする防災向け低圧LPガス発電機。そもそもホンダの発電機は、1960年代初頭、本田宗一郎が親交のあったソニーの井深大社長(当時)から、ソニーのマイクロテレビにふさわしい携帯発電機の開発を提案されたことから始まったそうだ。そして63年に第1号を発売、現在では98年にリリースしたインバーター搭載機を中心に約40%の国内シェアを持っている。
今回の低圧LPガス発電機も、開発のきっかけは東日本大震災だった。震災発生後、ホンダは直ちに義援金とともにガソリン発電機、そしてカセットボンベを燃料とする発電機「エネポ」とボンベを被災地に送った。これらはもちろん重宝されたが、非常時にあってはカセットボンベの供給と最大で約2.2時間というエネポの連続運転時間がネックとなった。この経験を通じて震災後は「エネポをLPガスで使えないか?」「カセットボンベではなく、LPガス容器仕様の発電機はないか?」といった声が少なからず寄せられたのだという。
そうした経緯から「いざというときに、簡単に、安心して、長時間使える発電機」の開発が始まった。燃料にLPガスを選んだ理由は、全国総世帯の約半数にあたる2500万世帯に普及していること、そして個別供給による災害に強いエネルギー、ということである。
今回発表された低圧LPガス発電機は、最大900Wの電力供給が可能という。ただし、これさえ用意しておけば、LPボンベがあればどこでも発電可能というわけではない。燃料は家庭にあるLPガスがそのまま使えるが、あらかじめ家屋に専用ガス供給ボックスを設置しておかなければならないのだ。
専用ガス供給ボックスは矢崎エナジーシステム製で、ホンダ製低圧LPガス発電機とセットで、全国のLPG事業者で販売および取り付け工事が行われる。価格は専用ガス供給ボックスのガスコードが3mのものが23万790円、5mのものが23万2890円(いずれも税込み、取り付け工事費は別途)。本年8月7日に発売され、目標販売台数は年に2500台だが、現在までにすでに約2000台を受注しているそうだ。
(文=沼田 亨)
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